マリ=アニエス・ジロ、この優雅で刺激的な存在。(後編)

パリとバレエとオペラ座と。

モード界のミューズ

「ラ・ニュイ・ブランシュ」で午前3時まで踊ったあと、マリ・アニエスはその同じ日の午前10時には、メゾン・ラビ・ケイルーズの2017春夏コレクションのショーに出演した。ニコの『ファム・ファタル』の歌声にのせて、オペラ座の若手ダンサー10名を引き連れたマリ=アニエスのなんと格好いいこと!

「これはデザイナーからの依頼で、振り付けだけでなく私がショー構成をすべて考えました。天井の高いスペースを活用して二段のステージを作ったのも、私のアイデアです。そして10名の同僚に声をかけました。15分のショーの間、私のソロもあったんですよ。ただモデルが着て歩くより、このショーのように動きを加えることで、服はより美しくみえますね。私、ファッションは好きなので、ショーの構成や舞台構成などにとても興味があります」

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メゾン・ラビ・ケイルーズの2017年春夏コレクションより。

 

こう語るマリ=アニエス。彼女に声をかけたラビ・ケイルーズにも話を聞いてみよう。なぜ、マリ=アニエスなのだろうか。

「これは他の人など考えられないというくらい、明白なことなんです。僕が12歳のときに『大人になったら何になるの?』という質問の答えが『デザイナー!』ということだったのと同じように。今回のショーについてどう見せようか考えたとき、服を見せるのに動きが必要だ、誰か人物が必要だ、となり、その最適な人物が彼女以外にはあり得なかったんですね。知人を介して彼女に会いました。彼女に振り付けをお願いし、そして160〜180cmのダンサーを10名、ということだけを伝えてキャスティングも任せました。ショーの数日前、僕、音楽担当のフレデリック・サンシェーズ、彼女の3人でミーティングをしたのですが、服、音楽、振り付けがとても良いアンサンブルをすでになしていることに驚かされました。僕の服作りの基本は動ける服、遊べる服、踊れる服。彼女は優雅を身体に与え、その優雅が服に伝えられて……素晴らしいショーになりました。面白いことにショーの前のフィッティングも、普通のモデルとする以上にダンサーたちとはスムースだったんですよ。毎回、僕はエモーションとムーヴメントをインスピレーション源としています。次も生き生きとしたショーになるでしょう。マリ=アニエスがまた関わるか……それはサプライズですね !」

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マリ=アニエスと共にショーに出演し、メゾン・ラビ・ケイルーズのドレスで踊ったダンサーは次の10名。レオノール・ボーラック、レティシア・ガロニ、マリオン・バルボー、シルヴィア・サン・マルタン、ファニー・ゴルス、シャルロット・ランソン、エミリー・アズブーン、ロール・アデライド・ブコー、ニノン・ロー、ロクサーヌ・スタジャノヴ。

 

アレクシ・マビーユの2015~16秋冬のオートクチュールの発表は、クリエーションを彼のアイコン的存在の女性に纏ってもらい、マシュー・ブルックスが撮影した写真をショーの代わりにオペラ座内に展示するという形式をとった。

「僕がマリ=アニエスをアイコンのひとりに選んだのは、彼女がその圧倒的な動きの中に秘めた優雅さと力強さで、僕を魅惑するからです。彼女の顔はとても光をよく受け止めて、まるでアングルの描く肖像画のよう。見るたびにうっとりします」

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アレクシ・マビーユのオートクチュール2015〜16秋冬コレクションを着てポーズ。 photos:Matthew Brookes

 

自分のクリエーションのひとつに、マリ=アニエスの名前をいただくデザイナーもいる。例えばジャンプスーツのブランド、キャロリーナ リッツ。デザイナーのキャロリーナ・リッツラーはその理由を次のように語る。

「強さと官能を併せ持つ女性たちにインスパイアされて、常にデザインをしています。私がジャンプスーツのひとつをマリ=アニエスと名付けたのもそれゆえ。彼女はパワフルでエレガントな女性の代表的存在ですから」

木やプレクシグラスなどハードな素材を使い、オブジェのようなバッグをクリエートし続けているユーゴ・マタは、前シーズンに初めてデザインしたデイ・バッグをマリ=アニエスと命名した。

「このバッグはしなやかで、そして持ち手にはバーもあって……。5年来の知り合いだけど、彼女のエネルギー、繊細さは素晴らしいですね。ダンスの才能にあふれるだけでなく、いつも信じられないようなすごいプロジェクトに関わっていて……ちょっと男っぽい女性だ(笑)。並のアイデアから逸脱したプロジェクトに、彼女は渾身で取り組みます。限界をより押し広げたい、人を助けたいという強い願いを持ったとても寛大な女性なんです。以前雑誌のCR fashion bookのために、彼女がぼくのバッグを持ってダンスをするという撮影をしたことがあります。いずれ、プロモーションフィルムを一緒に作ろうって、彼女と話し合ってるんですよ」

セリーヌは2015年春夏コレクションのキャンペーンにも彼女を起用。ヨーガン・テラーが撮影した夜の闇で木に登る彼女の写真は、とてもインパクトの強いものだった。次に彼女とコラボレートするのは、どのビッグ・メゾンだろうか。楽しみに待とう。

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Carolina Ritz(キャロリーナ リッツ)のジャンプスーツ「マリ=アニエス」 photo:Maxime Vigato

 

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Hugo Matha(ユーゴ・マタ)のバッグ「マリ=アニエス」は、シーズンごとに素材や色を変えて登場する。

大村真理子
Mariko Omura
madame FIGARO japon パリ支局長
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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