Music Sketch

注目の新世代ポップ・アイコン、ホールジーにインタビュー(後半)

Music Sketch

前回に続き、ニュー・ジャージー出身の新星ホールジーのインタビューを掲載します。彼女はブルーの髪がトレードマークですが、昨年9月に発表した「New Americana」のミュージックヴィデオではバッサリ切り、ショートヘアになって驚かされました。音楽的にはエレクトロサウンドも導入したポップ・ロックサウンドで、聴きやすいと思います。The 1975のヴォーカル、マシューとは古くからの音楽仲間だそうで、そう思うとエレクトロと生楽器のバランスの取り方には近い部分があるかもしれません。

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ロック好きの母親とヒップホップ好きの父親の影響で、様々な音楽を聴くという。


■ バイセクシャル、バイポーラー(双極性障害)であることを公言。

―歌詞は普段から日記のようにメモしているのですか? それとも曲のコード感やサウンドに導かれるようにして言葉が出てくるのでしょうか?

ホールジー(以下、H):「アイディアを書き留めることもあるし、フレーズや言葉を思いついた時はノートや携帯にメモするの。曲名になった"Castle"という言葉も、その時に良い言葉だなと思ってメモしたし、"New Americana"も、そのフレーズが気に入ってメモした。それをスタジオで見直す。そうやって以前自分に起こったことを振り返って、それについて自分が何を感じたかを思い出しながら曲を書くのよ」

―アラニス・モリセットは双子座生まれで、しかも実際に双子として生まれ、早くから自分の二面性にこだわり、自意識と無意識、憎悪と愛情といった両極を行き来しながら、曲を作ることで自分の中のバランスを取ってきたと取材した時に話していました。天秤座生まれ(1994年9月29日生まれ)のあなたは、バイレイシャル、バイセクシャル、バイポーラー(双極性障害)であると公言していますが、曲を書くことで自分のどのようなバランスが取れていると思いますか?

H:「私の音楽にはいろいろなものが詰まっているから、バランスがすごく重要。私自身にとっても、バランスはすごく大切。音楽を作ることで、自分の周りで起こっていることがどのようにして成り立っているのかを頭の中で整理できているんだと思う。それに対する自分の考えを見直すことができたり、気持ちがラクになったりするし。それに、私は音楽にダークなものを落とし込むことが多いんだけど、そうすることで気持ちが少し軽くなるのよね。嫌なことがあった日は、それをステージで振り落としたりもする。ステージ上で怒ったり、自信たっぷりになったり、すごくパワフルになれるの。エクササイズみたいな感じ(笑)。ステージから降りると、"ふぅっ、スッキリした!"って気分になる。だから、音楽って私には大切なのよね。セラピーみたいなものなの」

「Hold Me Down」 (Vevo LIFT Live): Brought To You By McDonald'sより。髪を切ってからP!NKを彷彿させる風貌に。


■ 病気のせいで、感情を持つとはどういうことなのか、ずっと考えてきた。

―バイポーラーであるために「人よりも感情移入しやすい」と話しているインタビュー記事を読みました。このことが、曲作りにおいて効果的になっていると思いますか?

H:「そうね。でも、たまにそれが裏目に出ちゃうこともある。私はファンに感情移入しすぎちゃうことがあるのよね。彼らが何を思うか、何かを感じるかを気にしすぎてしまうことがあるの。逆にいろいろと言いすぎてしまうこともあったり(笑)。でも良いこともあるわ。曲が悲しすぎたり、緊迫感が出てきたりすると、私だけじゃなくて人間誰もが悲しみを経験しているし、心の痛みを経験しているんだということに気づかされる。だからこそ、みんなも私の曲を理解してくれるんじゃないかしら」

―ドラッグやセックス、DV的なことも扱っているあなたの歌は今の若者のリアルそのものと言われ、影響力も強いと思います。実際にファンがとても増えている現在、これらの曲をどう受け止めてほしいと思っていますか? 

H:「メッセージやトピックはさまざま。元になっているのは私自身の経験よ。家族と私の繋がりだったり、仕事で出会う人たちと私の繋がりだったり、自分と国との繋がりだったり......。例えば『Castle』は、私と音楽業界の関係を書いた曲だし、私と男性、私と女性との関係についての曲もある。自分自身の周りの出来事を素直に書こうとしているの。リスナーには、それを聴くことで、自分が一人ではないんだということを感じて欲しい。私は現実について書きたいし、みんなが聴きたいと思うものを書きたいの。彼らの人生が間違っているわけじゃないし、いろいろな感情を持っていいんだということを書いて、みんなにそれを感じて欲しいわ」

―特に感情にこだわっているという?

H:「そうね。私自身バイポーラーだから、昔は大変だった。まるで感情を持つことを禁止されているような感じだった。パイポーラーのせいで、悲しんでいるだけで、『それは病気だから薬を飲め』って言われたりね。ただ悲しんでいるだけなのにって思っていた。"感情を持つとはどういうことなのか"、"バイポーラーという病を持つことはどういうことなのか"をずっと考えていたわ。だから音楽を書く時は、"感情を持っていいんだ"ということをみんなに伝えたい。悲しんだり、怒ったり、自信を持ったり、幸せを感じたり......、何でもいいのよ。私の曲には、私が感じて経験した全てが詰まっているの」

『BADLANDS』(Trailer) アルバムを紹介したトレイラー


■ 新世代のカルチャーを表現した歌が「New Americana」

―「New Americana」はライヴ会場で大合唱になっていますが、この曲を作っている時に、リスナーに向けて意識したことはありますか?

H:「この曲はビッグ・ソングよね。書いていた時は、アメリカや一つの国のことを考えていたわけではなくて、自分の世代のことを考えていたわ。私たちが受けてきたさまざまな影響についてよ。TVやインターネット、例えばカーダシアン家のリアリティ番組なんかもそう。"ニュー・アメリカーナ"という言葉は、私たちのカルチャーを表現した言葉なの。"アメリカーナ"というのは、アメリカの文化を表現した言葉で、ベースボール・カード、アップルパイ、テレビ番組、そういったアメリカ文化の代表の全てが"アメリカーナ"。一方"ニュー・アメリカーナ"というのは、そういったアメリカの文化がもっとギラギラして、派手になって、カラフルになって......ある意味毒々しくなったものというか、全てが同じで偽物っぽいのよね。アメリカにいると、それをすごく感じるの。日本のみんなにもわかってもらえるといいな」

「New Americana」ホールジーの代表曲になったヒット曲

―"ブルー"という色と"17"という数字にこだわっている理由も教えて下さい。

H:「17は私のラッキーナンバー。いろんな場所で目にするのよね。例えば、スーパーに行った時、支払いの合計が17ドル17セントだったり、道に迷っている時にふと見たら、目の前の家のドアに17って書いてあったり。ブルーは私のお気に入りの色で、バランスが取れた色なの。水みたいに落ち着いたカラーでもあり、刺激的な色でもある。ダークでもあり明るくもあり、いろいろなものになれる色だと思うし、そこがスペシャルよね。ブルーを見ているとクリエイティヴになれるし、私自身がブルー・パーソンって感じがする。悲しいという意味のブルーじゃなくて、いろいろなものになれるという部分が私の性格と似ていると思うから」

―最後にアルバムタイトルを『BADLANDS』にした理由を教えて下さい。

H:「言葉の通り、"悪い場所"という意味で、有害な場所だったり、不毛地帯を表す。荒廃した、空っぽの、とにかく酷い場所。アルバムを書いていた時に、頭の中にそのイメージがあった。アルバムには私自身が映し出されているから、私の脳の中を説明するものをタイトルにしたかったのよね。皆が行くべきではない場所。私自身、このアルバムを書いたことで、脳から"バッドランズ"を外に出すことができた。"バッドランズ"をアルバムの中に落とし込んだから、今は少し気持ちが軽いのよ」

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デビューアルバム『BADLANDS』は全米チャート第2位、全英チャート第9位まで上昇した。
購入はこちら≫

*To be continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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