「Rising Asian Talents」を受賞!
「CHIHIRO TANAKA」のデザイナー、田中千尋さん。

春の花々に包まれるこの季節、満開の桜を目にしながら、デザイナー、田中千尋さんのデザインを思い浮かべていました。その名も「Sakulight™(サクライト)」。その新作で、ランプシェードに木を使用したスタンドタイプは、銀座三越の「JAPAN SENSES(ジャパン センスィズ)」にも選出され、ちょうどいま、4月12日(火)まで行われている展示でも目にすることができます。

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銀座三越 7階 ジャパンエディションにて現在、新作3点を含む6点が展示、販売されています。写真右側が「Sakulight™」のスタンドタイプとペンダントタイプ。ペンダントは電球交換が可能な最小のサイズに仕上げられたミニサイズタイプ。左上は「Onduler™(オンデュレ)」左下は「Konpeito™(コンペイトウ)」。Photo: ROHICHI KANATA, Courtesy of TA-TILE(写真すべて)

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ジャパン センスィズに選出されたスタンド「Sakulight™ WW(ダブル ダブル)」。

ファッションデザインの世界でテキスタイルデザインやファッションデザインの企画開発に携わっていた田中さん。「未知の世界に飛び込んでみたい」と、ブランド「CHIHIRO TANAKA®」をスタートさせたのは2005年のこと。ロンドンのデザイン展に参加すると同時に、注目を集めました。

一点一点丁寧に仕上げられるオートクチュールの服のように、吟味した素材を手にとりながら、オリジナルの照明器具をつくり上げています。本人が口にする「Light Couture™(ライトクチュール)」ということばがまさにふさわしいデザインの数々。

服の立体裁断のような造形も特色です。針や糸を手にしながらマテリアルを研究し、ハンドワークを活かした照明の探究に励んでいます。そうしたファブリックの表情を楽しめるひとつが、「Spore™(スポア)」。空中に漂う「胞子」を表わした造形で、宙にふわりと浮遊し続けるように明かりが灯り......。

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「Spore™ New」。2005年にロンドンでの発表と同時に話題を集めたCHIHIRO TANAKA®を代表する「Spore™」の光と素材の関係を見直し、グレアを大幅にカット。より小さい光源としてLED電球が採用されています。

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ジャパンエディションでも展示・販売中の「Konpeito™」。こちらの写真はペンダントタイプ。ゴールド、シルバーのほかに、和紙のホワイト、色鮮やかな折り紙のカラフルの計4色展開。

冒頭の「Sakulight™」について説明を添えておくと、ペンダントタイプのランプシェードは衣服のようにとりはずして手洗いすることができます。スタンドタイプで曲げた木を留めるのは、糸。上の写真の「Konpeito™」でも700枚ものパネルを留めるのは糸です。ライトクチュールの力が大いに発揮されています。

「CHIHIRO TANAKA®」の最新ラインナップも紹介しておきましょう。次の写真は順に、「Gerbelight™(ガーベライト)」「Astrococo™(アストロココ)」「SuzunaLuce™ SZ(スズナルーチェ スズナリタイプ)。小さな部品でもオリジナルの開発をしているブランドのこだわりが、全体ににじみでています。

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フリルテープを手でカップに縫い留めて制作されている「Gerbelihgt™」。

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ドーム型のシェードにハンドステッチで星々を表現。空に描かれた点描画を見るような「Astrococo™」。

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鈴なりに実る野菜や果物から着想を得た「SuzunaLuce™ SZ」。熟練の職人さんのヘラ絞り技術が活かされています。真鍮素材、ピュアホワイト、ライトピンク、それぞれの趣が楽しい。

3月にはシンガポールで開催された見本市、「メゾン・エ・オブジェ・アジア2016」に参加していた田中さん。マリーナベイサンズ エキスポ&コンベンションセンターでの展示ブースを、私も拝見しました。

同展の企画で「アジアの最も優れた若手デザイナー」を紹介する「Rising Asian Talents(ライジング・アジアン・タレント)」のひとりとして、日本を代表するデザイナーとしての招待展示です。ライジング・アジアン・タレントにおける日本人デザイナー初の受賞者となりました!

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「ライジング・アジアン・タレント」での展示風景。

シンガポール、オーストラリア、フィリピン、台湾、タイから選抜された実力派デザイナーのなか、ひときわ目立っていた田中さんの展示。初めて目にできるデザインも含まれていて、私も再び驚かされました。

「メゾン・エ・オブジェ・アジアにあわせて制作した最新作で、レザーの質感や色を大切に表現した、あじさいのブーケです」と田中さん。花びらごとに施されたビーズの繊細さとあえてラフな束ね方。落ち着いた色のあじさいを通して放たれるのは、実にやさしい光です。

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手前があじさいのブーケ「Ajisign(アジサイン)」。

展示を訪れた各国の目ききの皆さんにも、田中さんのデザインのクオリティはしっかり伝わっていました。「ファブリックのランプシェードはもちろん、金属を素材とするデザインも繊細で本当に詩的。これは見たことのないデザイン!」。私の隣に立っていたジャーナリストが興奮気味に語ってくれました。

「4日間の展示を通して各国のコントラクト関係者、バイヤー、プレスからの問い合わせも多数いただくことができました」と田中さん。

「ライトクチュールというコンセプトを掲げたブランドは11年目を迎えました。テキスタイルデザイン、立体裁断、手仕事といったオートクチュールの要素を活かした繊細な造形と、その形に呼応するやわらかな光。CHIHIRO TANAKAが生み出す照明器具は、世界的にみても希有なものだと思います。これからも日本の美意識を大切にしたものづくりで、美しく心ときめく時間と空間をお届けしたいと考えています」

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田中千尋さん。

「やはり漂う光はおもしろく、魅了されます。何より、ものづくりは本当に楽しい。素材を開発して、デザインして、 生産して、販売して。 考えて、悩んで、挑戦して。失敗して、学ぶ。そして笑う。この繰り返しが私の『光合成』のようです」

光が服をまとうかのような軽やかなランプシェードをかたちにし続けながら、今後は「さらに幅広くデザインを探究していきたい」とも。考えぬいたデザインをもとに、新しい素材や技術の採用など、常に進化を遂げているCHIHIRO TANAKA®のデザインの数々。その作品に共通するのは「ライトクチュール」の徹底した取り組みです。世界を舞台としての活動に、さらに注目を。

銀座三越 7階 ジャパンエディション
4月12日(火)まで展示・販売中、10:30〜20:00

「CHIHIRO TANAKA®」 http://www.chihirotanaka.jp 
●問い合わせ先(購入の問い合わせなども)
有限会社TA-TILE(ティーエイタイル)
Tel. 044-777-7189
info@chihirotanaka.jp

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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