東京美的デザイン空間案内。 内装を"メイクアップ"した、資生堂の美しい空間。

Beauty 2018.07.09

建築、内装、そこで働く人が作り出す、美しい空間。そこに足を運べば、ショッピングだけではない特別な体験ができる。nendoの佐藤オオキが考えた、資生堂というブランドを体現する空間とは。

化粧をしたインテリアで、あらゆる美容のサービスを。

シセイドウ ザ ストア

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1階エントランス。タイルの床、筒状の什器、下から投影するとシルエットが浮かび上がる天井のアートワークなど、花椿のモチーフが随所に仕掛けられている。

 145年もの歴史を持つ資生堂。その創業の地である銀座7丁目に、今年1月、21世紀の資生堂の新しい顔として誕生した、シセイドウ ザ ストア。4フロアからなる店舗は、顔となる1階にインターナショナルなブランドであるSHISEIDOとクレ・ド・ポーボーテが並び、ヘアメイクのクイックサービスを行うカウンターを据えた。2階に資生堂の約50ブランドすべての商品を揃え、3階はクレ・ド・ポー ボーテのエステサロンと、ヘアメイクをして撮影ができるビューティブーストバー&フォトスタジオ。4階にはイベントスペースにもなる、ウェルネスを意識したカフェも。資生堂の美にまつわるすべてに触れることができる唯一の場所となっている。

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2階のカウンセリングコーナー。椅子にパンチングメタルが施されている。家のような環境で化粧品を試してもらうため、木目の内装に。

 本店としての機能を引き継ぎながら、これまでにないオリジナルの店舗作りのために依頼したのが、海外での活動も多く国際的な視点を持つデザインオフィスnendo。代表の佐藤オオキが考えたのは“メイクアップ”というコンセプト。内装を仕上げていく工程と、メイクアップのプロセスに共通する要素があることに着目した。

「室内空間は、壁の下地に始まり塗装を経て、最後に保護材で仕上げます。メイクもまた下地やファンデーションなどのベースメイクから、アイシャドウ、リップなどのポイントメイクへと順を追って仕上げていく。そこで、資生堂の商品、あるいは商品に使っている素材を使ってインテリアを“化粧する”ことにしました」

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セルジュ・ルタンスの香水。上段のセクションドール8種はここだけの取り扱い。下段は3香調が加わった17種のコレクションノワール。

 たとえば、1階の床にはアイシャドウを塗り込んで焼成した黒いセラミックタイルを敷き詰め、天然木のフローリングは椿油を塗布して仕上げた。壁を覆うのは、化粧用コットンを原料にした和紙。さらに4階の壁は、化粧ブラシを使ってアイシャドウをのせることでマーブル模様を施し、大理石のように仕上げている。このアイシャドウは、佐藤がブランド名を見ることなく試して選んだという。

「結果、プレステージブランド、クレ・ド・ポー ボーテのものだった。男性でも、発色、質感などの違いに気付いたのは驚きでした」と言うのは、このプロジェクトを5年前からまとめてきた資生堂の増塩由子。つまり、この“大理石”は、最高級のアイシャドウで描かれている、というわけだ。

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記憶に残るシルエット。

 こうしてメイクアップのように仕上げられた空間の随所に見られるのが、花椿マークのシルエット。資生堂を象徴するモチーフとして1915年に作られた花椿のマークだが、そのシルエットだけを使ってモダンにし、店のアイデンティティに提案したのも佐藤。アウトラインだけで物語る、控えめな日本人の美意識をこのシンボルに込めた。それはまた、時代に応じて変化していく資生堂の柔軟さを語っているようでもある。

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4階シセイドウ ザ テーブルズ。人と人が交わる場所を天井と床のクロスが表現。アイシャドウで描いた大理石風の壁にも椿模様が潜む。

 花椿のモチーフを筒状に引き伸ばした階段の手すりや壁面。下から見上げると影が椿模様に見えるモビールの照明。切り絵のように小さくパンチングメタルで施した什器。窓を覆うあわじ結びの紐のカーテンなどなど。日本の伝統工芸の技法も用いながら、さまざまな姿に変容した花椿をそこかしこに登場させ、店を埋め尽くしている。こんなところにも! というウィットを楽しむ心を持って訪れたい。

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壁面の紐の結び目をつなげると大きな花椿モチーフに。ショーウィンドウは自然をテーマに、美術家ミヤケマイの監修で年に6回替わる。

シセイドウ ザ ストア
Shiseido The Store

東京都中央区銀座7-8-10
営)11時~20時
不定休
tel:03-3571-7735
http://thestore.shiseido.co.jp

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*『フィガロジャポン』2018年6月号より抜粋

photos : YASUYUKI TAKAGI, réalisation : KANAE HASEGAWA

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