MUSIC DIARY 24/7

映画から知った、ヤスミン・ハムダンの歌声に魅せられて

 

ヤスミン・ハムダンのアルバム『アル・ジャミラ〜美しきもの』を、時間を問わず聴いている。

 

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レバノン生まれ。今年41歳になるという。

 

彼女のことを知ったのは、ジム・ジャームッシュの映画『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013年)で。ヤスミン・ハムダン本人として劇中に登場した時のインパクトは、あまりに強かった。吸血鬼役のティルダ・スウィントンの存在感がしばらく脳裏に残っていたものの、帰宅してヤスミンについて調べているうちに、マドンナをプロデュースしていたミルウェイズと過去にユニットYASを結成していたことを知り、映画公開と同タイミングで発表されたソロ・アルバム『ヤ・ナス』もチェックした。

 

この4年ぶり2枚目となるソロ・アルバムでは、当時の印象を一新してしまうほど鮮やかにステップアップ。丁寧な音使いや斬新な響きは、彼女の魅惑的で甘美な歌声を引き出し、1曲聴き終えるたびに聴き手の心情に色が加えられていくようだ。非凡な才能を持つミュージシャンたちも参加しているが、基本は彼女自身が詞曲を書き、プログラミングやアレンジ、プロデュースまで担当している。

 

例えば「ASSI」や「BALAD」にはジェイムス・ブレイクを想起させるノイズのような特徴的な音が入っているのが興味深いし、かと思えば「CAFÉ」では、アラビックな旋律にエクスペリメンタルな音が混在されて、パリの18区の裏通りにいるようなゾクゾクする強い薫りを感じてしまう。「K2」で聴かれるガムランのような打楽器はハングというそうで、その柔らかで深みのあるサウンドにヤスミンの歌声が舞うようで、とても心地よい。

 

そして共同プロデュースとして元ソニック・ユースのドラム奏者スティーヴ・シェリーや、ロンドン在住のルーク・スミス(フォールズ等)、レオ・エイブラハムズ(ブライアン・イーノ等)も参加。資料から彼らの名前が出てきた時点で、自分が気に入ってしまった理由がすぐにわかってしまったほど(笑)。

 

「LA BA'DEN」 ミュージックヴィデオは夫である映画監督エリア・スレイマンが担当。

 

ヤスミンはレバノンの首都ベイルートに生まれたものの、内戦が悪化していたため、生後2週間には家族に連れられてアラブ首長連合へ避難。その後もキプロス、ルーマニア、ギリシャ、クウェートなどを転々とし、内戦終了後にベイルートへ戻ったという。そこで当時のパートナー、ゼイド・ハムダンとソープキルズを結成し、音楽活動を本格的にスタート。しかし2005年に公私ともに関係に終止符を打ち、ツアーで訪れて気に入ったフランスへ移住、ソロ活動するようになったそうだ。

 

そんな移転の多い人生を送ってきたからか、レコード会社からもらった資料によれば、ヤスミンは1つの場所に長くいられない性格で、旅をしてはリフレッシュし、ルーティン化された毎日を苦手としてきた。曲作りに関しても、タクシーの運転手との会話など、ちょっとした出会いやきっかけから毎回興味のあることを探求し、音楽の中で様々なキャラクターを妄想とともに創り出していくという。知れば知るほど興味深い。2014年9月にくるり主催の「京都音楽博覧会」で来日していた時に観に行けばよかった……。

 

「Hal」 ジム・ジャームッシュ監督が気に入り、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の中で歌った。

 
そんな彼女の歌を聴いていると、日常を忘れて不可思議な時空の旅へと誘引されるよう。最近のお気に入りの一枚だ。
 

IMG_6844.jpg最新アルバム『アル・ジャミラ〜美しきもの』には元夫のゼイド・ハムダンも参加している。

伊藤なつみ

音楽ジャーナリスト/編集者
『フィガロジャポン』をはじめ、『pen』『装苑』ほかモード誌などで、取材、対談、原稿執筆、編集を担当。ほかにCD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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