クリエイティブ・デザイナーに藤原大さん。
「桐生クッション」、進行中です。

「MUJI to GO」のディレクターを始め、デザイナー、クリエイティブディレクターとして活躍する藤原大さんが、絹織物の産地として知られる群馬県桐生市の4社と新しいプロジェクトを進めています。そのキックオフ展示会が先日、ライトボックススタジオ青山で開かれました。

桐生といえば、日本はもちろん海外のファッションデザイナーも着目し、コレクションにも用いているテキスタイルの産地です。そこでいま、どのようなことが進んでいるのか。これはやはりドキドキします。

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「桐が生まれると書く地名は、桐の産地だったことに由来します。みんなと、『桐』から考えていきたい」と始まった今回のプロジェクト。ライトボックススタジオ青山での初披露の様子です。
Photo: Keizo Kioku(写真すべて)

その名も「桐生クッション」プロジェクト。桐生の4社から連絡があったのは昨年夏。いつも素材にまで遡ってデザインプロジェクトに関わる藤原さんにとっては願ってもいなかったことのようです。「デザインに関わる人間にとって、産地から声をかけてもらえることは光栄なこと。もちろん快諾しました」と藤原さん。

「B to Bで企業や専門家の間のやりとりとなっている桐生のテキスタイルを、使う人たちと結びつけたいと思いました。私たちの生活に身近で、テキスタイルを総合的に楽しめるひとつのかたちがクッションです。カバーとしてのテキスタイルはもちろん、クッションそのものに関しても桐生でないとできないものをつくっていきたいと考えています」

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桐生クッションの「K」「R」「C」と椅子とクッションのかたちが重ねあわせられた動くロゴマーク。藤原さん自らデザインしています。

桐生の絹織物が全国屈指のブランドになったのは江戸時代、18世紀後半のこと。水力を動力源とし、良質かつ均質で丈夫な糸を大量生産できるようにし八丁撚糸機(はっちょうねんしき)の開発がきっかけでした。桐生の紹介から始まる会場では、その機械も。さらにはクッションそのものに触れての紹介も。

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高級絹織物「桐生お召」を生んだ桐生の紹介から行われていた展示会場。八丁撚糸機も会場に。

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クッションそのものに関する展示も。

そして、大切な「桐」について。桐生の桐に焦点があてられた今回のプロジェクトでは、桐で染めた糸も用いられています。その色の美しいこと。さらに「クッションと切り離せないのは椅子」(藤原さん)と、古来、桐のおがくずが用いられてきたアイロン台の「袖まんじゅう」から発想したクッションと桐の端材を活かしたスツールの開発もなされています。

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桐染めによって生まれるやさしく美しい色に注目ください。

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「kiri-manju スツール」。アイロンをかける際に用いられる袖まんじゅうに昔から桐の粉が入っていたことから、桐の粉をクッションに用いたスツールを開発。藤原大さんデザインです。

このプロジェクトでは参加企業(松井ニット技研、株式会社笠盛、丸中株式会社、IZUHARA)が集まって藤原さんとやりとりをしている点も特色です。特殊加工、特殊技術のジャガード織物、ニットと専門分野は異なるものの、新しい提案を目ざす皆さんの研究会。その過程で、各社が得意とする技術の連携も始まっていることも教えてもらいました。

こうして誕生した試作品はどれも「白」で統一されています。八丁撚糸機で拠った八丁ヤーンを用いたジャガード織りとなる「ウェーブ織り」のクッションや、低速編み機を用いた伝線しにくい縦編みニット。柔らかなウールの刺繍で植物の柄が施されたクッションもあります。宝石染めを特色とする企業が水晶で染めた、なんとも美しい乳白色のクッションも。

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キックオフにあたり「白」で統一されたクッション。織りはもちろん刺繍や染色の加工において各社でないと出せない特色を楽しめました。

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左は八丁撚糸機で撚った八丁ヤーンによるジャカード織りのクッション(IZUHARA)。右は縦編ニット(松井ニット)、シルクプロティン配合によるニットの糸がしなやか。

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左は柔らかくしなやかなウールの刺繍で桐生の植物を表現(笠盛)、右は繊水晶の粒子を付着させた宝石染めによるシルク生地に刺繍(丸中)。

会場で桐生の皆さんが語ってくれたことばも印象的でした。

「藤原さんは私たちの提案に向き合ってくれたうえで可能性をひきだしてくれるんです。そのつど『お題』があるのですが、難しいものにもあえて挑戦してみようと。薦めてくれるのはいつも、開発が難しいものですね(笑)......。そうすれば、ほかにはない、私たち独自のものが誕生すると背中を押してくれています」

「ニットのゲージについて藤原さんが提案してくれたものを調べていましたら、衣料ではなく医療用、精密機器に使われるものだったりしまして......」

皆さん、話してくれながらとても楽しそう! 刺激に満ちたやりとりが続いている様子が伝わってきました。今回のキックオフ展の後、近くクッションの販売も始まる予定だそうです。私も楽しみにしています。

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藤原大さん(右)と桐生の皆さん。並外れたリサーチと行動力でプロジェクトを牽引する藤原さん。最近では21_21 DESIGN SIGHTの「カラーハンティング展 色から始めるデザイン」(2013年)や資生堂「LINK OF LIFE さわる。ふれる。美の大実験室 展」(2015年)などの展覧会でも藤原さんならではの情熱に触れることができました。

「桐生クッション」問い合わせ先
webinfo@kasamori.co.jp

皆さんの情報は以下で
DAIFUJIWARA AND COMPANY http://www.daiand.com

松井ニット技研 http://matsui-knit.shop-pro.jp
株式会社笠盛  http://www.kasamori.co.jp
丸中株式会社  http://www.saien-marunaka.com
IZUHARA    http://izuharasangyo.com

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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