立田敦子のカンヌ映画祭レポート2017 #10 デヴィッド・リンチの世界が炸裂、 「ツイン・ピークス」がカンヌに!

Culture 2017.05.29

 第70回記念ということで、多くの大物監督やスターが登場した今年のカンヌですが、70周年記念の特別上映といえば、実は4本だけ。
デヴィッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス シーズン3」(第1話と第2話)、ジェーン・カンピオン監督とアリエル・クライマン監督の「トップ・オブ・ザ・レイク:チャイナ・ガール」という、2本のドラマシリーズの合同新作。2016年7月にパリで癌治療の末に亡くなった、イランの名匠アッバス・キアロスタミ監督の遺作『24 Frames(24フレームス)』。そして、若くしてカンヌの常連になりつつある女優クリステン・スチュワートの監督デビュー作『Come Swim(カム・スイム)』(短編)です。
 
後者2作はすでに前回までの記事にて触れているので、今回は映画際終盤で上映されたドラマシリーズ2本について紹介。なぜ今回ドラマがカンヌで上映されるのかというと、「カンヌで実績のある映画監督の作品だから」なんです。確かに、70周年のカンヌにジェーン・カンピオンやデヴィッド・リンチの姿がないのは寂しい!

ジェーン・カンピオンは、1986年に『ピール』(91年日本公開)で短編部門パルムドールを受賞、1993年には『ピアノ・レッスン』(94年日本公開)が本コンペ部門パルムドールを受賞しています。カンヌ70年の歴史の中で、2部門にわたってパルムドールを受賞しているのはただひとり。さらに、長編部門でパルムドールを受賞している、ただひとりの女性監督でもあります。「女性」を強く打ち出している今年のカンヌに、ふさわしい人物であることは間違いありません。

BBCの人気ドラマ「トップ・オブ・ザ・レイク」の4年ぶりとなる、シーズン4「チャイナ・ガール」は、ニコール・キッドマンが出演することでも話題。ニコールは、今年のカンヌでは、ソフィア・コッポラ監督『The Beguiled(ザ・ビガイルド)』、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督『How to Talk to Girls at Parties(ハウ・トゥ・トーク・トゥ・アット・パーティーズ)』、ヨルゴス・ランティモス監督『The Killing of a Sacred Deer(ザ・キリング・オブ・セイクリッド・ディア)』など、この作品を含めて4本の出演作が上映されています!

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「トップ・オブ・ザ・レイク」より。
©French Association of the International Film Festival

またカンヌでは、ジェーン・カンピオンを凌ぐ人気を誇るのが、デヴィッド・リンチ。1990年には、『ワイルド・アット・ハート』(91年日本公開)でパルムドールを獲得、2001年には『マルホランド・ドライブ』(2002年日本公開)で監督賞を受賞。

「ツイン・ピークス」に関して言えば、アンジェロ・バダラメンティのテーマ曲とともに大ヒットしたテレビシリーズを受けて制作された、前日譚である映画版『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(92年日本公開)が、1992年のコンペで上映されています。それから25年後の今年、シーズン2の最後に出てきた台詞「25年後に会いましょう」が現実となり、シーズン3が放映されることになったのです。(5月21日より米国では放映開始済み)

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「ツイン・ピークス」より。
©French Association of the International Film Festival

カイル・マクラクランなど主要キャストを従えて、プレミアにデヴィッド・リンチが登場すると、大歓声が沸き起こりました。スターを凌ぐ人気を誇る、カルトの帝王の健在ぶりを実感! 日本では、WOWOWにて夏以降に放送される予定。楽しみですね。

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プレミアに登場したデヴィッド・リンチ監督と俳優陣。
© Antony Jones / Getty Images ©French Association of the International Film Festival

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映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。
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