接近! 東京ミレニアルズ 俳優・高杉真宙、21歳。スイートな表情の裏側。

Culture 2017.08.03

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発売中のフィガロジャポン9月号『輝く、東京ミレニアルズ』では、これからの世代を担う90年代生まれの才能たち総勢11名を特集。3回目は、今年と来年で計13本の映画への出演を予定している俳優、高杉真宙(まひろ)。「最初は俳優に興味がなかった」というデビュー当時。それから数年経ち、高杉真宙は何を思うか。

成長の節目に現れる、不思議な感覚。

「スカウトされた時も、俳優という職業があることすら意識したことがなかったんです。もともとドラマや映画を観ない家庭で、弟と一緒にアニメを観ていたくらい。最初はいまの事務所の先輩方も知らなくて……。その後、時間差でいろいろと知ったので、いまは緊張してる(笑)。なので、最初は演技の深さを理解できず、セリフを覚えて現場で話すという感じで精一杯でした」



2009年に俳優デビューを果たし、ドラマや映画の出演を増やしていった彼。次第に演技というものに慣れて、その頭角を表すようになるが、大きな変化は13年に撮影をしていた主演の映画『ぼんとリンちゃん』(14年公開)とTVシリーズ『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13年~14年)の時だ。

「『ぼんとリンちゃん』では、本番前に2カ月ほど演技の練習期間があって、その中ではオフでも役を抜かないような環境で暮らしていました。そこで演じた『オタクのリンちゃん』は自分に近いキャラだったこともあり、話し方や動きをさらにどんどん詰めていった。次第に、役を素でやっている自分がいて。そこで演技するという感覚をつかめた気がしたんです。そんな演技の感覚を得てからドラマをやらせてもらって『演技をもっとがんばらなきゃいけないな』と思った時に、仮面ライダーの撮影に入った。同じ役を1年間やるのは仮面ライダーと大河ドラマしかない。また、得たものをすぐに還元できる場であり、自分の演技を試せる期間でもあります。『次はこういうことをやってみよう!』と考えられたり、テレビドラマや映画の現場とは違う余白があったんです。監督とも直接じっくり話し合える現場だったので、最後は自分の意見を主張できました。そこで、自分なりに噛み砕いて演じることも好きになって、考え方もがらりと変わって成長したと思います」



そして、今夏以降も、俳優としての厚みを増すさまざまな役どころを担う。その中のひとつ、『逆光の頃』は『ぼんとリンちゃん』と同じく、小林啓一が監督・脚本を務める。今作もまた「その時の自分と似ているキャラをやらせてもらった」と巡り合わせを感じたという。原作は「コップのフチ子ちゃん」を手がける漫画家・タナカカツキのデビュー作。京都の街を舞台に、思春期の少年の揺れ動く心情や青春という一瞬の輝きを描いた叙情的な作品だ。

「(主人公の)孝豊も前作のリンちゃんと同様、役と自分の境目があいまいになる不思議な瞬間があって。演じていて思ったのは、『青春って気づかないだけで、意外にやっていたんだな』ということ。あの時、ただただ話していることだけが青春になるとは思ってなかった。誰もが経験している何気ない青春。それを思い出させてくれる作品です」



さらに注目なのが、「不思議な感覚」を感じたと本人が語る、黒沢清監督の『散歩する侵略者』。前川知大が率いる劇団イキウメの同名舞台を原作とするSF的ヒューマンドラマだ。高杉が演じる“侵略者”は、見た目は人間そのもの。これまでにないキャラで大きな挑戦となった。

「黒沢清監督作品ということもあり、現場ではただただ緊張していたんですけど、ゆったりとした空気感の中で、何か起きそうなドキドキ感がずっとある感覚。映画って監督でこれだけ違うのかと、おもしろさを改めて感じた現場でした。物語はいろいろと捉えられるし、人それぞれ全然違う感想を抱くと思います。だから、自分がやっていることが正解なのかもわからず、これでいいのかなと迷いも正直ありました」



慎ましさと劣等感の間にいる、現在。

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“俳優”を知らなかった少年が、邦画界を盛り上げる立派な俳優へと成長していく。話を聞くに、ギラついていないし、ずる賢くもない。とにもかくにも、終始、物腰柔らかだ。物事に対して低体温でもないし、熱を上げないわけでもない。現にすっごく漫画好きなのだとか。いまっぽい男の子といえば簡単だが、かつて知らなかった俳優になる少年の慎ましさに起因するのかもしれない。

「この業界にいる人たちは必ず何か才能を持っている。だから、人に会うたびにすごい人たちばかりだと、常に劣等感を感じるんです。これから現場を重ねてもなくならない気がしますね。でも、そこで自分のエンジンをかけられています。いまはいろいろな人の良いところを吸収して、自分のものにしていくのが目標。自分では持てない独特の雰囲気のある人に憧れていて、だから清水尋也が好きなんです。カッコいいですよね、彼」



共演も多く仲の良い俳優仲間への賞賛の言葉も照れながら。それはいまの自分の立ち位置ややるべきことを理解し、周りへの尊敬の念を抱いている証しだ。どこまでも控えめな男は、逆に底の見えない沼のように貪欲なのかもしれない。

「自分が作品のピースになるのがおもしろくて。作品はタイミングもあるし、まず出会えたことがすごいことだと思っていつも撮影に参加しています。俳優としてのモチベーションは仕事、かな。次第に出会うペースは速くなっていて、どんどん過ぎていくのでいましか見えない状態。これからは、先のことを考え、逆算していまやることに取り組めるようになりたいです」

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高杉真宙に、17問17答!

・好きなアプリ:マンガワン。「コミックアプリで漫画を読んでいます」

・好きな音楽:「ジャスティン・ビーバーなど、トレンドの洋楽をいろいろと」

・好きな映画:『シング・ストリート』。「ジョン・カーニー監督、最高です」

・自分のクセ:「そうなんですか」と言う。「知らないことが多すぎて、相づちを打ってしまいます」

・右ポケットに入っているもの:鍵。「クレヨンしんちゃんのキーホルダー付きです」

・尊敬する人: 祖父母。

・好きな駅:秋葉原、国際展示場。

・好きな漫画:『ボールルームへようこそ』。「本当におもしろい。僕の現
在の人生の柱かも」

・ウィークポイント:シソと春菊。「なんで鍋に入れちゃうの?と思ってしまうほど」

・好きなお酒:「あまり飲まないですけど、友達といく時はウイスキーを少々」

・寝る時の格好:Tシャツと短パン。「冬は上がスウェットに」

・好きな香水・香り:カルバン・クライン「ck one」

・睡眠時間(オン/オフ):「オンの時は5時間くらい、オフの時は10時間くらい寝ちゃう」

・最近のスランプ:「特技がないことが悩みで……最近乗馬を始めたんです」

・最近泣いた出来事:「『僕のヒーローアカデミア』最新巻(14巻)を読んで泣いた」

・いつもバッグに入っているもの:ペン、マスク、漫画。

・SMSやLINEでよく使う言葉:「あい」。「はい、了解の意味なんですけど、なんでも使える」

170803_IMG_9102.jpg撮影は六本木の某スタジオにて。

プロフィール
たかすぎまひろ●1996年、福岡県生まれの21歳。代表作に映画『渇き。』『ぼんとリンちゃん』(ともに2014年)など。今年は公開中の映画『逆光の頃』や9月1日公開の『トリガール!』、9月9日公開の『散歩する侵略者』を含む計6作品に出演。20歳の姿を7人の写真家が切り取った写真集『20/7』(ワニブックス刊)が好評発売中。

ⓒ『散歩する侵略者』製作委員会

『散歩する侵略者』
第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」出展作。劇団イキウメの同名舞台を映画化。姿そのまま“侵略者”に乗っ取られた人々と、その周りの人間たち。高杉は侵略者役を演じている。
●監督・共同脚本/黒沢清 ●出演/長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里 ●2017年、日本映画 ●129分 ●配給/松竹 ●9月9日より、全国にて公開
ニット¥198,720、パンツ¥98,280/ともにマルニ(マルニジャパン) ベルト/スタイリスト私物

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texte : HISAMOTO CHIKARAISHI, photos : TAKANORI OKUWAKI (UM), NAOYA, stylisme : SHUICHI ISHIBASHI, coiffure : TAKESHI (SEPT), maquillage : YUKI KOMORI

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