Music Sketch

テイラー・スウィフト ライヴ・レポート

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テイラー・スウィフトのコンサートを観に、さいたまスーパーアリーナへ行ってきました。前回の日本武道館公演(2011年2月)があまりに素晴らしく、ただし日本のショウは海外公演に比べて規模が小さかったため、2012年3月にシドニーまで観に行ってきたほど。今回はアリーナクラスでやるので、クレーンは使わないとしても、それなりにアメリカ公演と差がないものをやってくれるのでは、と期待は高まります。

アルバム『RED』は2012年12月に発売され、ワールドツアーは2013年3月13日からスタート。北米では47都市66公演で136万人を動員し、ニュージーランドやオーストラリア、イギリス、ドイツをまわり、そしてアジア・ツアーの中で日本公演は6月1日のみ。そのためツアータイトルにちなんで赤を取り入れたファッションで着飾った、全国から集まったファンで会場周辺は早くから賑わい、中へ入ると色取り取りのサイリウムを持ったファンが2万人も集まっていました。

今回、私はアリーナ・スタンディングのチケットを購入したところ、フロアの大半は10代、20代の女子。日本武道館公演は1階スタンド席で観て、周囲は家族連れが多かったので、スタンド席はファミリーユースも多かったのではないでしょうか。カントリー・ミュージックがベースにあるテイラーの曲はメロディからして親しみやすく、70年代のポップスを愛聴してきた年配の音楽ファンにも好まれそうです。


■ 2万人の大観衆を集めた大熱狂ライヴ

オープングアクトのCTSのパフォーマンスで、『アナと雪の女王』の「Let It Go」が流れた瞬間に会場が異常なほどに大合唱となり、早くもここには計り知れない女子パワーが集結していることを認識。テイラーが登場する19時近くになると彼女に関する映像がモニターに流れ始め、会場の熱気が高まっていきます。

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身長が180cm近くあるテイラー・スウィフト。ファッションセンスにも定評があります。


時刻が19時を少し回った頃にタムドラムを叩く音を合図にステージに照明が点き、そのビートに合わせて客席から手拍子が。赤い幕にテイラーのシルエットが映った瞬間に、割れんばかりの歓声が飛び交い、オープニングの「State of Grace」がスタート。冒頭は音程が不安定で、しかも幕が落ちずに正面で引っかかっていたのが気になったけれど、さすがにワールドツアーで場数を踏んでいるだけあり、すぐにギアチェンジ。黒のハットにゴージャスなレースの純白のトップス、そして黒のホットパンツというシンプルな衣装がテイラーを際立て、しかもまるでその角度まで計算したかのように、伸びやかに歌い上げる曲に合わせて真紅のスワロフスキーで飾られたハンドマイクを高く挙げ、しっかり見せ場を作っていきます。そしていつものように歌い終わってから歓声にしばし聞き入りながら、満面の笑顔を見せ、「アリガトウ」と言葉を添えます。

続く「Holy Ground」ではハットを取り、男女8人のダンサーたちと軽快に花道を進み、歌い、ハイライトはテイラーが壇上に置かれた大きめのドラムを素手のまま豪快に叩くシーン。冒頭からこんなに熱いパフォーマンスを見せられたら、誰しも興奮昂るでしょ。そして歌い終わった後、再び大歓声の中、「コンバンワ〜、トウキョウ」と第一声。「And Welcome To The Red Tour」。そこから「トウキョウ、戻ってきて嬉しいわ。最初にあなたたちに会いにきた時、それは数年前なんだけど、トウキョウと恋に落ちたの」と話し始め、「こんなに素晴らしいあなたたちの元に、レッドツアーでトウキョウに戻って来れて嬉しい。しかも、20000人もアリーナに会いに来てくれてありがとう」と英語で続けます。『RED』が日本でダブルプラチナセールスを記録したことに感謝しつつ、「この失恋を歌ったアルバムでは、LOVEというクレージーでちょっと正気じゃなくて情熱的で最悪で素晴らしい感情を表現した色、つまり燃えるような色を表現したの(意訳)」と語って、表題曲へ。この「Red」では、テイラーとギタリストが共に真紅のギターを演奏し、ダンサーたちも皆赤い旗を振りかざし、スクリーンにも赤い液体が飛び散る映像が映し出されるなどして、会場全体が赤く彩られました。

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どんなに人気者になっても、デビュー当時からのバンドメンバーを大切にしています。

■ 曲間に流れる映像にもオシャレ感たっぷり

続いてスクリーンには昔の新聞や映像が映され、"LUCKY"と書かれたドアが開くと、そこには50年代のオードリー・ヘップバーンを想起させるようなモノトーンの映像の中にテイラーが登場。唇にルージュを塗ると、そこだけ赤く目立ち、会場からは「おぉ〜」という感嘆の声が。インタールード的にその映像と音楽が差し込まれると、赤いドレスを身に纏ったテイラーが、ドレスアップしたダンサーたちと登場し、「Lucky One」をゆるやかに披露。古き良き時代のアメリカをイメージさせるような展開へと移ります。

そして、やはり1曲終わるごとの歓声がハンパなく、彼女が喋り始めないと途切れないほど。「トウキョウ〜、ダイスキマ〜ス」、「モリアガッテル?」「サイコウ!!!」と、中国から日本に移動したばかりで"大好きです"と"愛してます"を一緒にしてしまいながらも、サービス精神から日本語を連発。昨日空港でファンが歓迎してくれたことや、いつも来るたびにプレゼントや手紙をもらうことに感謝し、バンジョーを弾きながら、12歳から曲作りを始めたことを、まるでそこにいる友人に語り掛けているかのように普通に話しだします。この雰囲気がとてもいい。

大ヒット曲の一つである「Mean」では、彼女が歌い始めたら手拍子に大合唱が加わり、スクリーンでは回転木馬が回り始め、バンドもヴァイオリンを中心にカントリー・テイストのサウンドが加わっていきます。テイラーも白いスカートにチェンジしていて、意地悪されたことに対しての歌ながら、皆の歌声に会場全体が和んでいきました。

続いては、映画が上映される前の1分、2分......のテロップが年齢で表記され、1歳のテイラーから現在までをざっと紹介。2歳でトイピアノを弾く様子などレアな映像に「可愛い!!」との声が上がり、グラミーを受賞した時のものや現在までが一気に紹介されると、「22」と共にテイラーはスパンコールで"Tokyo"と書かれた青いTシャツと黒のホットパンツ、キラキラのフラットシューズで登場。そしてファンと交流しながら、後部のサブステージへと歩き、ダンサーもハイスクールミュージカルやグリーを思わるノリで合流。私がいた場所はそんなに混んでいなかったので、すぐにサブステージ横へ移動できたものの、直後にどっと観客が押し寄せたため、ここからの混雑ぶりが凄かったです。


■ 1人1人に歌いかけるようなギターの弾き語り

1人サブステージに上がったテイラーは、「MINE」を赤いアコースティック・ギターで、「YOU BELONG WITH ME」をブラウンのアコースティック・ギターで弾き語り。歌に思いが漲っていてじっくり聴き入ることができたし、1人1人に丁寧に届けたいという気持ちも伝わってきて、素晴らしい音楽空間でした。次は12弦ギターに持ち替えて「SPARKS FLY」を。前回のように1曲ずつ向きを変えて歌うことはなかった分、サブステージを去る時に四方を向いて挨拶してくれましたが、写真を撮ろうとする人と少しでも近くに行きたい人とで、かなり危ないことになっていました。私は撮影がOKかどうか確認していなかったので、全く撮りませんでした。

The Red Tourの様子を編集した「Red」のMV


後半のインタールードはエレクトロニック・ヴァイオリンから始まり、スクリレックスばりのEDMサウンドが加わったところで沸点が上がり、テイラーは白とゴールドによる贅を尽くしたドレスで登場。中世のお屋敷を思わせる舞台セットに変わると、テイラーは黒の衣装へ寸時にチェンジし、「I Knew You Were Trouble」という歌の内容に合った激しいステージングに。テイラーお得意のヘドバンも、縦へ横へと披露。とにかく今回の衣装はどれもテイラーの魅力を引き出す凝ったもので、調べたところ、レースや刺繍が特徴的なマリーナ・トイビナが手掛け、テイラーの衣装のほとんどと、ダンサーの衣装は全部デザインしたそう。シューズは、ブロードウェイのミュージカルスターも御用達らしい、履きやすくて踊りやすいラデューカ・シューズのもので、ブーツも全てそうだった様子。こちらもオシャレでした(オフィシャルでもらえた写真は2点のみで残念)。

続いて赤いピアノでの弾き語りから「All Too Well」が始まり、ギターがゆっくり入り、コーラスも加わり、ドラマチックな展開に。一旦ブレイクして、歓声を聞いてから溜めてから、また歌い始めるなど、テイラーはまるでライヴの指揮者のように観客のノリも仕切っていきます。

男女のバレエダンサーが登場し、やや不安気でエヴァネッセンス風のゴシックな音遣いが始まったと思ったら、いきなり人気曲「LOVE STORY」のイントロが鳴りだして、歓声とともに会場から手拍子が。テイラーは白いドレスのプリンセスとなり、王子様役のダンサーも現れて、パーティへと展開。ヴァイオリンとバンドのアンサブルが魅惑的で、テイラーも踊りながら歌っても全く息が切れないのは凄いと感心していたら、「Good−night Tokyo」の挨拶でテイラーは退場。これは、かなりさっぱりした本編終了でした。


■ 会場全体で大合唱する女子会モードが楽しい

アンコールはサーカスを思わせる音楽から、大ヒット曲「We Are Never Ever Getting Back Together」のアコースティック・ギターのイントロが始まって、この日一番の大歓声に。テイラーは真紅の燕尾服で、他に道化師なども現れ、まさにドリームランド状態。正直、この頃になると、楽しそうにしているお客さんを観ているだけで幸せな気分になるほどでした。テイラーが「Put your hands! Tokyo」「Tokyo, thank you sooooooo much!! 」「Are you ready to sing? Tokyo」と立て続けに観客に語りかけ、"私たちはこれからも絶対に元に戻ることはないの!"と歌う、大合唱の大女子会モードで幕を閉じました。計1時間半だったので、できればもう少し歌ってほしかったけれど、歌はもちろん、衣装もとても素晴らしく、インタールードをはじめとするちょっとした見せ場の細部にまで凝っていて、夢溢れるアメリカの良き時代の温もりやオシャレ感をも感じさせる、とっておきのショウタイムを堪能することができました。

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大ヒット・アルバム『RED』


ソングライター、そしてシンガーとしての才能や魅力に加えて、来てくれた観客1人残らず楽しんでもらえるようにさまざまな見せ方を用意し、しかもスーパースターであることを感じさせない素朴な語りやハンドタッチなど、1人1人に対する接し方も誠実で、そんなところもテイラー・スウィフトの人気の要因になっていると思います。自分の気持ちに嘘をつかずに恋に猛進し、しかもそこから歌を書いてしまう表裏のないキャラも、女子ならつい共感&応援したくなるのかもしれないですね。

*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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