Music Sketch

注目の新世代ポップ・アイコン、ホールジーにインタビュー(前半)

Music Sketch

昨年12月にホールジーの電話インタビューが取れたものの、今年1月の来日公演が5月頃に延期されてしまいました。でも今の時期、彼女はNMEをはじめ各国の賞にノミネートされているので、やはり掲載しておきます。ホールジーはアメリカのニュージャージー州出身の21歳のシンガー・ソングライター。自身の体験や現代の若者の心の闇を歌にするなど、リアリティに溢れた赤裸々な歌が注目されています。その一方で、日本のファッションやサブカルチャーも大好きで、日本のデザイナーの服を好み、セーラームーンや初音ミクのフィギュアなどもコレクションしています。歌はもとより、発言もヴィジュアルイメージも個性的で、久しぶりにポップ・アイコンとなる女性アーティストの登場です。

「Ghost」のTokyoヴァージョン。ホールジーは初音ミクを想起させるウィッグで登場。


■ 音楽というアートを通して、さまざまなものを表現したい。

―高校を卒業してからファインアートの勉強をする予定だったのに、音楽の道に進むことにしましたよね? 音楽の方が自分を表現しやすいと思ったのでしょうか?

ホールジー(以下、H):「そうね。アートってあまり動きがないと思ったの。私には人々に向けて表現したいことが沢山あるんだけど、その中で大切なのは自分自身を表現することができるということ。ただのアートでは、それをたった一つのイメージで表現しなければならない。でも音楽というアートだと、ステージ、照明、ミュージックヴィデオ、曲、アートワーク......本当に沢山のものを使ってそれを表現することができる。でも音楽に限らず、私は様々なアートの形に興味があるの。将来もしかしたら陶芸家になる日がくる可能性もあるわ(笑)」

―赤裸々に自分自身を歌っていくオープンな姿勢はご両親からの影響ですか? それとも大好きだと公言している、アラニス・モリセット、リズ・フェア、カート・コバーンなどの音楽との出合いから変わっていったのでしょうか?
 
H:「その全てから少しずつ影響されているんだと思う。両親は私が子供の頃から自分自身であることを教えてくれた。だから昔から髪色もユニークだったし、ピアスもタトゥーもあった。いつも人と違うことをしていたわ。何かを習得することに興味をもったり、面白い場所に行ったり......、親がいつも背中を押してくれたのよね。両親が20歳の時に私が生まれたから、自分たちができなかったいろんな経験を私にさせたかったんだと思う。それと同時に、人の意見を気にせずに自分自身の考えやスタイルを持っているミュージシャンたちにも影響されているわ」

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父親はアフリカ系アメリカ人、母親は白人のアメリカ人なので"バイレイシャル"だと話す。ブルーの髪が何より特徴。


■ 両親が20歳の時に生まれた。その父母のDNAの影響が大きい。

―お母さんからもらったDNAで、一番感謝しているのはどんな点ですか?

H:「私たちってまるで同一人物みたいなのよね。お揃いのタトゥーがあるし、一緒に髪を染めたり、買い物に行ったり、ママはロックンロールが大好きでドライブしながら音楽を聴いたりしていた。感謝しているDNAは、自分に対して悪びれず、おずおずしていないところ。自分の行動に自信があるの。私の友達のママたちは、クッキーを焼いたりするような典型的な普通のママが多かった。でも私のママは騒がしくて、面白くて、ちょっとふざけたり、"それやっていいの?"っていうことをやったり(笑)ママのそういうところが好き。10代の時、私には友達と思える存在があまりいなかった。でも、ママがいつも友達だったわ。すごくスペシャルな存在なの」

―お父さんのDNAでは?

H:「パパもクールな人で、ラップを聴いたり、服のセンスもいいのよ。パパは面白いし、カラオケが得意だし、バーで一番の人気者だった。私が子供の頃のパパはウィル・スミスみたいだったわ(笑)。声が大きくて面白くて、クールな服を着て。ママとパパって最高のカップルなの。私のパパはビジネスマンで、賢くて、人との接し方を心得ている。だから皆から好かれるの。そこが受け継いで良かったなと思う部分ね。相手をリラックスさせるのが得意なの」

「Ghost (Room 93 Version)」EP『Room 93』発表時のMV。


■ 17歳の時の恋愛が、表現したいという思いに繋がった。

―自分がアーティストとして覚醒したような、衝撃となった出会いはありますか?
 
H:「17歳の時に付き合い始めた男の子が好きでたまらなかった。ブロンドのロングヘアで映画スターみたいだったし、ギターも弾くし、当時の私はメロメロだったの。でも彼がドラッグをやっていることがわかって、それは10代の私にとっては重すぎる事実だった。彼が良くなるために側にいるべきか、自分は何をしたらいいのかを決断するのは本当に大変だった。そこで変に成長してしまったのよね。彼と過ごしたNYでの経験は、今の自分に大きく影響していると思う。『Hurricane』は彼についての曲だし、彼のことを書いた曲は他にもあるわ」

「Hurricane」 その前の「Ghost」とリンクしている部分がある。

―自分の声やマインドに合うサウンド、楽曲作りは簡単でしたか? 曲には"GHOST"を共作したディラン・スコットや、Lidoなど多彩なスタッフが関わっていますが、どのようにして曲やサウンドの方向性を組み立てていったのでしょうか?

H:「曲の方向性は歌詞で決まることが多い。歌詞を書くというのは、私にとっては絵を描き始めるようなもので、白い紙の上に木や人々を形取るのが歌詞で、楽器を加えるのはそれに色を塗るような感じね。まず歌詞を書いて、それに対するリアクションのようにサウンドを作っていく。歌詞がダークだったら、サウンドもダークになるわ。同時に、私はその時に聴いている音楽からも影響されるの。ザ・ウィークエンドやドレイクも聴くし、ラナ・デル・レイやアラニス・モリセット、テイキング・バック・サンデーみたいなロックンロールも聴く。影響は様々で、そこから好きなものを選んで自分の曲の中に取り入れる。私の作品にダンスできるような曲はないと思う。どちらかといえば、ドライブしながら車で聴きたくなるような曲が多いわね」

続きは後半で。

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デビュー・アルバム『BADLANDS』の日本盤の解説原稿は私が書いています。
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*To be continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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