フィガロが選ぶ、今月のアート ヴェネツィアで評価された、塩田千春の帰国記念展。

Culture 2016.09.21

『 塩田千春 鍵のかかった部屋』

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『掌の鍵』2015年。ヴェネツィアビエンナーレ国際美術展日本館。

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トヨタコレオグラフィーアワード・ダブル受賞で注目されるダンサー・平原慎太郎。本展ではポール・オースターの『鍵のかかった部屋』をモチーフに、鍛えぬかれた身体とテキストを用いたパフォーマンスを上演。

びっしりと張りめぐらされた赤い糸。夥しい数の椅子や窓枠、古靴。吊り下げられた巨大なドレスやベッド。ベルリン在住の塩田千春のインスタレーションには、使い古された物に宿る人間の痕跡や記憶が、常に幾重にも積み重なっている。美大在学中は「自分らしいマテリアルで作品をつくりたい。人間が生活の中でアートを必要とする意味が知りたい」と大阪の民族博物館に通ったという。2015年にヴェネツィアビエンナーレ国際美術展の日本代表に選出され、強烈なインパクトの展示空間は各国の批評家やメディアに高く評価された。

帰国記念展となる本展では再構成した新作を発表。生命の流通網である血管や宿命的な絆を思わせる赤い糸の先には、世界中の人々から集めた無数の「鍵」が結ばれ、新たに5つの古い扉を加えて『鍵のかかった部屋』が展示される。信頼された者だけに託される秘密を忍ばせた小さな鍵。その記憶の集積は、降り注ぐ雨のように、鮮烈な身体感覚として、不特定の他者へと受け継がれていく。

過去にも演劇やダンスの舞台美術の分野で重厚な印象を残してきたが、本展でも会場となる劇場を生かしたパフォーミング・アーツを展開する。芸術監督の演出家・白井晃、音楽家の巨匠・一柳慧プロデュースにより、ダンサー・振付家の酒井幸菜、平原慎太郎、音楽家mama!milk、一柳自ら選りすぐったミュージシャンによるパフォーマンス公演を開催。塩田の作品世界特有の、不穏な感情を抑制することで立ちあがる美しさが彼らとどう拮抗し、溶け合うのか、大いに期待したい。

『 塩田千春 鍵のかかった部屋』
会期:開催中~10/10
KAAT神奈川芸術劇場(神奈川・横浜)
10時~18時 会期中無休
一般¥900
※一部のダンス・音楽のプログラム、イベントなどは料金が異なる。

●問い合わせ先:
Tel.045-633-6500
www.kaat.jp

*「フィガロジャポン」2016年11月号より抜粋
本誌11月号、P178「アート」に掲載いたしました、『塩田千春 鍵のかかった部屋』の展覧会紹介記事にて同じ写真を2枚掲載する誤りがありました。正しくはこちらに掲載の『掌の鍵』(2015年)となります。お詫びして訂正いたします。

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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