立田敦子のヴェネツィア国際映画祭レポート2016 #01 2016年ヴェネツィア国際映画祭が開幕!
Culture 2016.09.06
第73回ヴェネツィア国際映画祭が8月末に開幕しました!
今年は、8月24日にイタリア中部で起こったマグニチュード6.2の地震を受けて、開会式後のガラ・ディナーパーティが中止。さらにヨーロッパ各地で起こっているテロ事件の影響か、あちらこちらに警察による検問所が設置され、セキュリティの強化が目に付きますが、映画祭のオープニングは無事に行われました。
今年のオープニング作品は、2015年にアカデミー賞5部門にノミネートされ、J・K・シモンズの助演男優賞、編集賞、録音賞の3部門を受賞した『セッション』(14年)のデミアン・チャゼル監督の『La La Land』(原題)。
女優として成功を夢見るミア(エマ・ストーン)とジャズピアニストのセバスチャンの恋を描くミュージカル映画です。
自らもジャズミュージシャンだったチャゼル監督。『セッション』ではジャズドラマーを描き、また、日本では未公開ですが彼のデビュー作『Guy and Madeline on a Park Bench』(原題/13年)ではジャズトランペッターを主人公にしていましたが、今回はジャズピアニスト。これでジャズ3部作となりました。
『La La Land』
前2作と比べるとよりロマンティックでカラフルに仕上がった『La La Land』。ヴェネツィアではすでにアカデミー賞の候補作として名前が取りざたされています。若干31歳のチャゼル、第3作目にして歴史あるヴェネツィア国際映画祭のオープニングを飾る快挙を成し遂げましたが、ヴェネツィアをスタートポイントに始まる米国の映画賞レースでも存在感を見せるはず。
photo: ASAC
今年のラインナップは、コンペティション部門が20作品。
エミール・クストリッツァ、アンドレイ・コンチャロフスキー、テレンス・マリック、ヴィム・ヴェンダースなど大御所の名前も見られますが、それでも今年は常連は少なめ。代わって、チャゼルに代表されるようにヴェネツィア、カンヌ、ベルリンの国際映画祭のコンペに初登場、あるいは長編2作目(アナ・リリー・アミールポアー、トム・フォード)、3作目(デミアン・チャゼル、デレク・シアンフランス)のフレッシュな顔ぶれが揃っています。
チリ(クリストファー・マーレイ、パブロ・ラライン)、フィリピン(ラヴ・ディアス)、メキシコ(アマ・エスカランテ)など近年勢いのある国の作品も選出されています。特に、チリのクリストファー・マーレイは、映画祭側もイチオシの新しい才能です。
賞ということでいえば、2015年『スポットライト 世紀のスクープ』、2014年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、2013年『ゼロ・グラヴィティ』とここ3年、ヴェネツィア映画祭から発信された作品がアカデミー賞作品賞を制覇しています。今年も例年になくパワフルなラインナップなので楽しみです!
第73回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門の審査員団は下記の通り。
○審査員長:サム・メンデス(監督、イギリス)
○審査員:ローリー・アンダーソン(音楽家、アメリカ)、ロレンソ・ビガス(監督、ベネズエラ)、ヴィッキー・チャオ(女優、中国)、ジェマ・アタートン(女優、イギリス)、ジャンカルロ・デ・カタルド(脚本家、イタリア)、ニーナ・ホス(女優、ドイツ)、キアラ・マストロヤンニ(女優、フランス)、ジョシュア・オッペンハイマー(監督、アメリカ)
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texte: ATSUKO TATSUTA