編集KIMのシネマに片想い

変態的で、男っぽくて......だから好き、ヒッチコック。

編集KIMのシネマに片想い

私の書棚の映画本コーナーに、「積ん読」状態なのにもかかわらず輝いている大型本が大学時代から、あります。その書物のタイトルは『定本 映画術ヒッチコック/トリュフォー』(晶文社刊)。映画好きというからには買わねば!読まねば!と思いながら、時々めくる程度で、じっくり読み込んだことがないまま、長い時間が経ってしまった。だが、2016年12月、この本を執筆すべく、敬愛するヒッチコックに膨大な時間のインタビューを試みて、その映画のテクニックを世に知らしめたトリュフォーの、そしてもちろん彼の敬愛の対象ヒッチコックとのセッションを描く映画が公開されることになったのです。それも山田宏一さんの字幕で……。胸躍る!

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ふたりとも女と映画を愛する男であった……トリュフォーとヒッチコック。

この映画を観ていると、『ゴーン・ガール』のデヴィッド・フィンチャー、『グランド・ブタペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン、間もなく窪塚洋介ら日本人俳優が参加する『沈黙』が公開されるマーティン・スコセッシ、クリステン・スチュアートを大胆起用して素晴らしい女優魂を引き出したオリヴィエ・アサイヤス、ポストトリュフォーとも呼ばれたアルノー・デプレシャン、先のKIMブログでも大好き宣言したリチャード・リンクレイター、黒沢清など、そうそうたる世界的な映画監督たちが、いかにこの本から映画を撮る術を学んだか、を丁寧にインタビューで語ってくれている!映画好きにはたまらんのです。

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デヴィッド・フィンチャー

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ウェス・アンダーソン

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黒沢清

『ヒッチコック/トリュフォー』 ●監督・共同脚本/ケント・ジョーンズ ●出演/アルフレッド・ヒッチコック、フランソワ・トリュフォー ●2015年、アメリカ・フランス映画 ●80分 ●配給/ロングライド ●2016年12月10日より、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開

© COHEN MEDIA GROUP/ARTLINE FILMS/ARTE FRANCE 2015 ALL RIGHTS RESERVED. PHOTOS BY PHILIPPE HALSMAN/MAGNUM PHOTOS

でもKIMは、そこに言及するのではなく……ここでは、いかにヒッチコックが、美しき感性の変態で、かつ女が好きだったか(とKIMは個人的に感じた)ということについて語りたいと思います。

 

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この映画の中で特にフォーカスされるヒッチコック監督作は、『サイコ』(1960年、アメリカ映画)と『めまい』(58年、アメリカ映画)。もちろん他の映画にもたくさん触れるけれど、この2作のことは丁寧に分析され、セッションされています。映画製作を夢見る人たちの教科書のようなシーンが『サイコ』の浴室のシーン。その説明もじっくりと。このシーンには鬼気迫る人間の性が映画ならではの手法で映し出されていて、そこにも変態性ありと言われてますが、『めまい』を通して、まるで、恋愛未熟男子のような性質がヒッチコックにはあるのではないか、的な匂いを醸すのが面白い。ジェームズ・スチュアートの矛盾した女性に対する感情が巧みに描かれ、そして、コケティッシュにも鼻がつんと上を向いたキム・ノヴァクが、ブロンドとブラウンの髪の2つの女性を演じて、なんとも奇妙な心理劇になっているのです。

ヒッチコックは、ブロンド女優への執着心が尋常ではなかった人物です。それがもろ出てしまっている作品です。でもだからこそ、その危うい雰囲気がいびつで面白いのです。

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『めまい』 ●監督/アルフレッド・ヒッチコック ●出演/ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク ●1958年、アメリカ映画 ●本編128分 ●Blu-ray \2,037 発売・販売:NBCユニバーサル・エンターテイメント

Ⓒ1958 Alfred Hitchcock Productions, Inc. and Paramount Pictures Corporation. Renewed 1986 Universal Studios for Taylor and Patricia Hitchcock O'Connell as Co-Trustees. All Rights Reserved.

 

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ヒッチコックは創造意欲が半端なかった人です。映画を愛し、創ることを愛し、表現を愛していた人。そして同時に、女への執着がすごかった。金髪の美女、男の憧れであるアイコンのような女優たちへの、独占欲がすごかった。でも、注目したいのは、その妙な執着心は映画の創造意欲と絡み合い、女を利用し、活用していたけれど、愛し、尊敬もしていたこと。そして、ヒッチコックは、生涯ひとりの女性(製作スタッフ側)を妻として、その女性を心底「信用」していたのです……。

なんか、デキる男って感じです。

創作意欲を保ち続けるには、利用、活用、信用のすべてが、女たちによって満たされなければならなかった男。妻が不安になってしまうくらい、仕事の枠を超えて美しい女優たちを愛し、のめり込んで、妻からもさや当てをくらって(浮気され)、焦ってしまう男。過去から現代までの偉大なる映画監督たちから尊敬され、あがめられているアルフレッド・ヒッチコックは、こんなにも「女」という存在にからめとられ、しかし、巧みにその自分の感情までも利用して、映画史に残る作品を作っていったのですよね。

その姿が描かれている映画もあります。ドキュメンタリーではないけれど……。夫婦愛の映画であり、夫婦という共同組織の映画です。

サスペンスの帝王、とばかり呼ばないで。男と女を描く名手、フランソワ・トリュフォーが愛した映画の神様です、ヒッチコックは! 「たかが映画」を、映画ファンにたっくさん届けてくれたヒッチコックに、この年末は、はまってみません?

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『ヒッチコック』 ●監督/サーシャ・ガヴァシ ●出演/アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン ●2012年、アメリカ映画 ●本編99分 DVD¥1,533 発売・販売:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

Ⓒ2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 

 

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