パリ街歩き、おいしい寄り道。

サロン・ド・テBontempsと、フランス・ウェスト展。

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サブレでクリームをサンドして組み立てたケーキが人気のパティスリー、ボンタン(Bontemps)が、ショップの裏手にサロン・ド・テをオープンした。
「通りに面していなくて、どうもショップを通過してしかサロン・ド・テには入れないみたいよ」と、オープン直前に友人たちと話したのは1カ月前、かと思っていたらすでに3カ月前。
なかなか訪れる機会が作れないまま時間は過ぎて、やっと先週末に行くことができた。
すでにインスタグラムに挙げられた写真を見て、ラブリーだなぁと思っていたけれど、実際はもっとだった。
そして、ここっていまパリでいちばん混んでいるお店では?と思うほどの混みよう。
入り口にはつねに並んで待っている人たちがいる。
おまけに女性で埋まりそうな雰囲気の店内は、半数近くを男性が占めていて、男性だけのテーブルもあった。
ランチを食べた後だったから、サブレのミニケーキを4つチョイスして8ユーロ、という一皿を頼むことにする。
「ひとつのサイズがすごく小さいから、食べたい味はひとりひとつずつ頼んだ方がいいよ」と友人に言うと、じゃあひとり一皿ずつ取ろう、と食べる気まんまんだ。
私は、バナナキャラメル&アーモンドクリーム、レモンクリーム、プラリネ、そして洋梨&シャンティを選んだ。
サブレに塩味が効かせてあるのもあって、ぺろっといける。
お会計をする際、店のムッシュに「今日はデモの影響で空いているかと思っていました」と言うと、驚くことを言われた。
「いや、デモだから今日はいつもよりだいぶ少ないですよ。毎週末だいたい40人くらいずっと並んでいるので」
ひょえ〜。それはすごい〜。
パリでそんなに人が待つお店って他にあるだろうか……?


“ああいうラブリーなお皿はあまりセレクトしないけれど、たまにはよいかもなぁ”などと思いながら、雨上がりの道をポンピドゥーセンターまでテクテク歩く。
「フランツ・ウェスト展がよかったよ」と前述とは別の友人から聞いて、ポスターを見て気になっていた展覧会へ行きたいと思っていた。
斬新な作品を創る芸術家、という以外なんの知識もないままに向かう。
会場に入って、あまり説明も読まない方が楽しめそうだ、と思い、感じるままに観て回っていたのだが、手に取っていいオブジェがあって、それは好きなようにそのオブジェを手にすることで自由になれる、というものだった。
そのオブジェの横には、実際にどこかの展覧会で、そのオブジェを手にした閲覧者がちょっとポーズをとったりしているうちにだんだんと解放されていく様子が見受けられるビデオが流れていた。
見ているこちらも楽しい気分になった。
紙粘土の作品が中央に置かれた最後の間、出口に近い所に行くと、ショパンのバラード1番が流れていた。
それで説明を読んでみると、フランツ・ウェストは音楽を愛した人で、音楽とのコラボレーション作品も制作していたらしい。
座っていいオブジェがあったので、座って、展示された作品に目をやりながら聴いた。
ちょうどこの日の朝に、この水曜(12月5日)に書籍の原稿が校了となるので、バレエを観に行こう!と『椿姫』のチケットを取ったばかりだった。
観に行く『椿姫』は最初から最後までショパンの楽曲を合わせての構成で、バラード1番も使われている。
幾度となく観に行っているから、頭の中には曲とともに劇中のシーンが流れた。
でも展覧会でかかっている演奏は、けっこう個性があった。というのは、私が普段聴いている何人かのピアニストの演奏と違うために、耳慣れないだけなのだけれど、目の前にあるポップな色調の作品の影響もあったのかもしれない。
ここでショパンをこうして聴いた数日後に、ガルニエで同じ曲を耳にするのは、随分感じ方が違うだろうなぁ。
思いがけず新たな楽しみができた。

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川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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