栗山愛以の勝手にファッション談義。

マスクをファッションアイテムとして考えてみた。

さんざんインドア派だということをアピールしてきた私でも、あれ、あんまり外出してないな、と思ってしまう今日このごろである。家にいてもそんなに苦ではないものの、おしゃれをする機会が減ったのは非常に残念。部屋着に注力すればいいじゃないか、と思われるかもしれないが、ファッションとは、人様に披露してなんぼのもんという思想。お召しのものはどこで手に入れたんですか、とか、反応ももらいたい。

なので、外出自粛が解除されたらいつも以上に気合いを入れて装いたいと思っているのだが、それでも当分身につけておいたほうがよいであろう、最近存在感を増してきたアイテムが気になって仕方がない。それは、マスクである。

私は幸運にも花粉症ではなく、風邪もほとんどひかない健康体であるためマスクには縁がなかった。しかしいまやウイルス対策の効果の有無はさておきエチケットとしてもマストにしたいアイテムとなっている。マスクは医療用品ですから、とファッションとは別枠で捉えておきたかったのだが、外出のたびに着用していると、ただの白でいいんだろうか、このデザインでいいんだろうかという疑念が頭をもたげてくるのであった。
そう考えると、本当にマリーン セルは先見の明がすごい。
数シーズン前より汚染された空気から身を守るフランス発のスマートマスク「R-PUR」とコラボしている。毎回環境破壊が進んだ世界を生き延びる民族、みたいなテーマを掲げていて、ディストピア的発想ですね、なんて思っていたが、それが現実になってきたのが恐ろしい。先日見た2020-21年秋冬のランウェイではスパンコールに覆われたマスクが登場していた。機能性も充分だし、マスク史上最高にかっこいいデザインなのではないかと思う。

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顔を覆うと不穏な空気が漂いがち、という懸念を払いのけてモードにしてしまう手腕は、アレッサンドロ・ミケーレ手がけるグッチでも見られる。絶対にいま最適なアイテムを発表していたはず、と過去を振り返ると、レースのようなのであんまり効果が望めないかもしれないが、2018-19年秋冬にあった。

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マリーン セルにはいつも中東っぽいムードが流れていて、こちらのグッチもその感じ。濃い色のマスクをするとハラジュク的だったり、ゴスっぽくなったりしがちだが、理想はこういう方向性でいきたいものだ。しかしこんな世の中になるとは露ほども思わず、ランウェイではかっこいいけど、実際街中では難しいよね、と腰が引け、高価ということもあって、買い逃してしまっている。モードバカとしたことが、なんたる失態。ブランドがマスクの型紙を公開していたりするらしいし、手作りする手もあるだろうが、完成品を着て見てああだこうだ言うのが専門で、お裁縫はからっきしできない。何とかしてこの窮状を乗り切れないか。

そんな折、オーガニックコットンを用いている日本のブランド、スキンアウェアが抗ウイルス機能を持つ生地の洗って繰り返し使えるマスクを発売すると知り、ベージュを購入した。ベージュ、白、シルバーでまとめれば元祖ランウェイで顔を覆ったブランド、と言っていいマルタン マルジェラ風になるんではないか、ともくろんだのだ。

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が、予約販売だったので、あいにくまだこのマスクは手元に届いていない。白のノーマルタイプの在庫はだんだん底をついてきて、いつ何のために買ったのか記憶にない「少し小さめ女性用」のピンクに手を出さねばならない時が近づいてきている。フェミニンとは遠いところで生きてきたが、背に腹はかえられぬ、何とかして身に着けなければならない。そうしたらいっそのことワードローブで極力ラブリー寄りなアイテムを総動員してはどうか。

で、靴だけはスタッズ付きで締めさせてもらったが、考えたスタイリングがこれである。

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いつ何時も捨て去ることのできないおしゃれ心。早くマスクなしで出歩ける日が来てほしいものです。

栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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