パリの子ども事情

子だくさん地域の"子ども支援活動"& パリのバレエ事情(5)

夏時間に切り替わり、春恒例のパリマラソンも終了し、本格的に春を感じられる季節です。
ピクニックにはまだ肌寒いのですが、パリ11区のママンたちがこんな活動を始めました。

2週間前に学校のママン友達から連絡網メールが届きました。
「中学校の修学旅行にお金がなくていけない子どものために、レストランを開きます」
「成績が悪い子どもにやる気を出させるための、労働の大切さを知るための、農地作りの旅の資金を作るために、レストランを開きます」
という、ふたつの目的への支援金のための活動です。

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中心になっているのは、一学区を仕切るアソシエーションのママンたち。
事前の予約制で道に出したテーブルで食べることも、持ち帰りもできるシステム。
気候の良くなってきた土曜日の、ちょっとしたお祭りのような盛り上がりです。

元々このアソシエーションはヴィド・グルニエを開いたり、小さな畑を借りてみんなでフルーツを育ててジャムを作ったり、アソシエーション内に子どもの遊び場や勉強をする大きなテーブルがあったりします。
働いている親の代わりに子どもを預かったりと、地域に密着していろいろな楽しいことを企画しています。

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2週続けてこの臨時レストランは開かれました。
当日は、いつもは室内にあるサッカーゲームやテーブルを歩道に持ち出し、子どもたちも楽しみました。

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ママンたちの手作りジャムの売上金も、寄付されます。
今回はキウイとマンゴーのジャム。

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お弁当のように詰めていきます。
雑穀と茄子の煮物。
どんなお料理が出されるのでしょうか?

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薄暗くなってきました。

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ロウソクを灯して、臨時レストランの準備完了。

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たくさんの人が集まってきて、楽しいディナーの始まりです。

料金は子ども5€、大人10€。
お料理とデザート付きです。

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マリネしてオーブンで焼いた鶏のもも肉。
ブイヨンで煮た茄子とニンジンと春キャベツ。
その下には雑穀。
アフリカ料理でした。

ちょっとカワイイ話。
12歳になるレナちゃんはお友達3人で予約しました。
まだ夜に子どもだけでレストランへ行ける歳ではないけれど、近所で、しかも知っている友達の親たちが周りにいる安心な臨時レストラン。
ちょっと、背伸びした体験を楽しんだそうです。

我が家の子どもたちはアフリカの家庭料理を初めて食べました。
雑穀のモチモチした感じ、お肉のブイヨンがよくしみ込んだ野菜、食べた事のない味付けの鶏肉。
全て完食!

"子どもたちを街全体で守り、育てる"これが基本なパリ。
みんなが嬉しくなるようなこんな企画を考えつくなんて、本当に素晴らしいと思いました。


そして、パリのバレエ事情その5。

先月に続きバレエのコンクールシーズンは続いています。
今回はパリの中で開かれるかなり厳しい審査で有名な「LE CHAUSSON D'OR」。

パリの凱旋門と新凱旋問を結ぶ大通りに、その会場はありました。
見た目は普通の会社のような近代建築。
しかし、一歩足を踏み入れると素敵な劇場になっていました。

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今回の審査方法は、6カテゴリーに分かれていて、1日かけて予選。
全員がシンプルな練習用のコスチュームで自由曲を踊ります。

PRÉPARATOIREは一番小さなカテゴリー。
順にETUDE A、ETUDE B、ESPOIR、SUPERIEUR、PROFESSIONNELと続きます。

全てが終るのが夕方、それから1時間後に審査の結果が出ます。

審査員は全てオペラ座の先生方。

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赤字が順位。
外に貼り出されました。

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自分の名前をみんな探します。
今回は我が長男は予選落ち。
ガラス越しに人差し指で「なかった!」と......。
前回のドーヴィル国際コンクールで予選通過、銅メダルを受賞していただけに、予選は通過すると思っていた長男。
かなりショックを受けてしまいました。
これからこんな事がたびたび彼には待ち受けているんだろう、と思うと胸が痛みます。
自分で選んだ道だからしょうがない事だけれど。

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帰り道、パパに抱っこ(いくつだ!?)。

翌日は綺麗なコスチュームを着て舞台でまた競い合う。
それに参加出来なかった事が悔しくてたまらないようです。

しかし翌日。

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朝起きていきなり「みんなを応援しに行く!」と、あわてて支度。
朝ご飯はメトロの中です。

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同じスクールのみんなを応援し、空いた時間にみんなと遊び。

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外にまだ貼り出してある前日の予選結果をみんなで分析したり。
自分が出場するだけではなくこんな時間を過ごすのも、長男にとってはとても大切なんだと実感しました。

全員踊り終わって審査を待つ間、オペラ座の若手ダンサー達によるスペクタクルが約1時間。

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みんなこんな風に踊れるようになるのだろうか?
いや、ほんの一握りのはず。
でも、それを観劇する子どもたちの目には、将来の自分たちの姿として写っていたように思う。
それならどんな子でも応援しよう! 大人たちがサポートしよう! そんな気持がわき上がってきました。

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そして結果発表! 表彰式。
名前を呼ばれたら舞台へ上がります。

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長男のスクールからは4人が受賞。
ローザンヌに出場したDIANEちゃんはグランプリでした。

同じカテゴリーの女の子たち、受賞出来なかった子は泣いちゃったりする。
その横では受賞した子が嬉しそうにみんなから祝福を受けている。
厳しい世界だけに、今後長男の心の動きを親の私たちがどう扱っていくか、それ次第で大きく何かが違ってくるはずだから、慎重に丁寧にしていきたいと思う。


【関連記事】
パリのバレエ事情(1)
https://madamefigaro.jp/paris/blog/maiko-matsunaga/post-1335.html
パリのバレエ事情(2)
https://madamefigaro.jp/paris/blog/maiko-matsunaga/post-1338.html
パリのバレエ事情(3)
https://madamefigaro.jp/paris/blog/maiko-matsunaga/post-1355.html
パリのバレエ事情(4)
https://madamefigaro.jp/paris/blog/maiko-matsunaga/4nijinski.html

松永麻衣子

パリ在住ジャーナリスト

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