自分を愛せない人たちに贈る、自己否定癖を抜け出すヒント。

Beauty 2021.04.17

多様性が認められる時代となり、ボディ・ポジティブなモデルも増えてきた。だけど、こと自分に関しては欠点ばかりが目について、好きになれない……そんな思いを抱く女性たちに、ビューティクリエイター吉川康雄がアドバイスする「自分の愛し方」とは? この春立ち上げた新ブランド「アンミックス」に込めた想いとともに、そのヒントを伺いました。

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吉川康雄 YASUO YOSHIKAWA

ビューティクリエイター
1959年新潟県生まれ。1983年よりメイクアップアーティストとして活動を始め、1995年に渡米。各国のモード誌のカバーを含むファッション撮影、広告、セレブリティのポートレートなど幅広く活躍している。2019年より美容情報サイト「unmixlove」を立ち上げ、取材、執筆活動も。著書『生まれつき美人に見せる』(ダイヤモンド社)など多数。

―― 日本の女性は自己肯定感が低いといわれています。特に「美しさ」に関しては、自分に自信が持てない人が多いように感じます。

人が考える“美しさ”って、ある種ステレオタイプな基準が存在しますよね。世の中的に美しいとされる顔立ちや体型があるとして、当てはまらない人は山ほどいるし、そのことで苦しい思いをする人もいる。日本は特に“欠点を隠して完璧な美を目指す”傾向が強いんじゃないかな。メディアの情報でも“小さな目を大きく見せるメイク”とかね。

―― 確かに「欠点解消」のようなテーマを目にすることも多いです。

メイクで目を大きく見せても、結局メイクしている間だけですよね。本当はありのままの自分を肯定してあげないと、ハッピーにはならない。なぜそれが難しいかというと、女性は特に、小さい頃から社会的な価値観をすり込まれるんですよ。鼻が低いと親からつままれたり、「○○ちゃんは可愛いね」と誰かと比較されたり。もちろんその大人たちにも悪意なんかなくて、上の世代もそういうすり込みの中で生きてきた。親も、先生も、誰も教えてくれないとなると、自分を肯定するのは自分しかいないんです。

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否定から「距離を置く」「書き出してみる」

―― すり込まれてきた価値観の中で、自分を肯定するにはどうしたらいいのでしょう?

アメリカのセラピストがよく言うのは、「他人は変えられない」ということ。社会全体を変えるのは、なおのこと難しい。だとしたら“距離を置く”しかないんです。たとえそれが親やパートナーであっても、あなたを傷つけるような言葉を発する相手からは距離を置く。物理的に距離を保つのが難しい場合は、相手の言葉を自分の中に取り込まないようにする意識を持つことは大切ですね。少なくとも、美しさにおいて他人の価値観を基準にするのは一切やめたほうがいい。

―― それが自己否定から抜け出す、最初の一歩になる?

そうですね。その一方で、自己否定はやめようと思ってもなかなかやめられない。自分の中から急にはなくならない。だとしたら、書き出してみるのもひとつの方法です。「目が小さい」とか、「鼻が低い」とか、そこにはネガティブな表現が並ぶはずなんですよ。じゃあそれを“別の言葉に置き換えるとしたら何だろう?”と考えてみる。鼻が低いなら、愛嬌があるとかね。世間の価値観から見た一方向じゃなくて、違う角度から見てみる。

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アンミックスのビジュアルでは、モデルの素肌の質感や、日常の合間に見せる何気ない表情に注目。「ソバカスも全部は隠していないけど、それも含めて魅力的でしょう?」(吉川)

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自分という人間は、世界で唯一無二の存在

―― 否定することをやめる、ということですね。

そう。なぜなら、生まれ持った顔立ちや容姿は変えられない。美しさって選べないんですよ。これは決して悪い意味ではなくて、もし美しさが選べたとしたら、ほかの誰かになれてしまう、ということ。それはもう、あなた自身ではないよね。すべての女性は持って生まれた顔立ち、そのままで美しいんです。ステレオタイプな理想を追い求めるのはなく、“私の魅力は何だろう?”と、根本的にとらえ方を変えた方がいい。

―― 気に入らないことを数えるより、愛せる部分に目を向ける?

というより、ありのままの自分を受け入れる、かな。たとえば、一般的な価値観として、大きな唇には魅力的でセクシーな印象があるとします。じゃあ実際、大きな唇の人がセクシーな性格かというと、全員がそういうわけじゃないよね。でも、そのギャップが新たな魅力を生む。外見、性格、考え方を掛け合わせると、自分のような人間は、世界でたったひとりしかいないんですよ。すべての女性が唯一無二の存在であり、その人だけの魅力を持っていると、僕は本当にそう感じます。

アンミックスがデビュー時の発表会で公開した特別な動画。ブランドのテーマは、「すべての女性を美しく」「あなた自身を愛する」製品であること。

―― 吉川さんがそのような考えにいたったのは、多くの女性にメイクをしてきた経験によるものですか?

はい。間違いなく、その経験が背景にあると思います。若い頃は、正直苦手な顔立ちのモデルもいました。だけど年齢も、顔のタイプも、バックグラウンドも違うさまざまな人に会って試行錯誤を繰り返すうちに、僕の中の美の基準が変化していった。すべての人は決定的に姿かたちと存在感が違う、だからこそ誰もが美しいと、いまは心から思います。

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コスメは、人の本質的な美しさを生かす存在にしたい

―― それは、吉川さんの手がけるコスメにも影響していますか?

僕のものづくりの原点にあるのは“人間って美しい”という事実です。人の肌って美しいんです。何かを否定して隠すのではなく、人だけが持つ本来の美しい状態を、可能な限り再現したい。日本人は外出する時ファンデーションを塗るのが習慣ですけど、健康的な肌はそもそも全部隠す必要がない。僕の作るものは、人としての美しさを肯定することから始まる。

―― アンミックスにも、吉川さんの哲学が反映されているんですね。

第一弾はリップスティックですが、人が持つ唇の質感を最大に生かす“透け感”にこだわりました。化粧膜を薄くするためにソリッドタイプのオイルを採用したから、ちょっと硬い感触なんだよね。その分限りなく薄づきで、保湿感に優れ、先端に丸みを持たせたシルエットのおかげでサッと塗るだけで美しく仕上がる。テクニックは必要なく、どんな人でも自然な血色感が手に入ります。

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ほんの少しだけくすみ感があり、全ての女性の唇をいきいきと彩る赤。左から時計回りに:モイスチャーリップスティック ステイン 01、同 グロウ 01 各¥3,960、モイスチャーリップベース SPF24・PA+ ¥3,630/すべてアンミックス

―― 第一弾の赤リップ2本は、どちらも華やかな発色なのに、自然になじんで驚きました。

唇は顔の中で最も“血色感”が際立つパーツ。人の本質的な美しさを考えると、やはり唇に血色感があると、元気な印象に見えるんです。いま、マスクのおかげでリップを塗る人が減っていますね。逆にこんな時代だからこそ、気分を上げる意味でも、リップを取り入れてほしいと思います。

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5月以降、毎月1色ずつリップスティックが登場する予定。左から:モイスチャーリップスティック グロウ 02 (5/1発売)、同 グロウ 03 ¥(6/1発売)、同 グロウ 04 (7/1発売)すべて¥3,960/すべてアンミックス

―― 久々にリップをつけると、確かに気分が上がります。表情もイキイキとする気がします。

そう、健康的で生命力にあふれていることが、人として最も美しい状態なんです。イキイキとした質感や表情があれば、多少シミやシワがあったとしても、魅力的に見える。欠点を何もかも消していくと、完璧には近づくかもしれないけど、人ではないものになってしまう。人はありのままで美しい。もうすでに、あなたの美しさはそこにあるんです。

●問い合わせ先:
アンミックス
tel:03-5842-1840
https://unmixbeauty.com

texte:NAMIKO UNO

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