実話に基づいた、純粋な愛の物語『ラビング』。

特集

『ラビング 愛という名のふたり』

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口下手な白人の夫と肝のすわった黒人の妻、1950年代の夫妻の結婚生活には柔和でブルージーな情愛がにじむ。米アカデミー賞、主演女優賞にノミネート。

 ジェフ・ニコルズの新作『ラビング』は実話だが、脚本が素晴らしい。適材適所のキャスティングには脱帽です。アダム・ストーンのカメラワークに時々、映画であることを忘れてしまいます。
 いまから60年前のアメリカでは、異人種間の結婚が禁じられていました。主人公のリチャードは白人で、黒人の美しいミルドレッドに結婚を申し込むところから物語が展開します。彼の生まれた南部バージニア州は印象派の絵のように美しい。そんな土地で彼は仲間たちと働き、趣味であるカーレースに興じます。リチャードの家族には父がいないらしく、黙々と働く産婆の母のクローズアップが出色です。一方、ミルドレッドの家族には両親や兄弟姉妹の喧嘩や笑い声が飛び交う。誰にも愛されるミルドレッドがそこにいて、そのすべてをリチャードは愛し、産まれてくる子どものために土地を購入するのです。
 しかし、州当局はそれを許さず、ふたりは北部に追放される。寡黙なレンガ職人のリチャードが周囲の情勢に否定的になってゆくのに対し、ミルドレッドはあくまで言葉を尽くした話し合いで打開を図ります。まるで花が雄しべを包み込むように。彼女の包容力は家族から生まれた自然なもの。だから異人種間結婚の法改正という、時間をかけた、したたかな行動も可能なのでしょう。バージニア州という土地が育んだ資質、と私は思います。
 洋服においては、無地と柄、無地とチェックのコンビネーションがバージニア州の風光、そのコントラストの美しさと類似しています。この映像の強さ! そして、持続力のある女たちの芯の強さを感じてほしいですね。

文/北村道子(衣装デザイナー)

1985年、『それから』で映画界に飛び込む。以後、『幻の光』(95年)『あ、春』(98年)『アカルイミライ』(2003年)ほか、世界に冠たる作品歴を誇る。著書に『衣裳術』(リトルモア刊)。
『ラビング 愛という名のふたり』
監督/ジェフ・ニコルズ
出演/ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・ソーカス、ニック・クロール
2016年、イギリス・アメリカ映画 123分 
配給/ギャガ
TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開中

*「フィガロジャポン」2017年4月号より抜粋

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