彫刻家ジャコメッティが見た、人間のサイズ感とは?

特集

人間存在のサイズ感をあらわにした、稀代の彫刻家。
『ジャコメッティ展』

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マーグ財団美術館の中庭に立つジャコメッティ。ニース郊外に建つ高名な画商マーグ夫妻の美術館のコレクションから、貴重な作品が出展される。

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『ディエゴの胸像』1954年。豊田市美術館蔵。

 硬く強ばり、細長く引き伸ばされた人体彫刻や絵画で知られるジャコメッティは、のどかなスイス・アルプスの山村で生まれ育った。真っ直ぐに伸びる樹々や切り立つ峰を望む近隣の風景の中に小洞窟があり、幼い頃から足繁くそこに通い、石に魅了されていたという。1926年、弟と一緒にパリのモンパルナスに借りたアトリエは来客も呆れるほど簡素で、経済的に豊かになっても生涯この部屋を離れなかった。

 古代エジプトやアフリカ、オセアニアの彫刻に魅せられ、当時最先端のキュビスムやシュルレアリスムにも影響を受けたが、結局はモデルと向き合い、その記憶を頼りに制作する方法に立ち戻る。空間と人間の関係を突きつめるあまり、見えるように作ろうとするほど造形はどんどん収縮し、やがて消えてしまいそうなほど小さな数センチの人物像に行き着く。第二次大戦後は再び大きさを取り戻すが、今度は「驚くほど細長くなければ現実に似ないのだった」と彼自身が記している。ジャコメッティの目には人間がどう見えていたのか、想像するとちょっと空恐ろしい。稀代の彫刻家の慧眼(けいがん)には、虚飾を削ぎ落とした人間の存在とはかくもちっぽけで干し首のように干からび、汲々とやせ細ったものに映ったということになる。ジャコメッティの芸術が20世紀の造形を切り拓いたといわれる由縁はそこにある。人間が人間のサイズ感を主観のままに批評的な視点で形づくることで、時代精神を表現した先駆的なアーティストだったのである。

『ジャコメッティ展』

会期:開催中〜9/4
国立新美術館(東京・六本木)
営)10時〜18時(金、土は〜20時)
休)火
一般 ¥1,600

●問い合わせ先
tel:03-5777-8666(ハローダイヤル)
www.tbs.co.jp/giacometti2017

*「フィガロジャポン」2017年8月号より抜粋

réalisation : CHIE SUMIYOSHI

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