クイックランチと、ドラ・マール展。
とてもよく晴れた金曜日。
予想最高気温は確か32度とかで、これはもう机に向かって集中するのは無理だな、と数日前から思っていた。
今年は暑い日が多い。30度を優に超える日が続いた後、潔く、それだけ暑い時には、家で机に向かうのはやめることにした。
子どもの頃の夏休みの宿題じゃないけれど、ともかく午前中の涼しいうちにできるかぎり机に向かう仕事をして、午後は、動く。
これまた不思議なもので、外に出ると、原稿のもとになる日記を書く気になるし、資料を読むのも苦じゃない。美術館に行くのもとてもいい。
週末だったら、逆に思いっきり汗をかこう!と、たくさん揚げ物を作って、終わったらお風呂掃除をする。
もう週末気分になりかけている金曜日。
美術館に行くことにした。
ポンピドゥー・センターで観たい写真展がある。
ランチはどうしようかな、と頭に地図を浮かべて、シェ・ラ・ヴィエイユを思い付いた。
あそこならば、軽くすませることも可能だ。
できるかぎりを午前中にこなして、お店に着いたのは、もうランチのラストオーダーの時間だった。
「いますぐに注文してくれたら!」と入れてくれたので、立ったままメニューに目を通す。
メイン一皿にしようかと思っていたけれど、どうにも食べる気になれず、前菜を2皿頼むことにした。
ニシンのオイル漬けと、仔牛頭肉のアンチョビ入りヴィネグレットソースがけ。
きりっと白ワイン、とできればよかったのだが、気温の高いお天気のよい日にアルコールを飲むと、そのあと陽に当たった途端に、酔ってるんだかのぼせてるんだかわからない状態に私はなるので、諦めた。
冷菜とはいえ、油分のある、わりとこってりした印象の2品にしたことで、大満足のランチになった。
意外とポンピドゥーまでは近くて、歩いて15分とかからない。
珍しく、並ばずに入れた。
観たかったのは、ドラ・マール展。
20世紀初頭生まれの女性写真家だ。
ほとんどなんの知識も持たずに行って、プロの写真家としての1930年代のモード写真から、政治的な意味合いをもつもの、ロンドンの物乞いやバルセロナの盲目の男性、パリの労働者の食堂やショーウィンドウなど日常の中での、でもメッセージ性のある一場面を捉えた写真、そしてシュールレアリスムの作品の展示を、ものすごい数だなぁと思いながら観て回った。
へ? と立ち止まったのは、彼女が描いたピカソのポートレートの前だ。
展覧会の告知文で、ピカソと親密な関係にあった、ということは読んでいた。
ピカソと出会って、彼女は絵を描きはじめたらしい。
でも一緒にいた頃は写真を続けていたようで、製作中のゲルニカを収めたその展示や、ピカソ自身の写真もプロジェクターで映し出されていた。
ウィキペディアを見たら、彼女が本格的に画家になったのは、ピカソと別れてその辛さから、とあった。
そのコーナーを境に、絵の展示へと移行していく。
作品どうこうよりも、期せずして目にした、その人の人生の転換点と移り変わりから受けた衝撃のほうがずっと強かった。
会場を出たらやっぱり外は快晴で、31度だった。
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