メイクの世界でも人種差別が問題に! どこまでOK? どこからNG?

Beauty 2021.03.08

From Newsweek Japan

多様化、グローバル化する現代にあって、美の基準はいったいどこに?

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画像キャプション目尻を強調したメイクがトレンドになったが…… photo:Maridav - iStockphoto

文・ウォリックあずみ

人種差別をなくそうという動きは、ここ数年色々な分野で活発にみられる。特に2020年は、中国から発生したコロナウイルスのパンデミックによるアジア人差別、そしてアメリカで白人警察官による黒人市民をへ抗議"Black Lives Matter"が、世界的に大きなうねりとなり、声を上げる人びとが増えた。

一方で、日本では最近化粧品会社DHCの社長が嫌韓ヘイト発言を公式ホームページに掲載したことをめぐり批判が集まる騒ぎにもなった。

そんななか、最近コスメをめぐっての人種差別トラブルが話題になっている。メイクは、肌の色や顔のパーツを強調する手法が多いため、誤解が起きたり無意識の差別に繋がっていると感じる人も多いようだ。

人気ユーチューバーもチャレンジした「フォックス・アイ」とは?

最近のコスメ界でのトレンドが物議を醸した例といえば「フォックス・アイ」メイク法だろう。

切れ長の目を強調するため、アイラインを少し太めに長く書き、日本でいう「跳ね上げアイライン」のように目尻を演出する方法で、西洋人を中心に大流行した。アメリカの人気モデルであるベラ・ハディッドやケンダル・ジェンナーなどが始め、その後一般人にも流行していったと言われている。

狐のような目元になるため「フォックス・アイ」と名付けられ、インスタグラムを中心にSNSでハッシュタグ#FoxyEyes や #fox_eye_makeup、フォックスアイ・チャレンジも登場したほどの人気だった。

メイク法や化粧品を紹介する人気ユーチューバーたちも、このメイクを取り上げ、メイク方法をアップすればたちまち人気動画となった。

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キツネ目は東洋人差別?

しかし、一方でこのメイク法が今、アジア人差別ではないかと論争になっている。

アジア人の特徴ともいえる切れ長の吊り上がった目を強調しているとし、昔からアジア人を卑下する「目を横に引っ張り細めにする動作」を連想させると批判を浴びているのだ。さらに、インスタグラムでは、このメイクの写真を撮るときに、手元をこめかみに添えて目を強調する人が多いのだが、これもアジア人差別を思わせるという。

特に、スタンフォード大学の学生新聞に寄稿した17歳のアジア系アメリカ人、ソフィア・ワンさんの記事は注目された。

彼女は記事の中で「(このメイクのトレンドは)古い固定観念と古い嘲弄を引き起こす新しい流れである。 これは私のような(アジア系の)人々を不快にさせている。今こそこの差別について話す時がきた」と強く反対意見を語っている。

その後、フォックス・アイ写真や動画をアップしたユーチューバーやインフルエンサーたちのコメント欄には、「アジア人差別を辞めて欲しい」というようなコメントが多く寄せられ、その後謝罪のメッセージを載せる人も増えてきた。

だが、もしもアジア人メイク/アジアン・アイなどの名前が付けられていたり、馬鹿にしたような「おふざけメイク」だったとしたら、批判の対象になるのはわからなくもないが、新しい美の基準が、自分たちがもともともっていた特徴と一致したことで批判の対象にするのはやりすぎではないだろうか?

もちろん、写真のポーズが目元を横に引っ張るアジア人卑下のポーズを連想させるなら、その気がなくとも傷つけることになってしまうためやめるべきだ。

しかし、日本のユーチューバーやインフルエンサーのメイク法を見れば「外国人風」といって眉と目の間を短くする方法や、ほりを深く見せる方法が紹介されている。どれも西洋的美しさに近づくよう開発されたメイク法だ。肌を必要以上に黒く見せるメイクをしたり、目を大きく見せたいがために涙袋を書いたり整形でわざわざ作ったりするが、外国人にはなぜそんなことをするのか理解できないという意見もある。

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肌の色で炎上→謝罪文が性差別と大炎上

フォックス・アイは、特定の人種の特徴を強調したことで炎上した例だが、お隣の韓国では多様性を認めないという意味でのコスメ人種差別炎上が起こっている。

昨年11月、アメリカのコスメブランド「エスティ ローダー」は、韓国公式オンラインショップで、ファンデーションセットを購入した顧客に対して「オプションで選択されたシェルカラーマットファンデは東洋人には合わない色なので」というメッセージを付けて別のカラーの商品を配送した。

オンラインで商品注文した女性は、送られたメッセージと商品を写真に撮り、韓国のコスメコミュニティサイトにアップすると、途端に人種差別だと大炎上した。

その2日後、エスティ ローダー・コリアは、公式SNSを通じて今回の一連の事態についての謝罪文を掲載したが、その謝罪文に「すべての女性の......」という一文があり、今度はその部分が炎上する騒ぎとなっている。

SNSのコメント欄には、「今度は性差別か?」「多様性の時代にわざわざ性を分けるべきではない。」「男性もメイクをする時代にわざわざ性別を書くのは時代錯誤だ」という批判の声が多く寄せられている。

人種差別には人それぞれの意見がある。どこまでが差別になるのか。あこがれて真似することは差別になるのか。また、「マイクロアグレッション」と呼ばれる無自覚での差別も多く存在する。

自分と異なった意見を目にしたとき、すぐに拒否反応を示すのではなく、なぜそういう意見が出たのか知ることから始めるのが大事なのではないだろうか。まずは、何事も「知る」ことからはじまる。そして、自分の意見を確立し、意見を交換することによって差別が少しでも減る足掛かりになるはずである。

エスティ ローダー・コリアは「東洋人には合わない色なので」とネット通販で注文されたものと違う色のファンデを発送して炎上した。 SBS 뉴스 / YouTube

 

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texte:AZUMI WARRICK

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