雅な枝に小鳥が遊ぶ、桜の花あしらい

花のある週末 2017.03.17

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桜の季節を目の前に、足踏みをするかのような寒の戻り。そろそろ春らしい服を着たいと思いながら、まだ冬物が手放せませんね。花店では自然界より一足早く、桜の花が私たちを出迎えてくれます。「わあ、桜だぁ」と、思わず声にして目を輝かせるお客様の多いこと! やっぱり桜は日本人にとって特別な花だなあと感じます。今週末はぜひ、はんなりと咲きはじめた桜の枝を手に、家の中で小さなお花見をする花あそびを楽しみませんか?

ご近所の花店をはしごしながら思いを巡らせていたのは、桜の花には様々な色の表現や数え方があるということ。日本の伝統色には、「桜色」「薄桜」「桜鼠」「灰桜」……と桜の名がつく色がいくつもあり、「薄紅」「淡紅」なども桜を表す色としてよく用いられます。そして、花は一輪二輪、花びらは一枚二枚、それが舞い散ると一片二片(ひとひらふたひら)、数輪まとまっている花は一房二房、花房がついた枝は一枝二枝と数えます。しだれるほどに花咲く枝は「万朶(ばんだ)の桜」とも。

伝統色には花の名前が多く、またどんな花も同じように数えるのですが(笑)、桜にはじまる色や数えの美しい表現に、日本人の感性や日本語の機微の美しさを重ね合わせずにはいられません。平安の昔から花といえば桜、桜の花は日本人の心なのです。

日本には現在、600種を越える桜が存在するそう。たしかに桜はたくさんありますが、街中で目にする桜の多くは「染井吉野」ですのでそんなに種類があるとは驚きです。今回私が手にした桜は、花店でよく目にする淡いピンク色の「啓翁桜」や「彼岸桜」とは雰囲気が異なる、やや紅が濃く早咲きの「雅桜(ミヤビザクラ)」。寒緋桜(カンヒザクラ)の仲間になります。

寒緋桜の原産地は台湾や中国南部。沖縄や鹿児島にも分布し、沖縄では桜というとこの寒緋桜を指すそうです。有名な河津桜も寒緋桜の交配種になります。春まだ浅い時期、鮮やかな緋紅色の花が鐘状に下向きに咲きますが、この「雅桜」もその特徴を受け継いでいます。埼玉県浦和の桜圃場で発見された桜の新品種で、「皇太子殿下・雅子様」の御成婚を記念して命名されたそうです。

撮影した時はまだ蕾が多く、絵的にはやや寂しい感じになってしまいましたが……(ちょうど今満開で綺麗です!)、花が咲いている姿を想像してご覧ください(笑)。今回は、変わり咲きのラナンキュラスと、貝母百合の仲間のフリチラリアをあわせて、少しアジアなムードが漂う花あしらいをしてみました。台湾にルーツを持つ雅桜の雰囲気には、籐かごのような花器が良く似合います。ふたつの花器にそれぞれ桜の枝とランキュラスを活け、枝の間を小鳥が飛びかうようなイメージで、双方の器にフリチラリアを軽やかに配しましょう。

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雅桜のアジアンティックな花あしらい

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【材料】

桜の枝                    1~2本
ラナンキュラス・リナセティー(モロッコ咲き) 2~3本
フリチラリア                 3本
器適宜(画像は花器大小2点、小さなグラス1点)
切花栄養剤                  小袋1袋
(最近は花屋さんで購入時につけてくれるところが増えています)

【作り方】

  1. 切花栄養剤を正しく希釈した水を器に入れます。
  2. 大きい方の花器に桜の枝を活けます。枝には表裏があるので、花の向きや枝の広がりを観察しながら表側を向くようにあしらいます。華奢な枝ぶりなので、花器の高さの3倍ほどの長さでちょうど良い感じです。
  3. 小さい方の花器の口元に大輪のラナンキュラスを挿します。
  4. フリチラリアは下の方の水に浸かる部分の葉を取り除き、上の方の葉の流れを楽しみながら、双方の器に飛ばすにようにあしらいます。桜の枝の間に絡めつつ、ふわっと軽やかに活けましょう。
  5. 最後に全体のバランスを見ながら、小さなグラスにもラナンキュラスを活けて出来上がり!

※画像の桜は蕾が多いですが、2〜3日で全て花開きます。
※ラナンキュラスは栄養と水が不足すると茎が折れやすくなりますので、切花栄養剤をできるだけ使用しましょう。

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今回は雅桜の濃い目のピンク色をより瀟洒に魅せるために、個性的な花々をあわせてみました。かわいらしいイメージのラナンキュラスの中では珍しいモロッコ咲きの品種をチョイス、ギザギザの花弁が黒芯の色と相まってとてもエキゾチックな花姿です。

ラナンキュラスについて少々。ラナンキュラスはアネモネと同様のキンポウゲ科の花で、旬は2月~3月。見応えのある花がとても長持ちします。市場に出回るラナンキュラスの切花の多くは、実は宮崎の綾園芸・育種家草野修一さんが作出したもので、日本産のラナンキュラスは世界でも非常に高い評価を得ています。最近では、花弁が輝いているスプレータイプのラックスシリーズや、一風変わったモロッコシリーズ(上記)など次々と新作がデビューしています。さらにグリーンの斑入りのポンポンシリーズも大人気、常に話題が尽きない花なのです。花選びのポイントは、花弁の多いものや咲いている花を選びましょう。なるべく大きい方がゆっくり育てられていますので、見応えも花持ちも長い傾向にあります。

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画像左:ラナンキュラス・ラックスシリーズ
画像右:ラナンキュラス・ポンポンシリーズ
※どちらもカラーバラエティあり

フリチラリアはイラン、トルコ、アフガニスタン、パキスタン、カシミール原産の花で、茶花として親しまれている日本の黒百合や中国産の貝母百合(バイモユリ)も同じフリチラリア属に含まれます。釣り鐘状の花が下を向いて咲く姿は楚々としていながら、独特の渋い花色や花弁の網目模様がマニアックな印象で、可憐な野草の趣ながら一匙の毒気もあわせもつ不思議な魅力の花。くるんと軽やかな細葉は羽を広げる小鳥のようで、春の枝物に良く似合う花だと思います。フリチラリアや貝母百合を見つけたら、ぜひ桜と一緒に楽しんで♪

■お花見ホームパーティの桜のおもてなしアレンジ(バックナンバー)
https://madamefigaro.jp/interior/series/weekend-flower/post-1691.html

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そして、ウィークエンドのおやつは桜餅! 桜の季節のために揃えた薄桜色の食器にあわせて、桜とコデマリの小枝と淡ピンクのダリアを小さくあしらいました。お皿の上に一輪挿しのような小さな器をのせて飾ると、コーディネートの中に花が溶け込んで、より素敵な設えになりますよ♪

東京の桜の開花予報は来週の23日、なんとなくそわそわしますよね。桜咲く日を心待ちにしながら、小さな桜を愛でるのもまた一興です。ではでは皆さま、花と素敵な週末を。

<INFORMATION>

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photo,styling,text:NORIKO OGAWA

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