秋色がはじまる季節、サマーエンドの花あしらい
~夏の名残のヒマワリと秋のはじまりのケイトウ~

花のある週末 2015.08.28

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まるで空気が入れ替わるように、台風を境に秋が訪れたようです。
晩夏から初秋に移ろう頃、目に映るものはにわかに秋色を帯び、肌を撫でる風の思いがけない涼しさに、夏の終わり特有のメランコリーな気分に。秋の風を感じたら、夏のほとぼりをさますような優しい花飾りはいかがでしょうか。

花屋さんには、行く夏を惜しむかのようにヒマワリたちが並び、秋を予感させるオレンジ色の花々や色づき始めた実もの、そしてリンドウやトルコキキョウなど初秋の風情ただようすっきりした青や紫の花も増えてきました。秋のファッションのような色合いのケイトウも気になりますね。

画像のヒマワリはその名も「ゴッホのひまわり」......かの有名なゴッホの絵画「ひまわり」からインスパイアされた品種になります。パリの都会暮らしに疲れてしまったゴッホが、人生の光を求めて移住した地、南仏アルル。アルルで出会ったヒマワリの姿は、ゴッホにとってまさに心に咲く太陽だったことでしょう。キャンバスにぶつけた黄色はやがて狂気となり、彼が辿ることになる悲劇を思うと、燦々とした光より晩夏の少し色褪せた陽射しが似合うように感じます。

絵画に描かれたように、ヒマワリだけを集めてざっくりと活けるのが素敵だと思いますが、この「ゴッホのヒマワリ」はやや小ぶりで半八重咲きの花型、他の花々とも組み合わせやすい品種になりますので、今日はいくつかの花材を合わせてみましょう。

最初にご紹介する花あしらいは、いくつもの夏の余韻を残しながらきらめく花々と、秋の訪れを告げる花の組み合わせ。移ろう季節の光の色を切り取るように、花色をチョイスしました。夏の名残のヒマワリと、秋を感じるくすんだ橙色のケイトウをつなぐ黄金色のマリーゴールド、色づき始めた丸い実のビバーナム・コンパクタ、そして道草しながら歩いた畦道を思い出すきらきら光るスモークグラス。

少しフレンチなテイストのバスケットを選んで、南仏の晩夏をイメージしてアレンジしてみましょう! 熟れたイチジクや葡萄などの果実を添えれば、季節の一皿のような花あしらいに。花材として出回る「ブラックベリー」を一緒に活けてもよいですね。

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【サマーエンドのヒマワリのバスケットアレンジ】

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<材料> 画像(下)左から
マリーゴールド  2本
ヒマワリ     2本
ビバーナム・コンパクタ 1枝(実が2房程度)
ケイトウ     2本
スモークグラス  3本

バスケット    1点(画像のバスケットは直径30cm〜、深さ13cm)
バスケットの中の水が入れられる器  1点
切花栄養剤    適量(最近は小袋をつけてくれる花屋さんが増えています)

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<作り方>
1.バスケットの中に、水を入れた器をセットし、切花栄養剤を適量加えます。ヒマワリなど茎が痛みやすい花が多いので、水は浅めでOKです。
2.この大きさのバスケットに対して、花の本数が少ないので、今回は三方見(ほぼ正面からのみ見るアレンジ、背中に壁がある場所に飾るのに適した活け方になります)のアレンジになります。まず、バスケットの前側の縁に花に重量があるケイトウをひっかけるように活けます。実の房がうまくバスケットの縁からあふれるようにビバーナム・コンパクタも先に生けます。
3.2の花々に重ねるように、ヒマワリとマリーゴールドを活けます。
4.最後にスモークグラスをふんわりあしらいます。他の花にかぶさるような感じでも素敵です。出来上がり!

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さて、今日ご紹介するもうひとつのアレンジ花材は、これからますます美しい季節を迎える「ケイトウ」。
ケイトウはインド原産のヒユ科の花で、中国を経て日本にもたらされました。その歴史は古く、「万葉集」に「韓藍(カラアイ)」の名前ですでに登場しているそう。鮮やかな緋色は、仏教に描かれた極楽浄土や当時の中国の華やかな文化を物語っていたことでしょう。お盆やお彼岸のお墓参りの花束に必ず入っている真っ赤な花のイメージが強いですが、最近はおしゃれなニュアンスカラーのケイトウが増えて、秋の人気花材のひとつになっています。今回ご紹介するアレンジに選んだ色は、艶めくカシス色やダークオレンジ、そしてベージュピンク。深い色合いをグラデーションのように組み合わせると、ビロードを折り重ねたような花の魅力が引き立ちます。

今回は、ティータイムのテーブルで愛でたい小さなカップアレンジ。こんもりとケイトウの花を盛り付けるように活けて、シックで軽やかな「チョコレートコスモス」を合わせてみました。
コスモスもまた初秋を代表する花のひとつ。今ごろ山間の高原には、風に揺れるコスモスが一面に咲いていることでしょうねぇ......そして「チョコレートコスモス」も今が旬のキク科コスモス属の花になります。黒紫色の可憐な花からは、なんとチョコレートの香りが! 秋のアンティークカラーやクラシカルなムードにもよく似合う花で、アレンジやブーケのアクセントとしてとても人気があります。花言葉は「恋の思い出」だそう。

ケイトウが持つシノワズリーな雰囲気、小さなアレンジにも気品が宿りますね。中国茶も似合いそうな花あしらいになりました。もしくはカシスの香りの紅茶と美味しいショコラと一緒に、ひと夏の「恋の思い出」話をするのもいいのでは!? 花にまつわるストーリーを知っていると、コーディネートやおしゃべりにもウィットが効いて、一層楽しいひとときになりますね♪

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【ケイトウとチョコレートコスモスのカップアレンジ】

<材料> カップ3つ分
ケイトウ       6〜7本   
チョコレートコスモス 4〜5本

カップ        3点
切花栄養剤      適量(最近は小袋をつけてくれる花屋さんが増えています)

<作り方>
1. カップに半分ぐらい水を入れ、切花栄養剤を適量加えます。
2. 短く花の部分をカットしたケイトウを2本ずつ程度カップに入れます。カップにこんもりと盛ったような高さにします
3. ケイトウの花のひだを利用してチョコレートコスモスを挿します。リズミカルに高低差をつけ、軽やかに活けましょう。
出来上がり!

※ケイトウの花部の下には黒い小さなゴマのような種がつき、触るだけでポロポロ落ちますので、活ける際には新聞紙など敷いて作業するとよいでしょう。

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フランスには革命時代に使用された「共和暦(フランス革命暦)」という暦があります。1792年9月22日に施行され、ナポレオンがグレゴリー暦に戻すまでのたった13年間しか使わなかったそうですが、自然や農耕にちなんだ名前がつけられ、それが何とも詩的で美しいのです。(日本の二十四節気のようですね)

ちょうど晩夏の今、8月18日~9月16日は「fructidor(フルクティドール)」=果実(fruits)という月、まさにイチジクやこれから収穫期を迎えてワインになる葡萄をイメージしてつけられたのではないでしょうか。

というわけで、今日のアレンジにタイトルをつけるなら、「fructidor」。
ポエトリーな気分は秋ならでは! 詩を綴るように情緒豊かに花と触れ合う季節......なんだか素敵な予感がしませんか?

※ご参照:フランス共和暦 http://www.bourgognissimo.com/Bourgogne/1ARTL/BR_027_3.htm

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