ギャスパー・ウリエルが語る、『たかが世界の終わり』。

インタビュー

「フィガロジャポン」2017年3月号は映画特集。この特集では、グザヴィエ・ドランと彼の監督作『たかが世界の終わり』にフォーカス! 本誌でも、ドランの分身ともいえる主人公ルイを演じたギャスパー・ウリエルがコメントを寄せているが、オンラインでは、執筆を手がけた立田敦子さんによるインタビューのロングバージョンを掲載! 作品について、ドランについて、さらに深く掘り下げます。

ギャスパーにも“グザヴィエ的”な部分がある?

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photo : KO TSUCHIYA

余命を宣告された34歳の作家ルイは、12年ぶりに実家に帰省する。母、兄、兄嫁、妹。久しぶりに再会する家族を前に、果たして告白することができるのか?——カナダの若き天才監督グザヴィエ・ドランの最新作『たかが世界の終わり』は、ジャン=リュック・ラガルスの戯曲を原作とする家族の物語だ。第69回カンヌ国際映画祭でのグランプリ受賞作でもあるこの作品は、フランス人のオールスターキャストでも注目を浴びた。

——この作品に出演する決め手は何だったのでしょうか?

ギャスパー・ウリエル(以下、G):「グザヴィエとは、この6、7年、映画祭などのイベントで顔を合わせることが多く、その存在はよく知っていた。彼自身役者として演じることもあり、俳優に関して深い理解と敬意のある監督だということは、その作品を観れば、俳優なら誰でもわかるはずだ。彼の作品においては、俳優は単なる“部品”ではない。僕たちは映画という装置を間違いなく共有できる。だから、彼とは必ず仕事がしたいと思っていたんだ」

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© Shayne Laverdière

——グザヴィエの分身ともいえるルイという主人公に選ばれたということは、あなたにグザヴィエ的な部分があるのでしょうか?

G:「あると思うよ。考え方など共感する部分も多い。けれど、性格はまるっきり違う。グザヴィエは二重性があるんだ。彼は、他人から見たら、なんて生意気なんだ、と思われることも多い。でも一方で、とてももろく繊細な部分もあるんだ。少なくともみんなが思うほど自信家じゃない(笑)。僕は、あまり押し出しが強い方じゃないけれど、根は頑固かもしれないね」

>>通底するテーマは“母親の存在”と“父親の不在”。

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通底するテーマは“母親の存在”と“父親の不在”。

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photo : KO TSUCHIYA

——母と息子というテーマを、ドランはライフワークにしているようにも見えます。この家族を巡る群像劇でさえも、母親の存在は大きいですね。

G:「確かに、グザヴィエの映画において母は大きな存在だね。それと同じくらいに重要なのが、父親の不在だ。彼に家族について尋ねたことはない。演じる上で、監督に聞かないほうがいいこともあるんだ。でも、グザヴィエの父親はちゃんと存在しているし、自分の家族はバランスのとれた家族だとも言っている。そういえば、彼は父親の人物像を作り上げることができないんだ、って言っていた。どちらにしても、その関係が作品を生み出す糧になっていることは確かだと思う。どう否定したところで、作品が監督を投影していることはまぎれもない事実だ。そしてそれが作品の美しさを創り出しているんだ」

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© Shayne Laverdière

——この作品には、フランスのスターキャストが揃っていますね。グザヴィエにとって、新しい一歩を踏み出したと思いますが。

G:「彼はこの作品でリスクを背負ったんだ。快適で安全な場所から一歩踏み出して。これは偉大なるアーティストの証だ。優れた監督は、自分自身の探求を止めることはない。彼は新たなものを求めているし、常に進歩している。その進歩はどこで止まるのかな、と思うけど、驚くべきことにどんどんスピードが加速しているくらいなんだ」

——大物俳優ばかりでしたが、撮影現場の雰囲気は?

G:「グザヴィエは、明確なヴィションとアイデアをもって撮影に臨むから、撮影はとてもスピーディにクリアに進むんだ。俳優陣が揃うのは8日だけ。モントリオール郊外のラバルという場所で撮影したんだけど、カナダでの撮影可能な時間は1日12時間で、フランスの8時間と比べると長いけれど、驚くほど短い撮影日数だよ。でも、初めて行ったのでケベックでの撮影はとても楽しかった。季節が夏だったので、活動的な季節で、生き生きとした命の喜びに満ちあふれている空気が漂っていた。素敵な体験だったよ。この映画をフランス映画かカナダ映画か問うのはナンセンスだ。場所も時代も特定しないのが、この作品のコンセプトのひとつだ。そうはいっても、ケベックのアイデンティティが根付いているのも、この作品の面白さなんだ」

【ストーリー】
残された命の時間を知った作家のルイは、12年ぶりに家族と再会することを決める。実家では、威圧的な兄と口ベタなその妻、兄を慕う妹、息子との再会に高揚する母親が待っていた。昼食をとりながら、ぎこちなく始まった家族の団らんだが、やがてそれぞれの想いが炸裂する。果たして、ルイは自身のことを告白できるのか。原作は、若くして亡くなった仏劇作家ジャン=リュック・ラガルスの戯曲。

『たかが世界の終わり』
●監督・脚本/グザヴィエ・ドラン
●出演/ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイ
●2016年、カナダ・フランス映画
●99分
●配給/ギャガ
●新宿武蔵野館ほか全国にて公開中

Gaspard Ulliel
1984年、フランス生まれ。12歳より俳優として活動開始。アンドレ・テシネの『かげろう』(2003年)で脚光を浴びた。『ハンニバル・ライジング』(07年)などハリウッド作品にも出演。『サンローラン』(14年)では若き天才デザイナーを演じ、セザール賞ノミネート。

 

interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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