Music Sketch

フジロックで大盛況! 女性5人組ファンクバンドBimBamBoom(後編)

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引き続き、BimBamBoomのインタビュー記事を。

さて、各自が別のバンドに所属し、スケジュールを合わせながらの活動だと、モチベーションを保つのが大変な気がするし、実際、結成してから3年ほど経つ中で、ライヴ本数が13本というマイペースぶりだ。しかしリーダーの大らかな性格によるのか、「半年に1回のライヴでも、その間みんなにいろいろありつつ、毎回フレッシュな気持ちで集まれるので、それを楽しめる余裕がありました。みんなが育つのを待っているような感じだし、急ぐことないじゃないですか。ここまで来ちゃったら、歳も歳だし(笑)。ファンクとかやるのが初めてというメンバーがいて、そんな状況で今のタイミングで表に出ても、というのがあったから、もっと全員が"ワ~ッ"って盛り上がってきた時に表に出るいいタイミングが来るだろうな、っていうのはずっと思っていました。焦ってはいなかったですね」と、山口美代子は話す。おそらくメンバー内で一番忙しいのは、人気ドラマーとして数多くのサポートの仕事に追われる彼女自身ということもあるだろう。

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今年のフジロックの3日目のGYPSY AVARONのステージに登場。かなり奥にある会場ながら、大勢の人が音楽に惹きつけられるように続々と集まった。

■ 勉強の場から、自分のバンドへと意識するように

本来のロック系のバンドと並行して活動してきたMaryne(B)と岡愛子(G)に、BimBamBoomに向けての気持ちの変化を聞いてみた。

― Maryneさんは、前のバンドの解散後にスタートしたMade in Asiaでの活動が忙しくなり、BimBamBoomと合わせて、ある意味真逆のタイプのバンドでの活動が並行していくことになりましたよね? BimBamBoomの存在はどのように変わってきていますか?

Maryne(以下、M):「最初は正直、自分のバンドという意識より、挑戦する場っていう感覚がすごくあって。ただ、"カッコイイ、こんな音楽があったんだ!"という思いがあったので、ライヴがなくてもファンク系の音楽をいろいろ聴くようになりました。しかも曲を覚えるだけじゃなくて、身体に入ってないとちゃんとライヴで演奏できないから、そういう点でも切り替えていけるようになって、オリジナル曲が完成していくにつれて、実験の場、勉強の場ではなくてバンドだという感覚はできてきました。今年1月のレコーディングの前には完全に意識が変わりましたね。必ずいいものを出したいって思ったし」

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福岡の音楽学校を卒業後、ニューヨークで腕を磨いたという田中歩(key)。6月9日六本木VARITでのライヴ(以下同)。

― 愛子さんは福岡から4年前に上京してBAND A中心の生活が続いていたわけで。紆余曲折があったせいか、今の愛子さんのギターには生き様が感じられるんですよね。

岡(以下、O):「BAND Aありきの生活を送っていたので、その間はBimBamBoomは勉強させてもらう場っていう認識でした。去年バンドが解散したのを機に、こっちのバンドを自分のものにしていきたいと積極的に思えてきて。私はずっといろんな音に埋もれて騙し騙しやってきたところがあるけれど、ここでの演奏は丸裸。"このバンドのヴォーカル(的な存在)は美代子さん"みたいな部分が演奏面にあり、そのドラムを聴きながら演奏する部分はあるんですけど、ギターを弾く身分としてサウンド的には丸裸で、そのまま聴かれてしまうから逃げ道はないんです。でも、自分にとってはいい環境ですね。ステージに立ったら、例えば舞台女優かのように演奏する人もいらっしゃるんですけど、私の場合は私らしさをぶつける演奏しかできないって思っています。だからより一層"生き様"だと感じられたのかもしれないですね」

「O.E.C. TIGER ROLL」最初に登場する鮨職人が、知る人ぞ知る大御所プロデューサーのs-ken氏。

■ ミーターズから始まり、掛け声入りのファンク・バンドへ

山口美代子をリーダーに集まった初々しいこのバンドは、ミーターズのカヴァーからセッションをスタートしたという。山口が元々ミーターズを大好きで20歳の頃にコピーしていたといい、またs-kenからも"ニューオリンズ・ファンク括りでやろう"というアイデアがあり、それを先ずバンドメンバーの血の中に入れるために選ばれた。演奏の中に掛け声を入れるというコンセプトもここからだ。「お客さんに対してのキャッチーさに加え、自分達が盛り上がるための掛け声として、あとは楽器的な意味もちょっとあるかもしれないですね」(山口)。ミーターズの楽曲は、ライヴでは定番の人気ナンバーとしてメドレーで披露されている。他にもフィラデルフィア出身のファンク・バンド、ピープルズ・チョイスの曲や、元ポップ・グループのサイモン・アンダーウッドが結成したピッグバグの曲を自分たちの音楽へ寄せてカヴァーし、新たな魅力を発揮している。

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リーダーの山口美代子。DETROIT7を経て、Scott & Rivers、PUFFY、tricot、Muddy Apesなど、数多くのサポートをこなしている人気ドラマー。

■ インストだから楽しめる各楽器の響き合い

オリジナル曲でいうと、アルバムタイトルにもなり、1曲目に収録された『O.E.C. TIGER ROLL』ができたことでバンドの音楽性が決まった感じがあったという。

山口(以下、Y):「掛け声の成り立ち、リズムの感じ、サックスの入ってくる感じとかメロディとか。それで盛り上がったっていうのが一番大きいんじゃないかな。去年の前半にはできていた曲で、ライヴでもやっていたから、1年は経ってると思う」

アルバムの最後を締める『SHALALA SHALALA LET'S DO THE MOMKEY』が一番最後に完成。曲はainee(smorgas)やNEMO(COOL DRIVE)、作詞はs-kenが担当し、ギターソロなどは、セッションを繰り返す中で変えていくこともあるという。どの曲もクセになるフレーズや掛け声が耳に強く残り、すぐに覚えてしまうキャッチーさが魅力。ギターやキーボードとサックスのユニゾンや、ギターのカッティングやベースソロとドラムの絡みをはじめ、印象的なフレーズを強調する部分があるかと思うと、各楽器の見せ場も随所に盛り込まれている。

「HUSH-HUSH」

■ 新しいものとルーツになるものをカッコよく落とし込んで

個人的には「RENDEZVOUS WITH MIRACLES」が一番のお気に入り。作曲したainee曰く、「CMに使われるようなミステリアスでサスペンスな感じにしたい」とのこと。聴きどころのギターソロに関しては、「背が高くて、ある程度筋肉があって、レニー・クラヴィッツみたいなミュージシャンの気持ちになりきって弾いています。この曲だけ、私の中になかった新たな私のキャラクターが出ています(笑)」と、岡愛子が冗談めかして話してくれた。

― Maryneさんの一番のベースの見せ場はどこでしょう?

M:「どれもベースラインが肝だし、頑張ってはいるんですけど、3曲目の『CHINPUNKANPUNBIMBAMBOOM』という曲のデモを聴いた時に度肝を抜かれたベースラインがあって。難しい上に"何このフレーズ!"っていう、すごい衝撃だったんです。あと、この曲は実はジェームス・チャンスとかのあたりにインスパイアされているというのを後で知った時に、めっちゃカッコイイことを私達はしてるじゃないかって思って(笑)。このアルバムをたまたま買った人、たまたま私たちのライヴに行った人がジェームス・チャンスを知らなくても、新しいカッコイイものとして楽しんでくれたら、というのがあって。自分はこの曲はベースラインを含め、気に入ってますね」

― Maryneさんが思うカッコイイ音楽とは?

M:「最低限の楽器でどれだけちゃんとリズムやグルーヴがあって、かつ新しいものとルーツになるものを上手く落とし込めている音楽。そういう音楽をやりたいなって思います」

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ファンク・ミュージックをこよなく愛する山口美代子が、自ら掛け声をかけて会場を盛り上げる。特徴のある叩き方で、こちらもクセになる。

■ ドラムのこだわりからもしっかり楽しみたい

― ドラムの話をはじめるとキリがないんですが、スネアやハイハットの音とかとても綺麗に鳴っていますよね。16ビートだと金物の音がどうしても多くなる中で、どうベースとのバランスを取ろうと思ってますか?

Y:「音質的にはミーターズだとちょっと高すぎちゃうと思うんですけど、スタントン・ムーアのスネアを一生懸命研究してレコーディングはしてて、意外と音は軽めな感じなんだけど、実際のリズムはすごく重いんですよね。"ドベーン"としてて、同じ曲をみんなが聴いている中でひとりですごく大きく取っちゃうんですよ。遅いんです。tricotでやってても、みんなの方が軽く終わっちゃうんだけど、私は一周が大きいというか。後ろに取る癖があって"ドベーン"としてる」

― ライヴではそれを感じますね。

Y:「でもその"ドベーン"としてる中でのMaryneの器用さが活きればいいなと思っていて。バスドラとかをちょっと立たせてくれるっていうか。逆の立場になるレコーディングももちろんあるけど、そのベースにちょっと立たせてもらっているみたいなポジショニングが好きで(笑)」

― それはわかる気がします。ベースの立ち位置で曲全く変わってきそうだから。それにしても美代さんはこのバンド、とても楽しんでいますよね?

Y:「叩くのも楽しいし、昔やっていたことにちょっと戻れたっていうのも楽しかったし、20歳の頃に叩いてた同じフレーズが、15年ぐらい経って帰ってきた時に叩いたら"こうなるんだ"っていうのが面白くて。最初から楽しかったですね。あとはs-kenさんがやっぱり言うことも面白いっていうか変わってますよね、やっぱり(笑)」

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フロントに立つ、前田サラ(Sax)と岡愛子(G)でライヴを引っ張っていく。

■ 海外進出も視野に入れて

アルバムに収められた楽曲は、すでにライヴで熟成され、どんどん表情豊かになっている。今後はバンドでも曲を作っていきたいそうで、どんな扉が開けられていくか楽しみだ。また山口美代子が数多く海外のフェスに出演してきた実績からも、このバンドでの海外進出も考えているそう。

Y:「とは言っても、ようやく走り始めた感じなんですけどね。周りの方がよくやってきたって感じ(笑)。s-kenさん、aineeさん、あとアートワークをやっている人たちもずっと3年前ぐらいから一緒にやってて、みんなチームなんですけど、本当にありがたいです」

今後は9月10日、11日に岐阜県中津川公園内特設ステージで行われる『中津川THE SOLOR BUDOKAN 2016』(http://solarbudokan.com/2016/)の11日に出演決定。9月15日には六本木VARITで『Bim Bam Boom Sessions Vol.11』を開催する。

インストと掛け声だけというユニークなファンクミュージックながら、ひとつひとつの曲にしっかりキャラクターのある楽しい曲調。もちろん中心的存在の山口美代子の緩急の効いた思い切りの良いドラミングの凄さを目の当たりに見るだけでも、十分な価値がある。次のアルバムが出る頃までには、もっと大きな会場でライヴをやるようになってそうなので、今のうちにライヴに足を運んで、身近にBimBamBoomを体感することをオススメしたい。

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BimBamBoom デビューアルバム『TIGER ROLL』。BimBamBoomの名前の由来は50年代のR&Bの隠れた名曲のタイトルから。今は廃刊になってしまった幻のコレクターズマガジンのタイトルにもなった。

BimBamBoomのHPはコチラ→www.bimbamboom.tokyo/

*To be continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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