フィガロが選ぶ、今月の5冊 詩情豊かな筆致で描いた、フランスのロングセラー。
Culture 2017.03.22
『本を読むひと』
アリス・フェルネ著 デュランテクスト冽子訳 新潮社刊 ¥2,052
アンジェリーヌばあさんは、誇り高いジプシー。パリ郊外の荒地に5人の息子、4人の嫁、8人の孫たちと勝手に住み着いている。居住許可証も身分証明書も持たない大家族のもとに、黄色いルノーに本を積んでやってきたのは、図書館員のエステール。学校に通ったこともない子どもたちに、さまざまな物語を読んで聞かせる。邂逅は決して一方通行なものではなかった。持たざる者に見えた彼らから、エステールもまた与えられている。異なる歴史や文化という境界線を越えて、人と人は出会い、共にあることができる。この小説は、その豊饒さを教えてくれる。
*「フィガロジャポン」2017年4月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI