Editor's Blog

錦山窯の新しい挑戦。

こんにちは。編集MIです。
みなさん、九谷焼はお好きですか? 加賀藩の時代は藩御用窯だったこともあり、高価な焼き物、という印象があるかもしれません。
色や柄が艶やかで、見ているだけでも華やかな気持ちになりますよね。和の要素が強い絵付けの印象ですが、現代の九谷焼はモダンなものもいろいろ。私は比較的無地のうつわが好きで、日々使うのもシンプルなものが多いのですが、九谷焼の艶やかなうつわも取り入れてみたいなと思う、今日この頃です。
そんななか、石川県小松に構える錦山窯へお邪魔する機会がありました。

191111-1.jpgこの建物が錦山窯の工房です。

錦山窯は、初代は吉田庄作、1906年開業の九谷焼上絵付を専業とする窯元。鮮やかな五彩を特徴とする色絵や金彩をあしらった金襴手などさまざまな絵付けがあるなかで、特に金彩の技法を得意としています。三代目美統(みのり)さんは「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」という技術を磨き、人間国宝に。そして四代目幸央さんは、時代に合った独自の彩色金襴手を打ち出しています。
この10月、錦山窯の展示室「嘸旦(むたん)」 が完成し、お披露目となりました。

191111-2.jpg昔から蔵や石塀に使われてきた観音下(かながそ)の石材を使用。どこか太古の神聖な建造物を思わせます。SIMPLICITYの緒方慎一郎さんが手がけました。

191111-3.jpg館内は、天井からの自然光が神秘的な、石室のような佇まい。お天気が不安定でこの時は曇っていたのですが、晴れた日は日が差してまた印象が違うそうです。

四代目幸央さんと奥様のるみこさんが、思い入れたっぷりに楽しそうに案内してくださるなか、美しい作品に目を奪われます。

191111-4.jpg雅な絵付けにうっとり。ポットや小皿を組み合わせたアートピース。

191111-5.jpg白に金彩が美しい酒器。

191111-6.jpgこちらは小さなサイズ感が愛らしい小瓶のような作品。立涌や亀甲などの柄が。

191111-7.jpg外へ出ると、すっかり夕暮れ。ミステリアスな雰囲気に包まれていました。

191111-8.jpg嘸旦への道を振り返ると、真っ赤な夕焼け空。

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どこか神聖な空気に包まれながら、夢中になって作品を観てお話を伺うとても素敵な時間……。その後、三代目美統さんの作品が置かれている茶室併設のギャラリーへ。人間国宝の生み出す金彩は圧巻でした。

191111-9.jpgギャラリーの様子。こちらは嘸旦よりもこぢんまりとした、私的空間という風情です。

191111-10.jpgため息の出る金彩の美。

美統さんのお話ぶりに、九谷焼、錦山窯への愛がとても感じられたのも印象的でした。最後は錦山窯の工房を見学させていただきました。

191111-11.jpg作業をする職人さんの姿。

191111-12.jpgまだ色付け前のプレート。

191111-13.jpg作品に貼られる金片。

191111-14.jpg作業場の一角。

191111-15.jpg三代目美統さんの作業場も見せていただきました。貴重! 涙

191111-16.jpg美しすぎるデザイン画も。感動です……。涙

作業場と貴重なデザイン画まで拝見して胸がいっぱい。みなさんの九谷焼への思いをしっかり感じられた、とても素敵な体験でした。気軽に買えるものではないのですが、なにかのお祝いや、自分へのご褒美に、よい機会が訪れたら、ぜひ購入してみたい。

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小松では、錦山窯の酒器でお酒をいただける酒造「農口尚彦研究所」へも立ち寄りました。ここでは「茶道の世界観の中で日本酒と向き合う」として、「杜庵(とうあん)」と名付けられたお部屋で利き酒が楽しめるのです。

191111-17.jpg農口尚彦研究所。ギャラリー見学とテイスティングができます(完全予約制)。

191111-18.jpgこちらが仕込み室。

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ここで利き酒をいただきます。ガラス張りの先の借景が見事。

ギャラリーには酒蔵とともに、農口尚彦さんの歩んできた歴史がつづられています。16歳から酒造りの修業をはじめ、各地で酒について学びました。70年代以降低迷してしまった日本酒業界で吟醸酒の先駆けとなり世へ広め、吟醸酒ブームの立役者に。山廃仕込みの技術も復活させて、こちらもブームを巻き起こします。引退・現役復活を繰り返し、現在は2017年から自身の名を冠した「農口尚彦研究所」を立ち上げ、ご活躍中です。70年の酒造りへの心意気がすごいですね。

見学のあとは、いよいよ利き酒タイムです。

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錦山窯の酒器で、「令和しぼりたて 無濾過生酒」と「ひやおろし 無濾過」をいただきました。

191111-22.jpgおつまみも絶品すぎました。地鶏のスモーク、フグの粕漬け、白山堅豆腐の味噌漬け、ホタルイカのいしり干し。お酒が進む! メニューは季節ごとに替わるそうです。

191111-23.jpg和菓子とのペアリングも。美しい〜。

191111-24.jpg左上の麩菓子「安宅松」は黒蜜が香るおいしさ。なんと、日本酒に浸していただくのです。

191111-25.jpgこちらが日本酒の神様と言われる農口尚彦さん。穏やかな笑顔に癒やされました。

九谷焼の錦山窯を堪能したあとは、ぜひ農口尚彦研究所へ立ち寄ってほしい。錦山窯の美しい酒器でいただくお酒はとてもおいしく、贅沢なひとときでした。小松の旅の楽しみ方のひとつとしておすすめです。私もまたぜひ訪れたいです。

嘸旦
石川県小松市高堂町ト−18
tel:0761-22-5080
www.mutangallery.com
※アポイント制

農口尚彦研究所 杜庵
石川県小松市観音下町1-1
tel:0761-41-1227
https://noguchi-naohiko.co.jp
※HPで会員登録をしてから予約可能。

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