Music Sketch

ジェイムス・ベイはオススメ!

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トレードマークの帽子のせいもあってか、"ジョニー・デップに似ている"と話題のジェイムス・ベイ。もちろん彼が書く曲もパフォーマンスもオススメです。FIGARO本誌2014年3月号の《2014年の流行予測。》特集でいち早く彼のことを取り上げたので、チェックしてくれた方もいるかもしれません。

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ジェイムス・ベイ、25歳。東イングランドのハートフォードシャー出身。絵を描く才能にも長けているそう。

ギターを始めたきっかけは、11歳の時に父親から聴かせてもらったデレク&ザ・ドミノス(エリック・クラプトンが在籍していたアメリカのバンド)の名曲「いとしのレイラ(原題:Layla)」(1971年)。イントロから引き込まれた彼は独学でギターの腕を磨き始め、自然と曲を作るようになったそう。16歳の頃には兄や友人たちとバンドを始めてギター担当になりますが、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、ジョン・メイヤーといったシンガー・ソングライターの曲を聴くようになるとストーリーテラーとしての歌に惹かれ、"自分自身の歌を歌いたい"とソロ活動を始めます。

18歳になると音楽の勉強のためにブライトンにある音楽学校へ通い、ストリートでも積極的に歌を聞かせるように。人を惹き付ける曲やパフォーマンスの技を磨いているうちに、注目を集めるようになります。そしてロンドンのパブで歌っていた時の映像がアップされたことをきっかけにアメリカのレコード会社と契約。その後はホージアやローリング・ストーンズ、テイラー・スウィフトのライヴのオープニングアクトとして大舞台に立つ機会も増え、ついには第58回グラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされました。そして、3月には待望の初来日公演も決定しています。最新インタビューが取れたので、それを紹介しますね。

「Hold Back The River」ブレイクするきっかけになった曲。

―グラミー賞最優秀新人賞ノミネート、おめでとうございます! イギリス人のあなたがアメリカで権威のある賞に数多くの新人の中から選ばれたことをどう思いますか? 

ジェイムス・ベイ(以下、J):「イギリス人でノミネートされたのは、大きいよね。いい結果が出れば嬉しいけれど、それだけ幅広い人たちに認められていること自体、ありがたい。アメリカとUKの音楽は結びつきが強いから、それがずっと続いて行くといいな、とも思う。グラミーは伝統ある賞だし、僕も子供の頃から知っていて、一大事なのもわかっている。光栄な気持ちでいっぱいだよ。デビュー作が評価されたのも嬉しい。ただ、素晴らしいことである一方で、大きな賞を獲るために音楽を作っているわけではない、という思いもあるんだ」

―プロデューサーのジャグワイア・キング(ウィリー・ネルソンやトム・ウェイツからノラ・ジョーンズ、ミュートマスなどを手掛ける)とは早い段階から、しかもアメリカの音楽の原点ともいえるナッシュビルで制作に関わってもらいましたが、一緒に作業して一番プラスになったのはどの点ですか?

J:「彼ほどのキャリアがあるプロデューサーやエンジニアとスタジオで一緒に仕事をしたのは初めてだった。どこで思い切って行くべきか、何が正しいかわかっている人と作業している安心感があったね。無名の時点でそういう人と組めたのは大きなチャンスだったし、曲作りだけでなくアルバムをまとめる作業も助けてもらった。経験値の高さが一番ありがたかったし、彼と仕事を組むことで可能性が広がった」

「Let It Go」別れの歌も含め、語りかけるようなラヴソングが人気。

―デビューアルバム『Chaos And The Calm』で一番苦心した点は何でしょう? 

J:「音楽作りに、正解も間違いもない。だからレコーディングをしてアルバムをまとめる作業が大変だった。僕の曲はフリーフォーム(自由な形)で、ほとんど書いたまま、メロディも歌詞もアレンジも変えなかった。それはしたくなかったんだ。自分ですごくいい曲だと思っている曲に、スタジオで色をつけて形にした感じ。結果的にデビュー作らしくなったところを気に入っている。初めてやった、曲をたくさん作った人が録音した感じが出ていて、いいと思う。曲に磨きをかける作業はやったよ。音楽的にインパクトがあって、一番よく響くように心掛けたんだ。でも、第一印象は大事にした。それがうまく出ていると思うし、そこが一番難しかった」

―大変だった曲は?

J:「『Scars』を書くのは大変で時間がかかったね。感情と歌詞をしっかり伝えようとして生々しくて気持ちが沈んでしまったり、個人的になり過ぎたかな、と思ったり。メロディ作りも時間がかかった。僕は、無理強いして仕上げられないタイプなんだ。終わらせようと頑張ったり、そのために部屋に閉じこもったりすると、ソングライティングの目的を見失ってしまう。衝動的にできるものだと思っているから、詰まったらとりあえず、寝かしてみる。曲は、自分の伝えたいことをヴァースに落とし込んで、それをレコーディングしてでき上がるものだけれど、『Scars』に関しては、何年もそれをしなかった、というかできなかったんだ。あの曲は、ある人が去って行く内容で、僕に実際に起きた話。僕がアメリカにいる期間が長くて、別れてからふたりでいた場所に彼女が1年くらいしてから戻って来て、うまく行くようにお互い努力している間に、以前の感情が蘇って、すんなり仕上げられた。コーラスもできて、2年間かかったよ」

「Scar」帽子と合わせて、1966年製という赤のエピフォン・センチュリーというギターもトレードマーク。

―歌詞には、逆に普段口に出して言えないようなことを書いているの? それとも、日常会話の延長みたいな歌詞が多い?

J:「どちらの場合もあるよね。現実で向き合うことが難しい話を曲にする時もある。そういうソングライティングはしんどいけど、そこに魔法や音楽が宿ったりする。ふだん言えないことを曲で告白して、伝えたい気持ちをすっきりさせることもある」

―『Chaos And The Calm』は、"混沌"と"静寂"という言葉そのままの、これまでの人生や激動のロンドンでの生活での精神状態を表したアルバムだそうですね。今もし新たな楽曲を書き始めているとしたら、どういった内容になりそう?

J:「アルバムの感じは変わるだろうね。最初のアルバムを作ってからバンドと一緒に演奏することが増えた。音楽にいつも囲まれているとアイディアがいっぱい出て来て、前だったらひとりで作り始めるところ、他の2人くらいのミュージシャンと初めから作り出す環境にいる。バンドと音楽作りをするのはもっと繊細な作業で、エンジニアも入って来るし。アルバムを仕上げてリリースすると、今度はバンドと一緒にたくさんの人の前で演奏すると、また違う風に響く。感情も毎回違うし、それが本当に楽しい。今のバンドと一緒にやっている、パンチの強い感じが次のアルバムには絶対反映されるだろうね。静かな環境で囁くように作るのも、将来的にまたやるだろうけれど、今はバンドで作る音が楽しい。どう出るかわからない点も含めて、楽しみにしている」

昨年のグラストンベリーでのライヴ映像。ジャック・ホワイトを想起させるようなブルージーなロックスタイルも魅力。

―BRITS AWARD やBBC Sound of 2015でも2位になり、注目が高まるばかりですが、自分の音楽で絶対にこれは変えたくない点があるとしたら何ですか?

J:「露出が増えるのはいいことで、もしマイナス面があるとしてもプラスの方が大きいでしょ。どう見られるかは他の人と同じように気にするけれど、それで悩んだりはしない。ただ、自分らしくしていること、そういう音楽を作ることは変わらないだろうね」

―ホージアやザ・ローリング・ストーンズなど様々なタイプのアーティストのオープニングを務めてきましたが、最も勉強になったのは誰のライヴですか?

J:「ストーンズだよね。彼らと同じ世代の父が好きだったから、生まれてからずっと聴いていたようなものだし。父はロンドンにいて、デビュー時から彼らを見ていて、僕ら兄弟にストーンズについてたくさん語ってくれた。僕自身、彼らの音楽の作り方、詞の書き方、自分を出す態度まですべて影響を受けている。ここ50年の音楽史で、彼らは一番クールな存在だ。だから、ハイド・パークのフェスでほかにもたくさんいたとはいえ、彼らのオープニングを務めたのは嬉しかったよ」

「If You Ever Want To Be In Love」ストリートで歌い、人々の心をつかもうと心掛けてきたせいか、つい一緒に歌いたくなるフレーズが多い。

―エド・シーランとの共演も動画サイトで見ましたが、とても印象的でした。彼とはプライベートでも交流があるのでしょうか?

J:「同業者はみんな忙しいから、一緒に時間を過ごして、語り合って、お互いを知ることはなかなか難しいけれど、僕とエドは何度かそれができたし、友だちだと思いたいね。とてもいい奴で、僕のUKツアーがソールドアウトになったから、どこかで飛び入りしてくれないか、と頼んだら、気持ちよく引き受けてくれた。スケジュールを合わせても2回実現しなくて、僕としてはそれだけ努力をしてくれたことで十分だったけれど、"いや、絶対やるから"って言ってくれて、ケンブリッジのショウで叶って、『Let It Go』をデュエットした。彼は2年前まで僕のポジションにいたから、僕がどう感じているか聞いてきた。僕らがよく比較されることも含めて、プライベートなことまで話し合ったよ」

―スイスの番組のインタビューで、好きな映画に『ゴーストバスターズ』と『フック』を挙げていたのが意外でした。普段のあなたもユーモア好きな明るい性格なの?

J:「自分は堅物ではない、ユーモアのあるタイプだと思う。自分の感情を掘り起こしながら、パーソナルな音楽を作るのに時間を多く費やしているけれど、毎日一緒に過ごす人には楽しい仲間でありたい。『ゴーストバスターズ』は3歳からずっと好きだよ(笑)」

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日本へ来るのがとにかく楽しみだそう。この写真はおそらくニューヨークのチャイナタウンでは?

―最後に、3月のコンサートに向けて注目してほしい点や、ファンにメッセージがあれば教えて下さい。

J:「日本のみなさん、まだ行ったことがない国で、演奏できるのをとても楽しみにしています。ツーリストとして行くだけでも楽しみなのに、歴史のある素晴らしい国でステージに立てるのは光栄です。みなさんに会えるのを楽しみしていますね」

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来週日本時間の16日(火)に発表されるグラミー賞で、ジェイムス・ベイはパフォーマンスすることが決定されています。パフォーマンスすると受賞するケースが多いのですが、今回は同じく最優秀新人賞にノミネートされているトリー・ケリーとのデュエット。果たしてどうなるでしょう?是非とも受賞して気持ち良く初来日してほしいですね。

ジェイムス・ベイ ジャパンツアー2016
<大阪公演>
日時:2016年3月2日(水) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:梅田CLUB QUATTRO
●問い合わせ先
梅田クラブクアトロ
Tel. 06-6311-8111
<東京公演>
日時:2016年3月3日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:EX THEATER ROPPONGI
●問い合わせ先
クリエイティブマン
Tel. 03-3499-6669
http://www.creativeman.co.jp/artist/2016/03jamesbay/

*To be continued.

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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