本のように楽しめるポータブルライト、
「Lumiosf」に「mini Lumio+」誕生。

本のような姿の"表紙"を開いた瞬間、明かりが灯る。ポータブルライト「Lumiosf(ルミオエスエフ)」に出合ったときには驚かされました。誰がどのような考えでデザインしたのかも、とても気になりました。

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私の家で愛用中の「Lumiosf」と「mini Lumio+」の写真を。1枚目の写真では、手前の"2冊"がポータブルライトなのです! Photo: Noriko Kawakami

「Lumiosf」のデザインを手がけたのは1980年生まれの建築家、マックス・グナワン。インドネシア ジャカルタに生まれ育ち、大学からアメリカに暮らす彼。現在はサンフランシスコが拠点です。またこのライトについて特筆すべきは、デザインだけでなく、開発・製造もマックス自ら行っていること。

昨年、本人にお会いできた際に開発ストーリーを教えてもらい、これまで以上に「Lumiosf」のファンになってしまった私です。しかもこの2月から、「Lumiosf」に続く新製品「mini Lumio+」(ミニ・ルミオプラス)が日本でも発売に。今回はその双方をご紹介しましょう。

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Max Gunawan。大学では経済学を専攻していた彼。建築の講義を受けて「これこそ自分がやりたいこと!」と建築の道へ。Photo: Courtesy of Ark Trading

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第1弾の「Lumiosf」。 ウォルナットとメイプルの2種類があり、写真はウォルナット(税込31,968円)。開くと点灯、閉じると消灯。ボタンのオンオフなどを用いない実にシンプルな構造です。じゃばらの開き具合で明るさが調整できるという点でもすぐれたデザイン。Photo: Courtesy of Ark Trading

アメリカの大手アパレルメーカーの店鋪インテリアをデザインしていたマックス。仕事をしながら「人々のためのデザインをさらに追求したい」との想いを持ち続けていました。「30歳を過ぎて自分が本当にやりたいことは何か? と考えたとき、自分の手を動かして検討したものを、人々の心に響くものを、つくりたいと強く思ったんです」

「建築や空間で大切な存在となるあかりに関心があったんです。それも使う人が直感的に使え、触れることのできる照明器具をつくれないかと。照明を好きな場所に持ち運んで使えたらどんなに楽しいだろうか、ということも頭にありました」

こうして、持ち運んで使え、機能もしっかりと果たす充電式ポータブルライトの開発が始まりました。

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「Lumiosf」。充電式で持ち運べるだけでなく360度開いて使うことも。この状態に付属のレザーストラップを組み合わせて吊り下げて使う楽しみも。じゃばら部分はタイベック素材。和紙に似た質感ですが、開閉に対する耐久性もあり、破れにも強い素材です。Photo: Courtesy of Ark Trading

マックスはまた、イギリスの建築家 トーマス・ヘザウィックが手がけた可動橋「ローリング・ブリッジ」のように、「かたちを変えて機能するもの」に興味があったと言います。あるいは、自作の建築模型をコンパクトにたたんでノートにはさんで運んでいたことも。シェードがじゃばらになっていてかたちを変える「Lumiosf」には、そうしたマックスのこれまでの探究が凝縮されているのです。

「2012年の春、完成した試作品を友達に見せたところ、評判がよかった。よし、これでいこう! と自信を持ちました。メーカーと組んでの製品開発は最初から頭になかったんです。開発の時間がかかってしまうからです。僕はクラウドファウンディングの『キックスターター』で資金を集めました。2013年のことです。キックスターターの良いところは、人々の反応も確認できることなんです」

その結果、期待していた10倍もの資金が寄せられるほどに! しかし彼の孤軍奮闘は続きます。「表紙」の合板、じゃばら状のシェード、電子部分といった各々の製造現場を海外に探し、製造環境を整え、製品としてまとめあげるしくみを整えていきました。こうして9カ月後、製品を発売。ミュージアムショップなどでの販売が始まると「Lumiosf」はすぐに注目を集めます。

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こちらは第2弾の「mini Lumio+」。Photo: Courtesy of Ark Trading

光が灯る仕組みや構造もよく練られたこの「Lumiosf」からの発展形が、日本でも2月に発売が始まったばかりの「mini Lumio+」(ミニ・ルミオプラス)。ミニになっただけではありません。名前に「プラス」とあるように、USBケーブルを使ってスマートフォンなど他の充電機器へのモバイル充電ができるなど、新たな機能が加味されています。

カラフルな色にも注目を。背はオレンジ、イエロー、レッドの3色。くみあわせられた"表紙"は順にブラック、ネイビー、グレーの3色。手ざわりも良く軽快なファブリックは、製本に用いられるバックラムという強い素材です。

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「mini Lumio+」。背の色はこのイエローのほか、オレンジ、レッド。どの色も美しい。本体への充電用Lightningケーブルが付属し、USBで充電可能。税込24,408円。Photo: Courtesy of Ark Trading

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MoMA DESIGN STORE表参道で2月24日まで「mini Lumio+」の特別展示がされています。その特色、楽しさ、ぜひ感じてみてください。Photo: Courtesy of Ark Trading

じつは新作「mini Lumio+」についてもマックスらしいエピソードが。あわせてお伝えしましょう。

「mini Lumio+」を計画していた昨年初め、彼は全米プライムタイムに放映されている人気テレビ番組に登場しました。5名の投資家に登場者が順にプレゼン、提案に共感した投資家が投資を約束するという「シャークタンク」という番組です。

登場者は、「シャーク」(鮫)との名の通りに鋭い投資家たちから次々投げかけられる質問に答え続けなくてはなりません。しかしそこはマックス、「mini Lumio+」のコンセプトを明快に伝え、5名全員が「投資したい!」と口にする快挙をなしとげたのです。また、製造はこれからだというのに、番組の視聴者からは続々と「mini Lumio+」の予約問合せが......!

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プロダクトを紹介する写真も色とりどり。3枚の写真に写っている「mini Lumio+」は順に、オレンジ/ブラック、イエロー/ネイビー、レッド/グレー。色の喜びに溢れています。Photo: Courtesy of Ark Trading

このとき、すでに販売されている第一弾の「Lumiosf」を手にとり、あかりに包まれた投資家たちの驚きの表情といったら......! シャークたちの心にもこのプロダクトの魅力が直球で響いていました。

本や手帳と一緒に携え、持ち運ぶのも楽しいコードレスのポータブルライト。シンプルですぐに使える機能性も嬉しく、私も「Lumiosf」と「mini Lumio+」の二つを、テーブル上からベッドサイド、ベランダ......と、さまざまな場所に持ち運んで使っています。

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こちらは我が家で。250ルーメンの「mini Lumio+」、読書を楽しむのに十分な明るさです。Photo: Noriko Kawakami

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Lumioシリーズの説明をしてくださったマックスとアークトレーディングの宮崎純子さん。Photo: Noriko Kawakami

「Lumiosf」と「mini Lumio +」の情報、販売情報は以下で。
アークトレーディング

MoMA DESIGN STORE表参道店での特別展示は2月24日まで。
MoMA DESIGN STORE

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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