Music Sketch

ミシェル・ブランチが14年ぶりに発表したアルバムとは!?

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とにかくビックリした。ミシェル・ブランチが14年ぶりに発表したフル・アルバム『ホープレス・ロマンティック』がちょっと別人のようだからだ。

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ミシェル・ブランチ33歳。インドネシア他、ヨーロッパの血も入っていて、ミステリアスな雰囲気も魅力の一つ。鼻ピアスはいつから?

長いブランクがあったわけではない。ソロ・アルバムを2枚出して、結婚した後も、カントリー・デュオのザ・レッカーズを女友達と結成し、そのアルバム『スタンド・スティル、ルック・プリティ』(2006年)から次々とヒット曲が生まれ、グラミー賞で4 部門にノミネートされていたほど。2010年には再びソロとして6曲入りEP『Everything Comes And Goes』を発表したし、2011年10月に来日した際に、FIGAROで音楽イベントを行った時に、発売間近で予定されていたアルバムがあり、数曲聴かせてもらったほどだ。

ミシェル・ブランチ・ナイトの記事
http://madamefigaro.jp/culture/series/music-sketch/post-894.html

「Loud Music」2011年に発表したシングル曲

結局シングル「Loud Music」以外リリースされることなく時間が経ってしまったが、その時の音源はミシェル・ファンの期待を裏切らないものであったし、2013年にビルボードライブ東京でギタリストと2人で公演を行った時も、そこまでの音楽的な変化は読み取れなかった。当時は別居報道があったものの、次のアルバムリリースが決まっている話をしてくれるなど、元気そうな様子で安心したのを覚えている。

■新たな出逢いで人生も歌も大きく変化

大きな変化は新曲の動画がアップされた時だ。このちょっと甘ったるい歌い方はこれまでのミシェルにはなかった。さらにアルバムの音源を聴いて、カイリー・ミノーグを想起してしまうほど、その思いがさらに強くなった。離婚のことも歌っているが、これは“大学生デビュー”と呼ばれる類の、"30代で恋愛デビューしたような女性"の恋するアルバムだ。

「Hopeless Romantic」ニューアルバムからの1stリード曲

資料によれば、ビーチ・ハウスやジェニー・ルイスなどのインディー・ポップ系が好きなミシェルの現在の趣向を反映させた結果らしい。その方向性にさらに魔法をかけたのは、プロデュースを担当したザ・ブラック・キーズのパトリック・カーニーだ。2人の出逢いは2015年2月、グラミー賞のパーティ会場という。その際にパトリックから「長い間、曲を発表していないよね? 今はどうなっているの? 僕はずっと君の声が大好きなんだよね」と言われ、それが嬉しかったミシェルはすぐに数曲のデモを送り、そこからコラボが始まった。

10代でさほど苦労をしないまま華々しい経験をしてしまった人は、絶対にその日々を忘れられない。しかもミシェルはアルバムを作ったものの発表できないような経験をしたばかり。離婚してシングル・マザーとなった彼女が、ミュージシャンとしても女性としても自分を認めてくれる人物に頼りたくなる気持ちはとてもわかる。ある意味、ミッシェルは今の自分を変えて、脱皮したい心境だったのだろう。30歳の誕生日を前に書いた曲「シティ」は、「何かを変えたいという自分に気づいたことを歌った曲」だった。

■20歳で結婚、21歳で出産、32歳から新たなスタート

パトリックは、クラシック・ロックやカントリー・ミュージックが好きなイメージを持たれやすいミシェルがインディー・ロックを好きなことを面白がり、「きっと誰も想像しないから、好きなサウンドを形にしていこう」と、ガス・セイファート(ブラック・キーズ、ベック、ノラ・ジョーンズ、プリシラ・アン等)を誘い、少人数で音楽制作に取りかかったという。これだけでも親密な関係になってしまう条件は揃ったが、しかもザ・ブラック・キーズでドラマーとして活躍するパトリックは、相方のダン・オーバックと合わせてグラミー賞を7部門受賞しているし、個人ではザ・シープドッグスやテニス、カレン・エルソンなど多岐にわたってプロデュースして名を成している才能の持ち主。またジャック・ホワイトとザ・ブラック・キーズには長い間確執が続いていて、さらに一悶着起こすようなことがあったものの、それ以上おおごとにならないよう、気持ちを改めて自分から和解へ持っていけるような人物でもある。そんな性格にも惹かれてしまったようだ。

「Everywhere」懐かしい2001年のデビュー曲

一方、20歳で結婚し、21歳で出産して母になったミシェルは、いわゆる胸がときめくようなデートは10代を最後にしていなかったという。何しろミシェルは10代から音楽一筋に疾走してきたミュージシャンだ。

「自分たち世代の歌は、大人が書くのではなく、自分たちで作らないと意味がない」と、16歳の時に自費制作でアルバム『Broken Bracelet』を発表。この作品が注目され、マドンナが設立したレーベルのマーヴェリックと17歳で契約、18歳になってすぐに発表したメジャー・デビュー・アルバム『ザ・スピリット・ルーム』(2001年)は世界的な大ヒットとなった。しかも第45回グラミー賞(2003年)ではカルロス・サンタナ&ミシェル・ブランチとして「ゲーム・オブ・ラブ」で最優秀ポップ・コラボレーション・ウィズ・ヴォーカル賞を受賞し、続く2枚目のアルバム『ホテル・ペイパー』(2003年)も全米アルバムチャート初登場第2位を記録するなど時の人に。そしてこの人気絶頂の19歳の時に、バンドメンバーだった19歳年上のベース奏者のテディー・ランドー(名ギタリスト、マイケル・ランドウの弟)と1年半にも及ぶワールドツアーの間に親しくなり、結婚。すぐに娘を出産した。その後は冒頭のように子育てと両立しながら音楽活動を行い、2011年の来日時には、「パイやケーキを焼くのが好きだから、将来はベイカリーをやりたい」と、幸せそうな様子も見せていた。その数年後に離婚するとは、とても想像できなかった。

■30代だから歌える恋愛の歌

今回の『ホープレス・ロマンティック』の内容は、彼女の実体験から生まれたナンバーばかりだ。別れの気持ちを歌ったものがあるかと思えば、新しい恋に向かうものもある。恋や愛の渦中にいる人なら、共感できる部分が多いはずだ。

「このアルバムは10 代の恋愛ではなくて、もっと大人のグチャグチャした恋愛を描いている。この数年は結構面白い数年だったわ。なぜって、最後に誰かと付き合ったのは 10 代の頃だったから(笑)。アルバムタイトルはまさにこのアルバムを言い表していると思う。多くの曲は失恋の歌だけど、失恋は世界の終わりを意味するものではないことを理解した上で歌っている。単に手放して、そこから前進して、これから大変かもしれないけど、もっといいものが見つかるということへの理解なの」

「Best You Ever」

レコード会社からの資料によれば、1曲目の「ベスト・ユー・エヴァー」は、過去の恋愛についてミシェルが投げ掛ける最後の言葉、3曲目の「フォルト・ライン」は“もう手遅れだとわかっているけれど、関係を修復しようとすること”を歌った曲という。片や「ハートブレイク・ナウ」は、“あなたは私にとってよくない人だってわかっているけど、あなたへの思いを止められない”というラヴソング。「キャリー・ミー・ホーム」はミシェルとパトリックが最初に一緒にスタジオに入った数日間を思い起こさせるナンバーという。そして当時、ミシェルは家族に「私の人生の中でとても重要な位置を占めるだろうと思える人に出逢ったの」と話したそうだ。

「Fault Line」今年出演した朝の番組 「Good Morning America」で。ドラムを叩いているのがパトリック・カーニー。

「助言者としてなのか、完全に音楽限定なのかはわからないけど、ここまで誰かと理解し合えたことはなかったの。何事も起こるべくして起こるものだと私は本当に信じている。自分でとても誇りに思えるアルバムを作ることができて、その過程で人生最大の恋愛と出逢えたことは、起こるべくして起こったことだと今は思えるのよ」と話しているミシェル。まさに今もラヴラヴな状態だろう。とは言っても、最もこれまでのミシェル・ブランチらしさを感じさせる「ノック・ユアセルフ・アウト」が中盤に収まっていることで、何かホッとさせられる。

ミシェル・ブランチは現在33歳。娘も大きくなってきたことだし、まだまだこの先たくさん人生を謳歌してほしいし、このアルバムを聴いた人もミシェルの歌から何らかのきっかけを受け取って前に進んでもらえれば、と思う。

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『ホープレス・ロマンティック』日本盤はボーナストラック収録。
Amazonでの購入はこちら≫

《来日公演情報》
ビルボードライブ大阪
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=10481&shop=2
6月26日(月)
1stステージ 開場17:30開演18:30 /2ndステージ 開演20:30 開演21:30
サービスエリア ¥10,800 カジュアルエリア ¥9,800

ビルボードライブ東京
www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=10480&shop=1
6月28日(水)、6月29日(木)
両日ともに1stステージ 開場17:30 開演19:00 /2ndステージ 開場20:45 開演21:30
サービスエリア ¥9,800 カジュアルエリア ¥8,300

*To Be Continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh
音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』をはじめ、『pen』『装苑』ほかモード誌などで、取材、対談、原稿執筆、編集を担当。ほかにCD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh

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