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シャネルの扉 #10

シャネルのアイコンバッグ、2.55ができるまで。

Toc Toc Chanel

June 22, 2016

男性用の持ち物からヒントを得て、時代の女性たちのライフスタイルにフィットするアイテムを作り出すのが上手だったマドモアゼル・シャネル。そんな彼女のシグニチャーピースが、1929年にアーミー用のダッフルバッグにインスピレーションを受けストラップを取りつけた、フェミニンで洗練されたショルダーバッグだ。黒またはマリンブルーのジャージー素材の内側に、ルージュやブルーのグログランのライニングを施したバッグは、シャネルの定番として長年愛されている"2.55"のルーツとなる。「ハンドバッグを手に持ったり、落としてしまったりすることに疲れたから、細いストラップを取りつけて、ショルダーバッグにしたの」と言ったマドモアゼルは、機能性の高いデザインを女性らしいエレガントでモダンな息吹を感じるバッグへと昇華したのだ。

2.55"が再解釈され、シャネル2016/17年秋冬 プレタポルテコレクションに登場。 ©CHANEL

それ以来、ファッションの変遷とともに、さまざまなバッグを世に送り出してきたシャネル。しかし、その機能性と美しさを兼ね備えていること、という普遍的なコンセプトはいまも健在だ。メゾンのアイコンバッグである、通称"2.55"も1929年の誕生から、長い時間をかけて、進化を続けてきた。その呼び名は、1955年2月に発表されたことに由来している。マドモアゼルは、チェーンを通すための鳩目を取りつけ、バッグにボリューム感を与えるため、競馬場で見た競走馬の調教助手が着ていたブルゾンからアイデアを拝借。バッグにキルティング模様を施し、ライニングにはふたつのCを組み込んだロゴにステッチを飾った。この"2.55"には、フラップになる折り返し部分が二重になっているのが特徴で、外側の大きな方のフラップには、ラブレターやお札を入れるための隠しポケットを忍ばせた。「チップは快適さのために払うお金よ」と語っていたマドモアゼルの気質を象徴するようなデザインとも言える。その後も大切に受け継がれている機能性と美しさが織り成す完璧なハーモニー。そして、それを裏付ける熟練した職人たちの技とともに、180もの工程を経て、誰もがひと目でシャネルと分かるアイコニックなバッグは、丁寧に作られているのだ。

マドモアゼル・シャネルも愛用していた"2.55"。細いチェーンがエレガント。 ©CHANEL

パリ郊外にあるシャネルのアトリエで最高の技術を持つ職人たちによって製作されている。まずは、最高水準のレザーの選定からスタートし、選び抜かれたレザーにひし形のキルティング模様をステッチしていく。 ©CHANEL

型紙をレザーに置いて、さまざまなパーツをカット。さらには、シャネルの象徴であるCCマークをバッグの内側にあるフラップに使用するレザーにステッチする。 ©CHANEL

2.55"はふたつのバッグをひとつに組み合わせることによって完成する。ひとつのバッグは内側の部分、もうひとつのバッグは外側の部分となる。 ©CHANEL

チェーンを通す鳩目の留め具をバッグに装着し、長方形のクラスプを付けて完成。 ©CHANEL

texte: TOMOKO KAWAKAMI

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