Music Sketch

最新作をリリースし、話題の映画にも出演したホセ・ジェイムズ

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シンガーとして各方面から注目されているホセ・ジェイムズは、プリンス生誕の地として知られるミネソタ州ミネアポリス生まれ。ニューヨークの大学でジャズを専攻しながら各国のコンテストに参加していたところ、ロンドンで世界的クラブDJのジャイルス・ピーターソンから絶賛され、2008年に彼のレーベルからアルバム『ドリーマー』でデビュー。2012年にはジャズの名門レーベルであるブルーノートへ移籍して翌年メジャー・デビューし、日本でも全国のラジオチャートの洋楽1位を記録した「トラブル」などで音楽ファンを魅了してきた。最新アルバム『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』のリリース、そして話題の映画『フィフティ・シェイズ・ダーカー』にも出演した彼にインタビューした。

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ホセ・ジェイムズ、39歳。ロバート・グラスパーと同様、現代のジャズ・シーンを牽引する1人。

■どう繋がっているか、その道を辿るのがすごく好き

—毎回いろいろなタイプのアルバムを発表していますね。

ホセ(以下J):「僕は1月20日生まれで、山羊座の伝統的なところを重視していく面と、水瓶座のルールを壊して将来を見据えていく面の、その両方が入っている。それって、東京っぽいと思うんだよね。東京は伝統的な寺がある一方で、摩天楼のようなビルが建ち並び、とてもエネルギーがあって大好きな都市さ。自分の精神な部分と共通点を感じるよ」

—故郷ミネアポリスからは何を感じます?

J:「とても寒い(笑)。でも音楽的には素晴らしいところだよ。ロックもヒップホップ・シーンも、プリンスのような音楽もあるし。大きくて小さな街なんだ(笑)。都会だけど、住宅地のようなところもあるユニークな街。郊外と都会の、中途半端な感じだね」

—話は戻りますが、ホセさんの音楽は最先端のジャズと言われるように多様なものがミックスしているし、アルバムの内容も毎回変化しています。この振り幅の広さにはいつから気づいています?

J:「最初から、どんな音楽でも好きで聴いてきた。普通はみんな好きなタイプを決めたりするだろう? でも僕は音楽ってリンクしていると思っていたし、どういうふうに繋がっているか、その道を辿るのがすごく好きで楽しい。今朝もマリア・ジョアン・ピレシュ(ポルトガルのピアニスト)のショパンの『ノクターン』を聴いていたら、“キャロル・キングの『ナチュラル・ウーマン』はここから取ったのか”と思う瞬間があった。無意識かもしれないけど、そういうものを見つけた時の感覚って、例えば自然の中を普通に歩いてて、ふと気づいたらそこに誰かが来ていたことがわかる痕跡を見つけた時、“100年も前に、もしかしたらここに誰かいたのか”と思うと、普段の日常の仕事やニュースなどから離れて、“自分は大きな広い宇宙の中の一部なんだな”と、気づくんだ。だから歌も、初めて自分がこの歌を歌うわけではなくて、この音楽も初めて自分が知ったわけではなくて、“実は自分はもっとずっと前の大きなものの一部なんだ”って気づくんだよね」

「Always There」

■新しいビートを探すことが僕にとってのチャレンジ

—ホセの歌はリズム感覚が自由自在ですよね。リチャード・スペイヴンのようなドラムンベースも叩くドラマーとの共演もあれば、今回のアルバムのようにアンタリオ・ホームズと組んだ打ち込みでも歌っているし。毎回チャレンジャーで聴いていて楽しいです。リズムに対してはどのような思い入れがあります?

J:「スーパークールな質問だね。嬉しいよ。僕の父親はパナマでサックス奏者でもあったけど、コンガなどパーカッションも演奏していた。だから血だと思うんだよね。僕にとってリズムは最も音楽で重要な部分なんだ。いつも新しいビートを探していて、それが僕にとってのチャレンジで、自分自身を常にプッシュしているんだ」

—最新作からだと「ラスト・ナイト」や「クローサー」など、タイプの違うビートが共存した楽曲がユニークですよね。

J:「そうなんだ。実はアンタリオのトラックで最初に聴いたのは『クローサー』で、速いビートと遅いビートを同時にやってしまう彼のスタイルがすごく好きで、すごくカッコイイし新しいビートだし、まさにトラップ・ビートだよね。だからビートにはいつもインスパイアされている。ライヴはいつも(パソコンから音を出す)ラップトップと生ドラマーでやるので、いろんなリズムを楽しむことができるんだ。昨夜のライヴは自分のラップトップだけだったから、自分がメロディーを100%コントロールできるし、フローすることもできる。だから一定のリズムから離れられなくなることなしに、逆のところに行くこともできるんだよね」

—昨日のライヴ、「トラブル」のリミックスがすごく良くて、以前のホセと現在のホセのスタイルとの橋渡しになっていたと感じました。

J:「気づいてくれてすごく嬉しいよ。全然知らない曲を初めからバン!とやったらトゥー・マッチになってしまう。『トラブル』のようにみんなが知ってる曲を変えることで、“このプロダクションもいいね”って気づいてくれるわけで。だから“これがこれからの自分、新しい自分だよ”って見せる意味で、リミックスのヴァージョンで披露したんだ」

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2月15日に行われたショーケース・イベント「APPLEBUM x BLUE NOTE present BLUE LOUNGE」の模様。Photo:Ryota Mori

■混乱の時代だからこそ、愛の大切さを歌いたい

—ライヴで興味深かったのは、「自分はR&Bシンガーだ」って話していたこと。究極な意味で“ホセ・ジェイムズ”というジャンルだと思うんですが、今はR&Bでやっていきたいという気持ちが強いのですか?

J:「そうだね。最新アルバムは確かにピュアなR&Bプロジェクトだから。僕は音楽的な遺産をリスペクトしてきて、例えば自分がカヴァーしてきたビル・ウィザース、マーヴィン・ゲイ、ギル・スコット・ヘロン、アル・グリーンなどはジャズからスタートしていたり、ジャズからインスパイアされていたりする。だから僕にとってジャズは土台であり、全ての始まりだけど、R&Bを歌うのも、自分にとっては自然の進化なんだ」

確かに。

J:「ルイ・アームストロングもアンダーソン・パークも、誰もがジャンルのレジェンド。音楽的なリニエッジなんだ。それに、“もしビリー・ホリデイが今21歳で生きていたら、何をやっていただろう?”って、そういうことを想像するのが面白い。物事って全て偶然なわけだから、自分だって1920年代に生まれていたかもしれないし、そうしたらその時の楽器を使って音楽をやっていたわけだろうから。でも今は2017年だから、今あるものを使って何が悪いんだってことになると思うんだ」

—このアルバムはラヴ・アルバムであり、社会に対してのメッセージを込めたアルバムにしたかったそうですね。

J:「そうさ。アルバムタイトルが指すように、アメリカ社会の狂気がすごいことになっているけれど、混乱の時代だからこそ、愛の大切さを歌いたかった。言いたいことを言うことはできたよ。素晴らしいライターやプロデューサーにヘルプしてもらったけどね」

「To Be With You」

■これからは有効的に思える音楽を作りたい

—話は変わりますが、映画『フィフティ・シェイズ・ダーカー』でのシンガー役はどうでした? 前作に続き、ラヴをテーマにした話題作ですよね。

J:「僕のダークサイドだね(笑)。愛を歌い上げるような役で、仮面パーティでフランク・シナトラの『I’ve Got You Under My Skin』と『They Can’t Take That Away From Me』の2曲を歌っている」

—あの映画だと、服を着ていなかったりして?(笑)

J:「(笑)ちゃんと着たよ。スーツでキメている。完成した映画を見て感動したよ。バットマンのいない『バットマン』を見たような感じ、ブルース・ウェインだけがいるような感じだった」

—どんな映画が好き?

J:「『パルフ・フィクション』。音楽が素晴らしいしね。古い映画やサムライ系も好きで、黒沢監督だと『隠し砦の三悪人』が一番好き。通りすがりのまま事件に巻き込まれて、町を救って、最後は消えていくような主人公に憧れるね(笑)」

—最後に今後やっていきたいことについて教えてください。

J:「若い頃って、自分の頭の中だけの音楽を見つけることに意義ばかり感じて、人に届けることを忘れてしまうよね。例えばジョン・コルトレーンは歳を取るにつれて彼の音楽はシンプルなものになっていった。つまり最初は自分の難しかったものがシンプルになっていったように、あと、突き詰めると音楽は神であって、というのも、多くの人の気持ちをアップリフトするところが神なんだ。だから僕も今後は人に届けられる、しかも有効的に思える音楽を作りたいと思っている。聴き終わった後に、『私の母は病気なんだけど、あなたの音楽から力をもらった』と言われるような、ね。本当の医者ではないから病気は治せないけど、政治家じゃないから政治を変えることはできないけれど、何か自分の音楽がそういう風に使われればという意味での、音楽を作っていきたいね」

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とてもお茶目で話題も豊富、話が脱線することもしばしば。

グラミー賞について語った記事→
http://madamefigaro.jp/culture/series/music-sketch/170217-grammy.html

SUMMER SONIC 2017出演→
http://www.summersonic.com/2017/

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最新アルバム『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』
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*To Be Continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh
音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』をはじめ、『pen』『装苑』ほかモード誌などで、取材、対談、原稿執筆、編集を担当。ほかにCD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh

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