自然によって生みだされた造形は、美しくてユニークだ。私たちの生活は、人の手によってつくられた人工物であふれかえり、自然に出来上がった形や模様の美しさを忘れかけているのかもしれない。この「MAU M&L 博物図譜」は、武蔵野美術大学の美術館・図書館に所蔵されている自然誌や航海記、解剖図などを閲覧することができるアプリ。そこには、昔の人々の目を通して見る動植物や景観を"素描"というスタイルで緻密に描かれている。たとえば、「熱帯ヤシ科植物図譜」では、見たこともないような珍しい姿の植物を見て楽しむことができるのだ。また、「フウチョウ科・ニワシドリ科鳥類図譜」では、美しい色をした鳥の生き生きとした姿を見ることも。

こちらの図譜は17世紀から19世紀の書物が中心なので、その頃の地球上の様子が分かる航海記など、なかなか興味深い書物も楽しめる。たとえば、「太平洋航海記」や「オーストラリア探検記」など、当時の風景や現地の人々、生活の様子が丁寧に描かれているのだ。写真で見る図艦に見慣れてしまった現代人にとって、こういった素描によって描かれる「図譜」を目にする機会はあまりなく、かえって新鮮に目にうつる。難しいことは考えず、シンプルに美しいイラストを楽しめるだけでも価値のあるアプリなのだ。