パリの中心地、アートと結びついたホテルがオープン。
PARIS DECO
地下鉄パレ・ロワイヤル駅からすぐのリシュリュー通り。その17番地に2月27日、ちょっと変わったブティック・ホテルがオープンした。その名はDrawing Hotel(ドローイング・ホテル)。48室の客室がある2階から6階まで、フロア別にスタイルの異なるアーティストを選び、廊下と室内にドローイングを描かせたホテルである。これまでフロア毎に内装が異なる、といったホテルはあったけれど、このアイデアは新しい。
参加アーティストは、Lek & Sowat(2階/写真左)、Abdelkader Benchamma、Clément Bagot、Françoise Petrovitch、Thomas Broomé(6階/写真右)の5名。
シンプルにまとめられた室内。ベッドヘッドにはアーティストの作品が飾られている。バスルームは大理石が使われていて、シック&モダン。ガラス張りなので、1人部屋としての使用なら目に快適なのでそのままに。もし友達との2人部屋ならカーテンでバスルームを覆うことができるのでご安心を。
パリの中心部でのアーティ・ステイを可能にするブティック・ホテル。
1階には、濃いオレンジ色の壁で囲まれ、オリーヴが植えられた中庭があり、それに面してバー&ティールームが。ここは宿泊客でなくても利用できる。パリのど真ん中には珍しい、静かで落ち着いた時間が過ごせるこの場所は知っておいて損がない。
地下はDrawing Lab(ドローイング・ラブ)というアートスペース。コンテンポラリー・ドローイングの奨励を目的としていて、海外からの宿泊客が集まるホテルの地下、という立地も、その目的にぴったりだ。このスペースはホテルとは同じ建物内にあるといっても、完全に独立していて専用の入り口もあるので、気軽に覗いてみよう。
アート・ギャラリーと違って、ここでは作品は展示するだけで販売はしないという特徴もある。
2月24日のオープンと同時にスタートしたのは、日本人アーティストKeita Moriによる「Strings」展だ。鉛筆でも筆でもなく、彼のドローイング・インスタレーションは糸を使用! 現在展示中の作品は約2週間をかけて、彼がスペースに合わせて制作したものである。今後予定されている開催展示も、アーティストがこの場で制作するイン・サイチュの作品だ。
Drawing Lab で5月20日まで開催中のKeita Moriの「Strings」展。
左:6月8日から9月16日まで、ブラジル人アーティストDebora Bolsoniによる「No names, but names」展が開催される。
右:1階。奥に中庭、地下にアートスペースが眺められる。
このアートとホテルを結びつけるという2012年からの構想を実現させたのは、クリスティーヌ・ファルとカリーヌ・ティソという母娘。クリスティーヌがDrawing Labを、カリーヌがDrawing Hotelを担当する。ホテルにはアート・コンシェルジュが常駐し、パリを訪れた観光客にアートスポットを紹介したり、展覧会、コンサートなどを組み込んだカルチャー・コースを提案。1階のブティックでは、デッサンのアート本、文具などを販売する。
madame FIGARO japon パリ支局長
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏する。フリーエディターとして活動し、2006年より現職。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。