デヴィッド・ボウイの軌跡をめぐる『DAVID BOWIE is』。

Culture 2017.01.05

『DAVID BOWIE is』

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劇場やサーカスを思わせる迷宮のような展示空間に、めくるめく多面的な作品世界が展開する網羅的インスタレーション。時代を代表する写真家たちと渡り合うポートレートは圧巻。

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なかでも最も数多くボウイを撮影した写真家・鋤田正義とのセッションには鬼気迫る表情が見られる。

 2013年にロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が企画し、世界巡回中の『DAVID BOWIE is』がやってくる。15年春にパリで本展を観る機会に恵まれたが、ヘッドフォンでボウイ自身の語りと楽曲を聴きながらその革新性にあらゆる角度からアプローチする展示構成は、ファンならずとも至福であり、また“思索の庭"でもあった。
 ロンドン郊外の労働者階級に生まれた少年は音楽によって覚醒し、演劇、映画、写真、ファッションの達人たちと交わりながら、1960〜70年代の精神性の時代に完全独自の世界観を築いた。きらめく“グラム”な回転木馬のような展示空間には、その軌跡をひも解く仕掛けが随所にちりばめられる。盟友・坂本龍一が「20の人格を持つ、非常に複雑な男」と評し、リンゼイ・ケンプに師事した若きボウイの一人芝居『仮面』が象徴するように、彼は時代に応じて多面的な人格を演じ分けたアーティストであった。個々のキャラクターは、時のトップデザイナーが手がけたグラマラスな衣装と、そうそうたる写真家たちが撮影した伝説的なポートレートによって、より一層、濃密な性格付けがなされた。一方で、その鮮烈なルックスの背景には、自身を「性欲のある司書」とうそぶいたほどの膨大な読書量に培われた研究があり、それらは手書きの歌詞やステージプランに反映されている。
 死の直前まで創作に情熱を傾け、完璧な幕引きの演出を施した稀代のスター、ボウイのレガシー。あらゆる世代の“反骨の人”に観てほしい展示だ。

『DAVID BOWIE is』
会期:2017/1/8~4/9
寺田倉庫G1ビル(東京・天王洲アイル)
10時~20時(金は21時まで)
休)月(1/9、3/20、3/27、4/3は開館)
一般¥2,400

●問い合わせ先:
ハローダイヤル tel:03-5777-8600
www.DAVIDBOWIEis.jp

*「フィガロジャポン」2017年2月号より抜粋

 

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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