うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#06 福岡彩子さんのうつわ、シンプルの理由

うつわディクショナリー

ふつうであることの美しさ

福岡彩子さんのうつわはとてもシンプル、なのに定番の白&ブルーグレー&ブラウンの3色と、プレート&マグといった代表的な食器の形の組み合わせから多くのバリエーションを生みだしてしまう。和洋中、あらゆる料理を受け止めるシンプルさの由来を紐解きます。

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福岡さんがうつわを作り始めたきっかけを教えてください。
福岡:私は、大学を出てからアパレル、現代美術ギャラリー、建築設計事務所とだいたい3年おきくらいに職を変えたんです。自分の興味が変わっていくのに合わせて転職をしていったという感じなんですが、いま振り返ってみると、いつも作り手とユーザーの間に立つ仕事をしてきました。最後の勤め先は、安藤忠雄事務所。第一線の建築が生まれていく過程を近くで見ているうちに“人が使うものをデザインする”ということが面白く感じられて、自分の興味になっていったんです。父は彫刻家で、母は美術教師をやりながら陶芸のオブジェを作っていましたので、ゼロから形を作っていくことや陶芸への興味はもとからあったと思います。
 
—英国で陶芸を学んだそうですね。
福岡:ルーシー・リーの作品がとても好きだったので、陶芸を始めるならイギリスがいいなと。イギリス国内の陶芸家をリストアップした図録を手に入れて、好きだなと思う作家さんのところにとにかく手紙を書いて「弟子にしてください」と。一人の方が「大学で教えているから一度遊びに来てみたら?」って親切にしてくださって。そのまま、その大学の陶芸科を受験したんです。オブジェもテーブルウェアも勉強しましたけど、私はあくまでもうつわを作りたかったんですね。アート系だった両親への反発もあったのか、個性の強いものより「ふつうがいい」ってずっと思ってました。同級生が毎日違うオブジェを作っている隣で、私は、ろくろでひたすらカップやプレートをひく。「サイコはずっと同じもの、作ってるんだね」ってよく言われてました(笑)。
 
—「ふつうがいい」という想いが作品のシンプルさにつながっているんですね。
福岡:建築事務所で芽生えた“使うためのものをデザインする”という興味がそこに繋がっているのだと思います。軽いこと、スタッキングできること、持ちやすい形、それから、他のうつわを合わせた時に突出しないものであること、そういうことを大切にしています。昔からうつわが好きだったんですけど、お店で見るときに「私だったらこうしたいな」というのがけっこうあって。そういう記憶をデザインに取り入れているのかもしれません。かといって、デザイン画を描いてから作るようなことはしないんですよ。形は、ろくろを回しながら、手で触りながら、少しづつ探っていきます。手仕事だからこその“ゆるさ”は、残したいなと思うんです。
 
—シックな色味や釉薬の濃淡も、手仕事のならではの“ゆるさ”のひとつと言えそうです。
福岡:そうですね。酸化金属という鉱物を調合して釉薬にしています。コバルトとかマンガンが炎と反応して窯の中で化学変化を起こし、思いがけない色が一筋流れたり、ムラができたりするんです。基本の3色として、白、ブルーグレー、ブラウン。個展ではそれに加えて毎回1〜2個の限定色を出しています。でも独立した最初の頃は、白一色でやっていたんですよ。その頃は、白い食器の全盛期で、均一でマットな白というのが多く出回っていました。そんななか、卵の殻みたいなふんわりとしたニュアンスのある白を提案したくて、オリジナルの釉薬を調合したんです。チタンという鉱物が変化してプツプツとした模様が現れ同じものはひとつとしてありません。たくさんの方が使ってくれていて嬉しいです。
 
ー福岡さんの定番は、色も形もロングセラー。小さな花器も人気ですね。
福岡:花器は、ろくろを回しているうちに手の中から自然と立ち上がってくるようなイメージなんです。「あ、こうなっちゃった、できちゃった」って。花器はもちろん、うつわも横から見た感じを大事にしています。見ることも、使うことというか。料理を入れなくても美しいものでありたいと思っています。
 
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今日のうつわ用語【ルーシー・リー】
イギリスを拠点に活動した女性陶芸家(1902〜1995)。釉薬の実験を繰り返しさまざまな色を開発。ロンドンの自宅に工房を構え、電気窯を用いながらアートと実用の間を行き来するような繊細なうつわを生み出した。

凹凸のあるデザインのコンポートは釉薬の流れや溜まりが美しい。定番色の白はチタンが発色したもの。コンポート¥5,184/ KOHORO二子玉川

リムプレートはリピーターの多い品。コホロ二子玉川店での個展限定色はモーブ。6寸リムプレート¥3,240/ KOHORO二子玉川

作品を作るときには横から見たフォルムの美しさを大事にしている。定番色のブラウンはマンガンが発色したもの。スープボウル¥4,860/ KOHORO二子玉川

小さくて繊細な一輪挿しの花器は一点ものということもありとても人気の作品。¥3,024/ KOHORO二子玉川

通称「プリンマグ」と呼んでいるマグカップはロングセラー。マグカップ¥3,780/ KOHORO二子玉川

釉薬のムラや濃淡が奥行きのある表情を醸し出す。定番色のブルーグレーはコバルトが発色したもの。リムボウル¥5,940/KOHORO二子玉川

【PROFILE】
福岡彩子/SAIKO FUKUOKA
工房:大阪府堺市
素材:半磁器に近い陶器(信楽土)
経歴:大阪府堺市生まれ。大学卒業後会社勤務を経て、2001年より英国バーススパ大学で陶芸を学ぶ。2003年独立。滋賀県立陶芸の森スタジオアーティストを経て、地元の堺市に工房を構える。
http://studio-re.ciao.jp/

KOHORO二子玉川
東京都世田谷区玉川3-12-11 1F
Tel. 03-5717-9401
営業時間:11時〜19時
不定休
http://www.kohoro.jp
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

『福岡彩子展』開催中
会期:2017年4/15(土)〜4/26(水)
会期中無休

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター
「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。http://enasaiko.com

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