「ラグーナの庭」の優しい香りに、秘密の庭の記憶が蘇る。

特集

水の都ベネチアのジュデッカ島に、人知れず呼吸を続ける庭がある。小さな扉の奥、ラグーナに面して広がる何ヘクタールもある庭だ。数奇な運命を辿った庭で、その歴史を追っていくと、まるでミステリー映画のように、あるところでピタッと時が止まってしまう。しっかりと扉を閉ざした秘密の庭。これが、エルメス専属調香師クリスティーヌ・ナジェルが初の「庭園のフレグランス」を手がけるにあたって探し求めた夢の庭だ。この庭の物語を本で知ったものの、それがどこにあるかわからず、長いこと探し、そして見つけ出した庭である。

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2016年よりエルメスで香水のクリエーション・ディレクターを務めるクリスティーヌ・ナジェル。エルメスの夢を追いかけて見いだした庭は、偶然にも彼女の故郷のイタリアにあった。photo:QUENTIN BERTOUX

2003年に生まれた「庭園のフレグランス」シリーズは、毎回エルメスの年間テーマから着想を得てつくられている。地中海、エジプト、インド……水の流れを辿って続く香りの旅。2019年のテーマ「夢を追いかけて」に導かれたベネチアで、クリスティーヌ・ナジェルによる初の「庭園のブレグランス」となる「ラグーナの庭」が誕生した。この香りを手にすることで、私たちは閉ざされた秘密の庭の扉を開くことができる。目の前に姿を現すのは50年前の庭かもしれないし、100年前の庭かもしれないし、あるいは昨日の……。レンガ色のボトルには、この秘密の庭の歴史が秘められているのだ。

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「ラグーナの庭」は心に穏やかさをもたらす柔らかな香り。潮風に吹かれながら、樹木の呼吸を感じ、花のささやきに耳を貸し……。ラグーナの庭 オードトワレ ナチュラルスプレー 100ml \17,604(3/16発売)/エルメスジャポン photo:QUENTIN BERTOUX

ラグーナ(湾)の庭が誕生したのはいまから135年前。水の都ベネチアに緑の庭園を造りたい !と願ったある英国人が、その願望を叶えたのだ。クリスティーヌは、この男性の夢を”甘い狂気“と表現する。何しろ、土地全体が海草で覆われていて、土には塩分が含まれていたのだから。その困難を乗り越え夢を実現させた英国人。彼はイーデン(Eden)卿といい、フランス語読みすればエデン卿である。奇しくも庭との結びつきを連想させる名前だ 。卿に喜びと幸せな気持ちをもたらした英国庭園には、ベネチアを訪れる芸術家や作家たちがこぞって訪問したという。

イーデン卿夫妻亡き後、ある国のプリンセスが庭の所有者だった時代がある。さらにその娘に継がれ、そしていまから40年ほど前にオーストリアの画家の手へと。彼の意思により、イーデン卿が夢見た庭はガーデナーではなく、自然の手に委ねられた。その画家が世を去ってから、庭は扉の奥で静かに生を貪りながら、長い眠りについていた。ベネチアの輝く太陽と広い空に見護られて……。その眠れる庭に辿り着いたのが、夢を追いかけてきたクリスティーヌである。

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島民も足を踏み入れられない秘密の庭が、ジュデッカ島に浮かぶ。photo:QUENTIN BERTOUX

「1月の凍えるように寒い、でもとても美しい日差しの朝のことでした。小さな扉を押し開けて庭には入るや、すぐに感動を覚えたのです。感動があれば、クリエーションが生まれます」

古びた石や彫刻など過去の痕跡が残された庭を散歩し、彼女は本で見たセピア色の写真に写っていた庭に想いを巡らせた。植物、花、その香り、庭を散策した人々が感じていた心地よさに。 そして春に戻った庭で彼女が発見したのは、ラグーナにしなだれかかるように枝を伸ばすトベラの白や黄色の花が放つジャスミンやオレンジの花に似た香り、モクレンの繊細でフレッシュな香り……樹木は塩度の高く脆い土地なので樹木は根を地中深くにはることができず、手相を描くように地面に根を這わせている。

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信じがたい難行をものともせず夢を叶えたイーデン卿の庭は、作家たちの好奇心をかきたてたようだ。来訪者の中にプルースト、ヘンリー・ジェームス、リルケ、ジャン・コクトーといった名前が見られる。135年間のさまざまな持ち主が残した痕跡そのままに眠る庭。「ラグーナの庭」の香りより、私たちの心に庭が蘇る。photos : MARIKO OMURA

クリスティーヌのインスピレーションが刺激され、さまざまな時代の庭の記憶が「ラグーナの庭」の中に込められた。パッケージに描かれた扉を押し開けて、さあ、庭へ。花々、樹木、空、海がハーモニーを奏でる限りなく優しい芳香に包まれながら、歩みを進めよう。初夏の庭で白く誇らしげに咲いたマドンナリリー、黄色い小花をつけたトベラの茂った葉の間に見える海水の輝き、見上げた木の高い場所で潮風に吹かれ揺れるモクレンの花……「ラグーナの庭」に導かれて、私たちの想像力は自由にそぞろ歩きを続ける。 幻想の庭なのか現実の庭なのか、過去の庭なのか未来の庭なのか。つけるたびに異なる光景が見えてくる。香りに身を任せ 、クリスティーヌの感動が蘇らせた夢の庭を旅してみよう。

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パッケージを描いたのは、20年前からベネチアに暮らすボスニア出身のサフェット・ゼツ。彼の作品は斬新で力強い具象絵画と評価されている。

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photos:QUENTIN BERTOUX

●問い合わせ先:
エルメスジャポン
tel:03-3569-3300

texte : MARIKO OMURA

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