華やかなりし第二帝政展、オルセー美術館で1/15まで。

特集

19世紀の美術を展示するオルセー美術館が、創立30周年を記念して開催しているのは、『Spectaculaire Second Empire(壮麗なる第二帝政)1852- 1870』展である。1850年から1870年までの第二帝政は、日本では長く続いた江戸時代の最後の部分に重なる。18年と短かったが、チュイルリー宮殿はかつてのヴェルサイユ宮殿にみられたような華やぎと豪奢にあふれ、ブルジョワ社会が形成され、現在パリのリュクスの基礎が築かれた時代である。またオスマン男爵によるパリ改造が実施され、地理的にも今のパリの街並みに近いパリが誕生したのもこの時代なのだ。

オルセー美術館の展覧会では、11のテーマに分けてこの時代の特徴をわかりやすく紹介している。

第1室の「権力の劇場」でクローズアップされているのは当然ながら、この時代を統治したナポレオン3世だ。彼は有名なナポレオン・ボナパルトの甥っこ(弟の息子)で、彼同様にクーデターを起こして1852年に皇帝に即位した。母親オルタンスはナポレオン皇妃ジョゼフィーヌが初婚で得た娘なので、ナポレオン3世はジョゼフィーヌの孫にもあたる、とちょっとややこしい。第二帝政期というのは宮殿で頻繁にパーティがもたらされ、華やぎと活気にあふれる18年間だった。その贅沢に対する批判もあり、1870年の普仏戦争で失脚した彼は伯父ナポレオン1世に比べると、その評価はフランスの歴史においていまひとつ。この展覧会は現代の消費社会の原型となった第二帝政期の持つ革新的な面にスポットを当てることで、ナポレオン3世を見直す機会ともなっている。

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第1室。photo:Sophie Boegly©Musée d'Orsay

 

彼が1853年に結婚し、皇妃となったのはスペインの貴族ユージェニー・ド・モンティジョ(Laduréeの紅茶Eugénieというのは、彼女のこと!)だ。自分同様に海外からフランスに嫁いできたマリー・アントワネットに自分を重ね合わせていたユージェニー。第二帝政期のドレスのスタイルが18世紀に近いものに戻っているのは、それゆえである。贅沢好きな彼女と、自分の権力と功績を世間にしらしめたいナポレオン3世は、多くのパーティを開催した。展覧会の第3室では、それらの会場の装飾について焦点をあて、第4室の「皇帝の住居」では、夫妻が暮らしていたチュイルリー宮殿内にほどこされたルイ16世風のインテリアをテーマにしている。

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第3室。Maison Belloir et Vazelle による皇帝主催のパーティーのための会場案。1869年ごろ。Paris, musée d'Orsay, RF.MO.ARO.2015.3.1 © Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt

 

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美術館のブティックで販売しているユージェニー皇妃のプレート。79×50,7cm/170ユーロ

 

チュイルリー宮殿というのはルーヴル美術館の向かいにあるカルーゼル凱旋門の奥にあり、1871年のパリ・コミューンの時に焼失したが、ヴェルサイユ宮殿ができるまで王宮として使われていた建物である。マリー・アントワネットがヴェルサイユ逃亡に失敗した後に捕らえられていたことで、その存在を知った人もいるだろう。現在はチュイルリー宮殿の公園だけが残っている状態で、宮殿再建案もあるにはあるのだが、経済的、景観的な問題から今のところ何も進展していない。

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「廃墟と化したチュイルリー宮殿」1871年。Ernest Meissonier , Compiègne, Musée national du château - dépôt du musée d'Orsay, RF 1248 © RMN-Grand Palais (domaine de Compiègne) / Daniel Arnaudet

 

展覧会の第9室はメレリオ・ディ・メリオのジュエリーを多数展示する「皇室の祝宴の輝き」。チュイルリー宮殿で開催された華やかな祝宴、舞踏会は、女性たちがドレスとジュエリーで着飾り、競う機会だった。その結果、潤い発展したのが贅沢産業である。ここはパリのリュクスの誕生を垣間見る部屋となっている。なお、ユージェニーは豪奢を好む一方、慈善事業にも積極的で、病院もこの時代に多数建築されたことを彼女の名誉のために追記しておこう。

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第9室。photo:Sophie Boegly©Musée d'Orsay

 

第二帝政のヒロインはユージェニー皇妃であるが、忘れられない裏ヒロインがいるので紹介しよう。カスティリヨーネ伯爵夫人(1837〜1899)である。チュイルリー宮殿でのパーティに豪華な装いで現れた彼女は、ナポレオン3世の失脚を図るイタリアからの密使だった。好色家と噂される皇帝を篭絡する役割を与えられてパリにやってきたグラマラスなイタリア美女である。モンテーニュ通りの現在ディオールのクチュールメゾンの隣の28番地に暮らす彼女を訪問後、皇帝は路上で暗殺されかかったこともある。常に命を狙われていた彼。ル・ペルティエ通りのオペラ座から出てきた時も暗殺されかけ、これがきっかけで、オペラ座が現在の場所に移転することになり、オペラ・ガルニエが誕生したのだ。展覧会の第5室は「社会の肖像」。写真家ナダールがスタジオを構え、貴族やブルジョワたちのポートレートを撮影していた時代である。また、マネ、クールベといった画家たちも、家族の肖像の注文で生計の足しにしていた。カスティリヨーネ伯爵夫人の肖像画も多数残されている。しかし彼女の場合、なんといっても有名なのは膨大な写真を残したことである。修道女に扮したり、小説のヒロインを演じたり、と撮影を楽しんでいたようだ。晩年は現在ブシュロンの建物となっているヴァンドーム広場の26番地の中2階に暮らしていた彼女。美貌の衰えを苦にし、夜暗くなってしか外出をしなかったとか。

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左:エドガー・ドガ作『家族の肖像(ベレーリ一家)』1858~1867 Paris, musée d'Orsay, RF 2210 © Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt
右:第5室。 photo:Sophie Boegly©Musée d'Orsay

第11室は「新しい余暇、新しい絵画」。セーヌ河のカヌー、海辺や温泉地の休暇など、人々の余暇の楽しみ方も新しくなった。こうした光景は、印象派の画家たちに素晴らしいテーマを与えることになる。新しい余暇を人々が実践するのに大きな役割を果たしたのが鉄道網の発達だ。これはナポレオン3世の偉業ともいえる。北駅前の広場がナポレオン3世広場という名前なのは、それゆえだ。

第12室は絵画がテーマで、「芸術展(サロン)」と題されている。パリの芸術アカデミーによる絵画のサロンのことだ。審査員たちは極めて保守的だった。印象派の作品は、どれもこれも落選……。そこでナポポレオン3世が思いついたのが、「落選展」である。1863年に開催された際、注目を浴びたのはサロンからは拒絶されたマネの『草の上の昼食』だったという。なお、ナポレオン3世の芸術における貢献についていえば、ルーヴル美術館をいまのように一般公開したこともあげられる。

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第12室「サロン」。photo:Sophie Boegly©Musée d'Orsay

 

最後の第13室は「世界万博あるいは帝国の勝利」。1851年にロンドンの水晶宮で世界初の万国博覧会が開催された。ロンドンに激しい対抗心を燃やすナポレオン3世は、1855年と1867年に万博を開催。これはフランスの産業革命の達成に、大きな役割を果たすことになる。バカラ、クリストフルなどのフランスのサヴォワール・フェールが生きた馴染みあるブランドの品々の展示をみていると、19世紀後半の第二帝政期というのが身近に感じられるのではないだろうか。

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第13室。photo:Sophie Boegly ©Musée d'Orsay

 

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第13室では万博出品作が多数展示されている。エナメルをはめ込んだブロンズの鏡 1867年。 Louis Constant Sévin、Ferdinand Barbedienne、 Désiré Attarge作。
Alfred Gobert, émailleur (Paris, 1822 – La Garenne-Bezons, 1894) musée d'Orsay, OAO 1270© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt

『Spectaculaire Second Empire 1852- 1870』展

会期:~2017年1月15日まで
Musée d’Orsay
1, rue de la Légion-d’Honneur
75007 Paris
開館 9:30~18:00
休館 月
入場料 12ユーロ

 

réalisation:MARIKO OMURA

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