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ジェーン・バーキン、シャルロットと神楽坂散歩。 

 6年ぶりに、シャルロット・ゲンズブールがニューアルバムを出すという。『レスト』というタイトルで、11月17日に発売予定。
 そんなシャルロットが来日して、ドキュメンタリー・フィルムを撮影すると言ってきたけど、何だか半信半疑な気持で彼女を成田で迎えた。
 「もしかしたら、だけど、クリップに使うかも」
 母ジェーン・バーキンが、オーチャード・ホールでコンサートをするので、母に同行したのだが、母娘一緒に来日は初めてなので、こちらも、ちょっとエキサイト。

 『レスト』というのは、私とここにいて。そんな意味らしい。4年前に亡くなった姉ケイトに、もっと私とここにいて、と言っている言葉のようだ。相変わらず何か秘密めいたことが好きなシャルロットは、多くを語らない。
 仕事でもないのに、パリで暮らしていた頃から一家と親しくしていたので、自ら買って出て、ふたりの滞在をサポートすることにした。撮影スタッフもパリからやってくるし、大した役割はないだろうと思っていたけど、これが一旦スタートするとけっこう大変だった。

 案内する場所はあらかじめシャルロットと決めていたけど、食事はその日のみんなの都合によりけりだから、先が読めない。
 だけど幸い日頃から食いしん坊の私には、実はこの役割はけっこう楽しかった。食べている時のみんなの穏やかな表情を見るとほっとするし、心底お疲れさま、と言いたくなる。とりわけシャルロットは、自分でも料理上手なので、おいしいものには即反応してくれるし、ジェーンも繊細な味が大好きだ。

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 食事はホテルの近くでしたい、というジェーンの希望で、神楽坂周辺にエリアが限定されてしまい、青山方面のお気に入りの店に行けないのは残念。「寿司陸」行きたかったな。

 到着した日に行ったのは「さいめ」(新宿区納戸町33)若いシェフ、嶋田さんが、ひとりで独創的なスタイルを生み出している野菜中心の店。到着早々のお腹には、やはりお野菜がいいだろうと思ったけど、これが大当たり。その後はどんな店に行っても、「さいめ」がベストだ、あの若いシェフはいい奴だった、などと言われ、なかなか「さいめ」を超えられない。なにしろ手造りの醤油や味噌がある位、料理熱心なシェフなのだ。

 そのほかホテル近所の蕎麦店「東白庵かりべ」や、そろそろ和食に飽きた頃にはビストロ「ボルト」(新宿区箪笥町27)へ行く。ちょうどお盆休みでよい店がけっこう休んでいたので、少しばかり苦戦した。

 コンサートの当日、オーチャード・ホールの2階で、母の舞台にじっと撮影用のムービーのカメラを向けていたシャルロットの姿がとても印象的だった。

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村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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