Music Sketch

The xx 『アイ・シー・ユー』に関するインタビュー後記

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The xxは心から愛して止まない音楽のひとつで、幸運なことに、彼らのデビュー作からジェイミー・エックス・エックスのソロ作を含め、毎作を『フィガロジャポン』本誌で取材している。今発売中の『フィガロジャポン』3月号にも、最新アルバム『アイ・シー・ユー』についてのインタビューを掲載しているが、そこに書き切れなかったことを後記として記しておきたい。

「Say Something Loving (performed on The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)」曲の中で、3人が大好きなシャーデーの歌詞を引用している。

■衝撃的なデビューを飾った時、まだ平均年齢20歳だった

2009年にデビューした時点で、余分な音を一切削ぎ落としたミニマルなサウンド使いに、深夜に漂流するような光沢のあるメランコリックなサウンドを確立させていた彼ら。YouTubeで遭遇した時、まるでそこに自分の居場所を見つけたような気がして、輸入盤の発売を待ち焦がれるようにしてCDを買いに行った。平均年齢20歳だった彼らだが、このデビュー・アルバム『エックス・エックス』(2009年)はイギリスで最高峰となる音楽賞マーキュリープライズを受賞、アメリカでもゴールド・ディスクを記録するほど大ヒットとなった。アメリカでの人気の高さは、新人として、またインディーズのポスト・ポップ系では異例のことだった。

「Crystalised」

バンドは“保育園に通っていた頃からの幼馴染み”というオリヴァーとロミーが16歳の時に結成。一時期4人組だったが、現在はジェイミーを含めた3人組だ。映画などの好みはバラバラだが、「悲しみで沈んだ時の“気分”が感覚的に近いため、音楽を創造しやすい」(ロミー)という。まさに個々の家で曲や歌詞を作りながら形にしていったベッドルーム・ミュージックで、その話を聞いた時に、居場所を見つけたと感じた自分の気持ちにも納得した。

セカンドアルバム『コエグジスト』(2012年)は、自分たちの家からほど近いアトリエ的なアパートの1室を借りて、6ヶ月間集合して作ったという。
「バンドとして楽しんで、何も制限なしにやりたいことをとことんやろう」(オリヴァー)
「ジェイミーはやはりビートに関しては想像力が豊かで、しかも実践に向けていく時のテクニックも持っているので、“こういうビートが面白い”と話していると、それ以上のものを実現してくれる。本当に素晴らしいし、今回は歌詞をちょっと気にしてくれるようになったから驚いたわ」(ロミー)

「Angels」(音源のみ)

■ジェイミーのソロアルバムが、最新アルバムへの起爆剤に

インタビューではオリヴァーが一番お喋りで、次はロミー。なので、ジェイミーが一番無口だとずっと思っていたら、彼のソロアルバム『イン・カラー』(2015年)のタイミングで取材したところ、とても饒舌なので驚いた。しかも、彼自ら「3人の中で一番楽観的なんだよね(笑)」と明かしてくれた事実にもビックリした。アルバムのコンセプトについては、以下のように話していた。
「The xxが衣装を含め、黒いイメージに囚われがちなので、音楽的にもイメージ的にもカラフルにしたくて『イン・カラー』とアルバムタイトルを名付けたんだ。僕自身、ダンス・ミュージックもカラフルな音使いも大好きだからね。だからブックレットにあるように、アルバムのどの曲もそれぞれ色が決まっているし、ライヴでのライティングもそこに合わせて担当に任せているんだ。」(ジェイミー)

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ジェイミー・エックス・エックス(DJ,Per,Key)は、今やドレイクやアリシア・キーズからプロデュースを依頼されるほどの人気。

綺麗な音や美しいメロディを好むジェイミーが、DJをしながら大好きなダンス・ミュージックを鳴らし、大観衆を踊らせる。そんなステージを見ていて、オリヴァーやロミーが刺激されないはずがない。それについては本誌のインタビュー記事に書いたけれど、さらなる驚きは、前作で部屋をスタジオ代わりに使いながらも、歌詞のやり取りはメールでやっていたオリヴァーとロミーの2人が、最新アルバム『アイ・シー・ユー』(2017年)の制作時には一緒に歌詞を書くようになったことだ。

「これまでは歌詞を書く時にロミーと一緒にいると、お互い気恥ずかしかった。でも今回はお互いを曝け出して、歌う部分も含めてコラボしている。自分が書いた歌詞の部分だけ歌う、といったこともなしにね。あとジェイミーとも分業ではなく、一緒に曲作りを楽しんだ。部屋でスクラッチしながら曲を作ったり、ジェイミーから送られてきて音源に最初から歌詞が乗っていたり。今まで歌詞を書こうという気がなかったのかなと思ったけど、その歌詞がとてもいいんだよね」(オリヴァー)

「On Hold (performed on Saturday Night Live)」

■3人のハッピーな状態が楽曲にも反映

ステージでは大柄な身体を十分に生かした動きで、ダイナミックなパフォーマンスをするオリヴァーだが、インタビューでは世話焼きオバさんのように饒舌だ。終始彼が率先して答え、オリヴァーに促されるようにしてジェイミーがボソボソ喋る。ジェイミーが書いた歌詞に関しても、ジェイミーが「ノー!(書いてないよ)」と耳を赤くして照れてしまい、代わりにオリヴァーが答えてくれた。
「『リップス』のようにジェイミーの声で既にサンプリングしてあった曲もあるし、歌詞のストーリーをアドバイスしたり、言葉を投げかけてきたりとかして、そこからロミーがナレーション的に歌詞を組み立てていく作業もあった。だからジェイミーがきっかけに歌詞ができていることもある。彼がやったんだよ(笑)」(オリヴァー)

また、『アイ・シー・ユー』でのオープンで躍動的でカラフルなサウンドに(多才なジェイミーは、アルバムでヴァイオリン「パフォーマンス」やピアノ「レプリカ」も演奏)、これまでになくポジティヴな部分が顕れているのは、3人が最高にハッピーな状態にいることもあるようだ。
「ブレイヴ・フォー・ユー」の歌詞に関して、「悲しいからって悲しい思いをすることはない。曲を聴いて悲しさを確認して、共感して、そこで泣くことで終わらなくてもいいんじゃないかな。確認したら、そこから先に進めることもあるから」(オリヴァー)と話すように、作品にもポジティヴに物事を捉えるようになってきた変化が表れている。

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オリヴァー・ジム(Ba,Vo)。撮影中も場を和ます陽気なキャラで、ジョークも多い。

「ヴァイレント・ノイズ」は、もともとジェイミーのソロ作『イン・カラー』用にオリヴァーが作った曲だったそう。一方でジェイミーには完成できないでいた曲があって、それをオリヴァーに手伝ってもらって2つの曲を組み合わせて完成させた。歌詞は最初からあったものを残し、そこにロミーとオリヴァーでギターとベースとヴォーカル部分を作っていった。

ちょうどこの曲についてインタビューしていた部屋の外でうるさい音がしたので、私が彼らの曲名である「Violence Noise!!!」とジョークを言ったら、オリヴァーは「I like that!!!」と応じてくれるほどご機嫌だったインタビュー。取材はハウススタジオで行われ、彼らはスムージーをスタッフに注文するなどして(でも、グリーンのみのスムージーは飲めなかった様子)、仕事とはいえリラックスした時間を過ごしていた。

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ロミー・マドリー・クロフト(Gt.Vo)。カメラに凝っているそうで、来日中も常に持ち歩いていた。

■インスピレーションをくれたアイデアを編集していく

新しい音楽を創ることへのモチベーションについて訊いた。
「このアルバムを作るのは簡単じゃなかったけど、でも楽しかった。良い時と悪い時が何度もあったよ。このアルバム作りの過程で僕らが自覚していたのは、“どういうアルバムを作りたいのか”は自分たちでもわかっていなかったけど、“違う作り方をしたい”ということだけはわかっていて、“もっとオープンな感じにしたいな”と。ただ、“The xxらしい音を出すには何をする必要があるか”とか、そういうことは今までみたいに重視しなかった。たぶん、そこに労力を注ぐ必要はない、ということに僕らは気づいたんだろう。僕ららしい音を出させるものは、このバンドのDNAに刻み込まれているからね。だから手応えのある制作体験だったよ」(オリヴァー)
「僕は、“何か変わった音を作りたい”と思って頑張っても、実際にはそうはならないように思う。このアルバムに入っているものは、少なくともとっかかりになったアイデアに関してはすべて自然と出てきたものだよ。で、その最初の発想、自分たちにインスピレーションをくれたアイデアを編集して最高のヴァージョンに仕上げることに、たくさんの時間を費やしたんだ」(ジェイミー)

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ライヴの写真はすべて2016年12月6日@豊洲PITのもの。Photo by Kazumichi Kokei

デビュー当時から、アートワークもパッケージも、ライヴ中の映像や照明なども、すべて自分たちのこだわりを強く打ち出しているThe xx。ポップ感の増したこのアルバムの次には、どんな音楽を発表してくれるのだろうか。

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全英チャート初登場1位、全米チャート初登場2位を記録した、最新アルバム『アイ・シー・ユー』
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*To be Continued

伊藤なつみ Natsumi Itoh
音楽ジャーナリスト/編集者

『フィガロジャポン』をはじめ、『pen』『装苑』ほかモード誌などで、取材、対談、原稿執筆、編集を担当。ほかにCD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュース等も。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
Twitter:@natsumiitoh
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