フィガロが選ぶ、今月のアート 国内外6人のアーティストによる、「身体」のアート展。
Culture 2016.11.21
『BODY/PLAY/POLITICS』
インカ・ショニバレ MBE『さようなら、過ぎ去った日々よ』2011年。アフリカのアイデンティティを象徴する美しい更紗。
アピチャッポン・ウィーラセタクン『炎(扇風機)』2016年。映画『光りの墓』(2015年)でも光は物語の鍵を握る。
「BODY」という言葉は人間の身体のほか、乗り物や楽器の本体、ワインなら密度や濃度、音色なら張りの強さなど、実体のあるなしに関わらず、しっかりとまとまった「かたまり」を意味する。仮想現実に支配され、物事の「BODY」をつかみにくい現代、アーティストたちは自身の境遇やルーツから物語をすくい取り、見過ごすことのできない切実な身体性を発見してきた。本展では各国から異なる「BODY」の意識を持つ作家を集める。
ナイジェリアに育ち、いまはロンドンを拠点とするインカ・ショニバレ MBEは、植民地時代のヨーロッパ史をハイブリッドに再考する。アフリカ更紗をフランス風に仕立てたドレスを纏った黒人の歌手が『椿姫』のアリアを歌いあげる映像は、代わりのきかない歴史に新しい身体を与えてみせた。マレーシアのイー・イランは東南アジアに伝わる髪を振り乱した女の幽霊をモチーフに、女性につきまとう暴力的経験と社会状況を軽妙に語り継ぐ。カンヌ国際映画祭最高賞受賞者でもあるタイの映像作家アピチャッポン・ウィーラセタクンは亡霊や超自然現象を通して、土地に根差す過去の物語を炙り出す。ほか、べトナムのウダム・チャン・グエン、日本から石川竜一、田村友一郎が参加。また、来年1/26〜開催の今年22年目を迎える「横浜ダンスコレクション2017」との※連携プログラム、ダミアン・ジャレと名和晃平による超彫刻的インスタレーションとダンスの融合作品『VESSEL』にも注目したい。
会期:開催中〜12/14
横浜美術館(神奈川・横浜)
10時〜18時
休)木
一般¥1,500
tel:045-221-0300
http://yokohama.art.museum
※「横浜ダンスコレクション2017」との共同企画として出品作家田村友一郎の作品展示空間で行う演出家の多田淳之介によるワークショップも。
*「フィガロジャポン」2016年12月号より抜粋
réalisation : CHIE SUMIYOSHI