立田敦子のカンヌ映画祭レポート2017 #06 中間報告!ロシアのズビャギンツェフ監督が一歩リード? 河瀬監督の作品も好評。

Culture 2017.05.26

 12日間にわたる映画祭も終盤に近づき、コンペティション部門に出品されている19本のうちほとんどが上映されました。デイリーで発行されている業界紙の星取りや批評などで、いまのところ評価が高いのは、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の『Loveless (ラブレス)』やフランスのロバン・カンピヨ監督の『120 Beats Per Minute(120ビーツ・パー・ミニッツ)』。

『Loveless (ラブレス)』は、離婚協議中の両親の争いに傷ついて失踪した少年を巡る人間模様が描かれています。ミステリータッチの展開と冷徹な視線が、この監督らしい。2003年にデビュー作『父、帰る』(04年公開)で、いきなりヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞後、カンヌ国際映画祭に進出。2007年に『ヴェラの祈り』(14年公開)で最優秀男優賞、2011年の『エレナの惑い』(14年日本公開)では「ある視点」部門で審査員特別賞、『裁かれるは善人のみ』(14年日本公開)では脚本賞を受賞している監督。今年は上位の賞を受賞する可能性も高いでしょう。

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『Loveless (ラブレス)』より。
©French Association of the International Film Festival

『120 Beats Per Minute(120ビーツ・パー・ミニッツ)』は、1990年代を舞台にしたエイズ問題に関する物語。ロバン・カンピヨ監督は脚本家でもあり、『パリ20区、僕たちのクラス』(10年公開)で、08年にパルムドールを受賞しているローラン・カンテ監督らの脚本を多く手がけています。(今年の「ある視点」部門に選出されている、ローラン・カンテ監督作品『L'Atelier(ラトリエ)』の脚本家でもあります)。本作が、監督作としては3作目。ストーリーテラーとして定評があるだけに、初受賞も期待されます。

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『120 Beats Per Minute(120ビーツ・パー・ミニッツ)』より。
©French Association of the International Film Festival

 他には、トッド・ヘインズがブライアン・セルズニックの児童文学を映画化した『Wonderstruck(ワンダーストラック)』やスウェーデンのリューベン・オストルンドの『The Square(ザ・スクエア)』なども好評です。15年のカンヌで上映された、トッド・ヘインズ監督の前作『キャロル』(16年日本公開)では、ルーニー・マーラが最優秀女優賞をするも、監督自身はまだカンヌの大きな賞を受賞していないので、今回は狙い目かも。リューベン・オストルンドは、『フレンチアルプスで起きたこと』(15年日本公開)で、14年カンヌの「ある視点」部門の審査員賞を受賞しています。こちらも独特のテイストを持った鬼才なだけに、なんらかの賞を受賞する可能性は大!

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『The Square(ザ・スクエア)』より。
©French Association of the International Film Festival

 また、今年のコンペにセレクトされた唯一の日本映画である、河瀬直美監督の『光』が23日に公式上映されました。22時から開始される予定が、技術トラブルにより23時からの深夜上映となってしまったにもかかわらず、観客の反応は大盛況。河瀬直美監督のカンヌでの高い人気が感じられました。

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河瀬直美監督、永瀬正敏をはじめ、『』の出演者がレッドカーペットに登場。©Kazuko Wakayama ©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

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』は、5月27日より新宿バルト9ほか、全国公開。©Kazuko Wakayama©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

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映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

 

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