Editor's Blog

この夏、アートが暑い。

こんにちは。先日の南イタリア出張で、足の甲のサンダル焼けが深刻な編集TAOです。素足でもTevaを履いているかのような私の足。そんなTeva焼けを引き下げて、この夏はアートを存分に楽しみたいと思います。

出張から帰ってきてすぐに向かったのが、森美術館で開催中の『塩田千春展:魂がふるえる』。赤と黒の意図が張り巡らされた空間や窓枠やトランク、人形のミニチュア家具を並べたインスタレーションは、どこか危うさや恐れを感じさせるもの。過去最大規模の個展とあって、25歳頃からベルリンに移り住んだ塩田さんの過去作品も多数。牛の顎骨が並んでいる様子が生命を感じさせる『私の死はまだ見たことがない』や、マリーナ・アブラモヴィッチのワークショップに参加した際に日本に帰りたいという無意識的な欲求に気づいて生み出した『トライ・アンド・ゴー・ホーム』など、90年代の作品もおもしろくて見入ってしまいました。死生観、記憶、不安、夢、マリーナ・アブラモヴィッチの世界観と通じるのは彼女に師事していたからなのか、と、恥ずかしながらこの展示を見て初めて知りました。この企画展のプロジェクトをスタートさせる前に、癌の再発を告げられて治療中の塩田さん。そういった彼女の背景も感じてしまってか、言葉にできない魂の叫びが響き渡っているかのようで心がふるえました。

190726_11.jpg

190726_12.jpg

190726_13.jpg

そして再来したいと思っているのが、国立新美術館のクリスチャン・ボルタンスキー大規模巡回展『Lifetime』。こちらはプレビューの際に伺って、来日中のボルタンスキー氏の解説も聞くことができました。フランスを代表する現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー。春に香川県の豊島を訪れた際、クリスチャン・ボルタンスキーの『心臓音のアーカイブ』を観ようと、はるばる訪れるフランス人の多さに驚きました。死や不在をテーマに、モノクロのポートレイトや電球を祭壇のように組み合わせる『モニュメント』シリーズをはじめ、静謐ながら心がざわめくような不穏な気配。今回の展示の中には、ボルタンスキー氏の母親のポートレイトを使用した作品もあるそうです。「僕のお母さん、美人でしょう?」とこっそり教えてくれました。ボルタンスキー氏にちょっと似ているかも? 是非探してみてください。

190726_1.jpg

190726_2.jpg

190726_3.jpg

夏にぴったりのちょっとひんやりした気分にさせるアートばかりだったので、最後にほっこりと、東京国立近代美術館で開催中の『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』をご紹介。夏になると、ジブリを見たくなるという声が多く聞こえてきますが、ジブリを作った男と言っても過言ではない高畑勲さんの大規模回顧展。未発表だった制作ノートや絵コンテ、宮崎駿氏との制作過程など、貴重な資料が多く飾られています。キャラクターのデザインや動き、心の機微など、コンテに描かれたメモ書きの細かさに脱帽! 初期から変わらず、自身のやりたいことをきちんと遂げていくその軌跡に、天才への畏怖を感じました。個人的には、『火垂るの墓』(1988 年)で実現されなかったシーンの裏話が大変おもしろかったです。膨大な資料を一度で見ることができなかったので、再来せねばと思っているところです。

190726_5.jpg

190726_6.jpg

190726_8.jpg

オペラシティアートギャラリーで開催されている『ジュリアン・オピー』展も見に行かねば! この夏は、アートが暑いです。

ARCHIVE

MONTHLY

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
キーワード別、2024年春夏ストリートスナップまとめ。
連載-パリジェンヌファイル

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories