妊娠中の女性が知っておきたい、化粧品との付き合い方。

Beauty 2021.07.09

生まれてくる赤ちゃんのために少しでもリスクを避けたい場合、多種多様な化粧品の中から自分に合ったものを探すのは簡単ではない。助産師のアンナ・ロイ氏と毒物学者のクラリス・バブー氏に話を伺った。

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妊娠中の女性は、エッセンシャルオイルと内分泌かく乱物質に注意が必要だ。photo: Getty Images

妊娠検査薬の陽性反応が出たら、妊娠中の女性に影響を与える可能性のあるさまざまな病気( トキソプラズマ症、リステリア症、サルモネラ症等 )に関連する食品の制約をまず思い浮かべる。胎児の発育に問題が発生するリスクを避けるために、アルコールを止めるのと同じだ。しかし、美容習慣はしばしば反省と調整の源になり得る。バブー氏とロイ氏に、妊娠中の女性の美容習慣について解説してもらった。両氏はBlissimブランドから、妊娠中の女性専用の新カテゴリー商品の憲章を制定するよう依頼された。

専用製品を使用する。

「消費者が最もよく犯す間違いは、自分のために特別に作られていないが、禁じられてもいない製品を使用することです。論理的には、明確ではないことを除けば、妊婦にも適しているように思えます。しかし、その製品は妊娠中の人を対象としたテストや評価が行われていない可能性があるのです。そして、彼女たちはそのことに気付いていないかもしれません」とバブー氏は言う。ロイ氏は、間違いよりも「情報不足」について注意するようにと忠告する。「カラーリング剤の広告には、“妊娠中の方には適していません”とは書かれていないからです」

バブー氏と同様に、彼女も予防原則を支持している。「迷った時は、適応していると明確に表示されている製品を選ぶべきです。せめて知識がある薬剤師に相談しましょう」と助言する。また、妊娠中に付き添ってくれる専門家(婦人科医、助産師)や皮膚科医もよいアドバイスをしてくれるだろう。

多くのブランドが、妊婦専用製品のラインを立ち上げたり、考案しはじめている。 迷った時にはベビー用品に頼るというのはどうだろう?「新生児の皮膚に適応しているのであれば、妊娠中の女性にはリスクがないのでよい方法かもしれません」とバブー氏は言う。しかし、子ども用のシャワージェルを拝借するのは問題ないが、赤ちゃん用のシャンプーは大人には効果がないので注意が必要だ。幼児の髪は皮脂量が少なく、皮脂を排除することを前提に製造されていない。「いずれにしても、新生児にはできるだけ製品を絞って使うことをおすすめします」

●どのように製品を探すか?

製品を正しく選択できるように、QuelCosmeticのようなアプリでは、妊娠中の女性に適した製品を区別している。Blissimのオンラインショップは、どの製品を購入するべきかが分かるように、専門のカテゴリーを立ち上げている。妊婦のためのコーナーでは、クラリス・バブー氏とアンナ・ロイ氏の協力を得て制定された厳しい憲章を満たすアイテムがすべて掲載されている。また、妊娠中のトラブル(妊娠線、炎症など)に対する感覚と機能を兼ね備えた専門ブランドの開発も始まっている。Jooneによる製品ラインは、当初はオムツに特化していた。Talmは、バイレード社のマーケティングディレクターだったケンザ・ケラー氏が立ち上げた非常に若いブランドで、フェイス&ボディオイル、バーム、セラムを提供している。また、ポッドキャスト「Bliss Stories」と提携し、若い母親向けのキットを秋に発売予定だ。

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エッセンシャルオイルの使用は避ける。

妊婦がバスルームから真っ先に追い払うべきなのが、エッセンシャルオイルだ。特に流産を引き起こす危険性がある芳香成分は怖い。全ての精油が危険ではないかもしれないが、2人の専門家のアドバイスに従って予防原則を適用するほうがよいだろう。

ストレッチマークの予防。

お腹の赤ちゃんの成長とともに伸びる腹部の皮膚に妊娠線ができないように、まずは身体、特にお腹を保湿することが大切だ。この特別な時期には、愛用のヴェレダのオイルを身体に塗ることが日常的な習慣になっていることだろう。また、クリームを開発しているブランドもある。ではオイルとクリームは、どちらも同じような効果があるのだろうか?

「妊娠線には、残念ながら効果的なものはありません。なぜなら、オイルやクリームが浸透できない真皮にあるからです。一般的に、多くの妊婦は朝に保湿をして夜にオイルを塗ります。もちろん厳密に管理された製品を使います。基本的な考えは、潤いを与えて肌をケアすることです。しかし、妊娠線については奇跡的な治療法はありません。もし本当に効果的な方法があるならば、それは誰もが既に知っているはずです」とロイ氏は皮肉る。遺伝的な要因もあるが、毎日マッサージをすることで妊娠線ができるリスクを減らして予防に努めると同時に、リラクゼーション効果も得られる。

内分泌かく乱物質と塩化アルミニウムに注意する。

デオドラントは妊娠中には欠かせない商品です。使用を止めるのではなく、注意深く選ぶべきだ。さまざまなアプリケーションを使ってラベルを分析し、内分泌かく乱物質を突きとめることができる。塩化アルミニウムは胎児に危険性があるため避けたほうがよい。しかし、スプレータイプの代わりにスティックタイプのデオドラントを選択するべき理由は特にない。「吸い込むガスや粒子の量は危険ではありません」とバブー氏は分析する。

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オーガニック食品への節度。

妊娠中は、より健康的な食品を求めてオーガニックのラベルが貼られた製品を選ぶだろう。「医療従事者の意見を聞くと、たとえ期待した効果が得られなくても、この種の製品を選ぶようになります。このような“プロセス”を大切にしているブランドを支持すべきだと思います。だから私は、“オーガニックの方が良い!”と断言します。食事に関しては、私は助産師のひとりとして、妊娠中はよりよい食事をするべきだと思います」とアンナ・ロイ氏は分析する。しかし、オーガニック製品を好んだとしても、過信するべきではない。「有機食品の利点は、無農薬であることがわかることです。しかし、それはほかの毒性を予見するものではありません。植物にはアレルゲンや毒性があることも……」とクラリス・バブー氏は警告する。

ミネラルフィルターのサンケア製品。

サンケア製品は、妊娠中の女性にはおすすめできない。特に、妊娠中の肝斑(色素沈着の影響で、顔の額や頬、さらに下顎などにシミが出現する)がその理由だ。「もちろん、できるだけ露出しないことをおすすめします。少しでも外に出るならば(たとえテラスでの1時間のランチでも)紫外線から肌を守らなければなりません」と助産師は忠告する。日焼け止めにはケミカルフィルターとミネラルフィルターの2つの選択肢があり、2人の専門家が支持しているのは後者である。「2年後には危険だと言われるかもしれませんが、現在の科学的知識では、このようにアドバイスしています。スプレータイプでなければ、製品を吸い込む心配はありません」とロイ氏は説明する。「ケミカルUVフィルターの問題点は、ミネラルフィルターと異なり、内分泌かく乱物質が含まれている可能性があることです。場合によっては、5000倍の量を投与しないと毒性を発揮しないこともあると言えますが。また、ヨーロッパで使用されている30種類ほどのUVフィルターのうち、リスクがないものがいくつかあります」と毒物学者は言う。また、子ども向けの製品を利用することもよい選択です。それらは「局所的な機能だけでなく、身体に無害であることも特に研究されています」。

化粧をするのは……常識的に考えて。

メイクアップでも疑問が生じることがあります。同じ習慣を続けられるか?「妊娠中に化粧をしない理由はありませんが、ほどほどにしましょう。全体の量を減らして、メイクアップはここぞという時のために取っておくべきだと思います」というのがクラリス・バブー氏の意見だ。「ファンデーションやパウダーをたくさん使っている女性を見かけることがあります。品質が保証された化粧品を使って、たまにメイクアップをするのはよいですが、日常的にやり過ぎるのは考えものです。習慣を変える時が来たのかもしれません。バブー氏は“毎日付ければ付けるほど毒性が強くなる!”と言いますよね。つまり、用量効果や閾値効果があるのです」とロイ氏は言う。

同時に、クラリス・バブー氏はファンデーションに含まれる色素が、妊娠中の女性にも毒性がないことを保証しています。「大切なのは、信頼できるブランドを利用することです。販売店で尋ねるのはもちろんですが、ブランドに直接質問することもできます。その裏には、最も優れた選択肢があるかもしれません」

毒性があると批判されることの多いマニキュアについては、少なくとも長期的には避けるべきだ。また、きれいなマニキュアを塗りたい場合は、アレルギー性の低い処方の、いわゆるグリーン系の植物由来原料のマニキュアを選ぶとよいだろう(Manucurist、Kure Bazaar、Même等)。アンナ・ロイ氏は水溶性マニキュアを推奨している(Nailmatic、Petite Manucurist等)。

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従来のヘアカラーリング剤を使用しない。

アンナ・ロイ氏が前述したように、化学染毛剤は妊娠中の女性にはよくない。胎児の奇形の原因となる危険な物質が含まれているため、特に妊娠初期には禁忌とされている。カラーリングを止めるのが難しい場合は、植物性の染毛剤を使うとよいだろう。たとえば、ルネ フルトレールは今年、妊娠中や授乳中の女性、治療後の女性にも適した植物由来のクリーンな処方の製品「Invive」を発売した。「唯一の注意点は、頭皮が敏感になっている可能性があるので、事前にアレルギーテストを行うことです」と、この新製品の開発に携わったヘアスタイリストのロマン・カラーズ氏は助言する。「植物性染料は毛髪の繊維を開かず、内部にも浸透しません。表面に固定され、pHを変えずに毛髪をコーティングします。繊維の内部との結合はなく、内分泌かく乱物質も含まれていません」
※詳細はrenefurterer.comをご覧ください。

香水は忘れよう。

最後に、妊娠中は香水をクローゼットに戻す方がよいだろう。「合成成分と天然成分を組み合わせることが多く、同じ香水液の中に何百種類もの成分が入っていることもある、非常にリッチな製品です。そして、その全ての成分がラベル付けされているわけではないこともあります。用心のために香水は使わない方がいいですし、どうしても使いたい場合は、肌ではなく服に付けるようにしましょう」とクラリス・バブー氏は提案する。特に女性は敏感なので、いつもの香水の匂いに耐えられなくなってしまう人もいる。言うまでもなく、これらのフレグランスに含まれるアルコールは、特に太陽にさらされると、妊娠中の肝斑のようなシミを作ってしまうことをお忘れなく。

text : Justine Feutry (madame.lefigaro.fr), translation : Shiho Tatsugami

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