ナチス映画で、アイヒマンを描く作品が急増中。

Culture 2017.02.15

戦後70年経っても、戦争の恐ろしさを描くナチス映画はまだまだ制作されている。その題材として、ホロコーストに関与したアドルフ・アイヒマンを扱った作品が増えている。

170215-CINEMA-01.jpg

戦争の恐怖を描く格好の題材として、いまも数多く作られるナチス映画。そろそろ打ち止めの感があるヒトラーに代わり、近年急増中なのが、ナチス最重要戦犯のひとり、アイヒマンの作品。『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』は、戦後、アルゼンチンに逃げのびたアイヒマンを追いつめた実在のユダヤ人検事を描くが、戦後もナチスの残党がドイツの政権中枢で権力を握って、これを猛烈に妨害していたことに何よりも驚かされる。一方、逮捕後の裁判で露呈したアイヒマンの「上司の命令に従っただけで、罪悪感全然ナシ」という驚愕の事実に端を発した心理実験「アイヒマン実験」の全貌を描く『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』は、実は100万人の平凡な人間がアイヒマンになりうることを物語る。

まだまだ尽きないナチス映画は、戦後70年を越えても古びるどころか、保守化する現代社会の不穏に、いまだ共鳴しまくっているのである。

文/渥美志保(映画ライター)

『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』

1950年代後半を舞台に、西独のユダヤ人検事長バウアーが、南米に逃亡したアイヒマンを追い詰めるまでを、実話をもとに描く。バウアーの同性愛者というセクシャリティが、時代の抑圧と不当をより際立たせる。

監督/ラース・クラウメ
出演/ブルグハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルト
2015年、ドイツ映画 105分
配給/クロックワークス、アルバトロス・フィルム
Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開中

170215-CINEMA-02.jpg

『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』

「命令に従っただけ」と裁判で語ったアイヒマンに問題提起され、権威者への服従で人間はいくらでも残虐になれる、という結論を導き出した1961年のアイヒマン実験。その経過と、世に与えた衝撃をもとに描く実録作品。

監督・脚本/マイケル・アルメイダ
出演/ピーター・サースガード、ウィノナ・ライダー、アントン・イェルチン
2015年、アメリカ映画 98分
配給/アット エンタテインメント
2月25日より、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開

- WHO'S EICHMANN? -

収容所へユダヤ人を移送する指揮を担い、ホロコーストに大きく関与したアドルフ・アイヒマン。戦後はアルゼンチンに逃亡するも、1960年にイスラエル諜報特務庁により逮捕。全世界で放送された裁判の末、62年絞首刑となる。

 

*『フィガロジャポン』2017年3月号より抜粋

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories