サヴィのランチと、バスキア&シーレ展。
数日前から、お肉をがつん!と食べたかった。
エネルギー補給が必要だった。
毎日やることリストを作って、逃したくない展覧会もその中に組み込む。
まずは、ルイ・ヴィトン財団美術館で開催されている、バスキアとエゴン・シーレの展覧会に行こうと決めた。
メトロ1番線のSablonが最寄駅なので、1番線沿いで赤いお肉を食べたいお店……と考え、もう何度かこのブログにも登場しているサヴィでランチをすることに。
黒板に書かれた日替わり料理のバヴェットステーキにも惹かれたけれど、メニューを開いたら、「今日は仔牛のレバーだな」と気分がぴたっとはまった。
付け合わせがマカロニグラタンというのもいい。
追加で、付け合わせ用のグリーンサラダも取ることにした。
通されたのは店内でいちばん奥の席で、そこは、電波が入らなかった。
料理が運ばれてくるまでの間に、いくつかの連絡事項を片付けようと思っていたから、一瞬焦ったけれど、すぐに開き直る。
ごはんの時くらい休もう。
そしたら、ほっとした。
隣の席に座っている、70代後半とおぼしきマダムとムッシュは、仔牛のレバーとバヴェットステーキをそれぞれ食べていた。
古くからの友達のようで、ずっと最近のデモに関連して政治の話をしている。
話が途切れることはなく、生き生きとしていた。
いかにもフランス人だなぁ。
仔牛のレバーはほどよいボリュームで、マカロニグラタンも優しい味で、とても食べやすかった。
デザートは控えることにして、カフェだけ注文すると、私の斜め前に座った隣のテーブルのムッシュが店員さんを呼び止め「僕もカフェをもう1杯」と追加した。
そして「君は?」とマダムに聞く。「私はもういいわ」とマダムは言った。
ムッシュは、彼女の空になったグラスに目をやり「でも水は? 頼もうか?」「いいわよ」とマダムが答えたとき、ムッシュがちらっと私の水のボトルを見た。
私は彼らと同じ炭酸水を頼んでいて、まだ半分ほど残っていた。
「よかったらどうぞ。私もいまカフェを頼んだし、お水はグラスに残ってる分でもう十分なので」
そう言うと、ムッシュがうれしそうに「これは、親切にありがとう! でも本当にいいのですか?」「もちろん。どっちにしろ残してしまうことになりますから。どうぞ」
マダムは少し遠慮気味だったが、ムッシュが「じゃあいただこう」と言って、グラスに注いだ。
ムッシュは脳科学の研究をしていたそうで、仕事で何度も日本を訪れたらしい。
和やかなランチを終えて、レストランを後にした。
午前中にあった用事がどれくらいかかるかわからない、と思って、入場券をネットで予約しないままに向かったら、美術館の前にはなが〜い列ができていた。
失敗したなぁと思いながら、最後尾に加わる。
思ったよりも早く25分くらい待ったところで中に入れた。
大学生の頃に観た映画『バスキア』はとても印象的で、だからこの展覧会は開催当初から来たかったのだが、すでに訪れた友人たちは口を揃えて「エゴン・シーレがよかった」と言っていた。
じっくり観たかったから、荷物を預けて行こう、とクロークのコーナーに行き並ぶ。
ぼーっと人の流れを見ていたら、知っている顔が歩いてきた。
いまはニューヨークに住む友人だ。
彼女も驚いた顔をしていた。
言葉を交わさずにまずぎゅーっとハグをして、
「いま着いたばっかりなんだよ」という彼女に「私もだよ、これから荷物預けるの」と言うと、「いや、ニューヨークから。空港着いて直接ここにきたの。だからスーツケース預けてる」
空港から直接とはびっくりだ。
「子どもたちは? 何日いるの?」と聞くと「子どもたちはパパとニューヨーク。今回2日だけなの」「2日?」「仕事と、あとは学校訪問」と言うので「帰ってくるの??」とうれしくなって思わず声をあげた。
「その可能性が高い。だからいくつか学校見に行くんだ。1月にもまた、そのときは子どもたちも一緒に戻ってくるから、ごはん食べようよ」
彼女は、今月末に出る本の第1章に登場する人物で、もう10年以上の付き合いになる。
縁があるってこういうことなんだなぁとしみじみ思った。
「明子も、展覧会観に来たの? すごくよかったよ」。
少しおしゃべりをしてから、またね、と言って別れた。
まずはシーレの展示会場に。
バスキアもシーレも、28歳で逝去したアーティスト。
でも時代が違う。
初めて観るシーレの作品は、秘められたパワーのようなものがあって引き込まれた。
それらの作品が1910年代に作られていることに驚いた。
続くバスキアはかなりの展示数があり、シーレとはまた違うパワーで、正直ヘトヘトになった。
美術館に入ったのは、15時43分。
出たのは閉館の20時ちょっと手前。
そりゃ疲れるな。でもそれくらい見入って、あっという間に過ぎた4時間だった。
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