かぐわしきみなと通信

精進料理名人が香港で伝える麗しの食体験

香港にいるからこそ学べたこと、いろいろありますが、なかでも密かに大きいのが・・・・・・日本について(笑)。

日本にいたときは、東京以外に目が行かなかったから、恥ずかしながら何も知らなかったことさえ気がつかない有様。

香港の人は、北海道から沖縄まで、日本全国にくまなく関心を持って旅行するので、日々、日本中の情報が香港に入って来るんです。その余波でいろいろと目にするようになって「ここ行ってみたい!これ食べてみたい!」と喜んでいる日本人の私(苦笑)。

とはいえ、メディアの集まりでも、日本絡みのものに声をかけていただくことが増え、何かあると出席者全員が、その場で一人だけいる日本人の私の方にばっと顔を向けて、意見や感想を求めてくるので、これは責任重大!

身を引き締めて日本の正しい姿が伝わるように精進して参ります・・・・・・と言うところで、そうです、精進料理!

フォーシーズンズ香港は、興味深くバラエティ豊かな企画がどんどん出てきて、香港のラグジュアリーホテルの中でも、最近特に勢いを感じさせる存在です。

昨年の11月になりますが、「今度、日本の精進料理マスターがここで料理を披露するのだけど、そのメディア試食会においで」と誘われて、喜び勇んでうかがいました。

その精進料理マスターとは、ZECOOW Culinary Instituteを主宰する棚橋俊夫さん! かつてNHK朝の連続テレビ小説『ほんまもん』の料理監修をされ、表参道で精進料理店・月心居を営んだ後、今は世界中で、精進料理を通して野菜の素晴らしさ、食と心の大切なつながりを説いていらっしゃいます。

たまたま共通の友人がいて、お噂だけはかねがねでしたので、ますます楽しみ。

そしていよいよ当日! ランチの前に簡単なワークショップもありますよ、とのこと。

そのワークショップとは!! 会場はこんな風にセッティングされていました。え? すり鉢?

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一人ずつのセットはこんな風に。そう、本日のワークショップは、胡麻のすり方(日本語だとなんですが)教室なのです。

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いよいよ棚橋さんが登場しました!

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高品質の有機胡麻を自分でまずせっせと摺ってみました。久しぶりです! 大きくて使い易い見事なすり鉢。下手なりに、ああ、素晴らしい芳香が漂ってきます。

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丹田を安定させて、姿勢良く、毎朝胡麻をすりながら精神集中させることで、気が整えられます、と棚橋さん。

すり立ての胡麻を朝ご飯でいただく一日なんて、本当にいいですね。

サラダのドレッシングにいいですよ、と醤油や酢を混ぜた胡麻ソースも作って見せてくれました。

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できました!ということで味見に群がるジャーナリスト達(笑)。美味しい!

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いよいよランチの時間がやってきました! この素敵なテーブルセッティング。

横顔が見えている金髪の美女はフォーシーズンズ香港広報部長のエイミーさん。

何を隠そう、2月号「24時間、香港中毒」では、スパの撮影でモデルになってくださっているんですよ♪

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落ち葉と菊。そうです、季節は秋でした。

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さあ、いよいよ7コースの精進ランチが始まりました。日本各地で丁寧に自然栽培で育てられた濃厚な味わいの野菜ばかりを使っています。

こちらは秋の吹き寄せ。栗、銀杏、ゴボウ、京人参、蓮の実、乾燥椎茸、クルミ、むかご、アワ麩、百合の根が叙情豊かに並べられています。

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香港には日本のような秋がありません。これをいただいている間だけはしばし日本の晩秋を思います。

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向付けとしてやって来たのは! 棚橋さんのシグネチャーである胡麻豆腐。

一晩水に浸けた白胡麻をすり鉢で1時間ほどすってから漉し、吉野葛を入れて火にかけて練り上げ、型に流して流水で冷やし固めるという、すべて手作りのこの胡麻豆腐。ああ、なんてデリケートな味わい。

そして中央にある菊と沖縄野菜のはんだまの酢の物を食べてから、自分の置かれている状況に気がつきました。

 

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「日本にいても滅多に食べられない品質と組み合わせのすごいものをいただいている」と。

というのは菊の酢の物というのを、ほんの少し前に、NOBU香港の青森料理フェアで初めて食べて、これは美味しいと思っていたところだったからです。そして今回初めて聞く沖縄のはんだま。

精進料理自体もそんなに何度も食べたわけではありませんが、これはレベルが違います。

ここで使われている食材はとにかく日本各地から取り揃えられていて、調理法は磨き抜かれて洗練されています。

次は碗もの。瑞々しい蕪、ナメコに柚子に水菜に。「Five Sensation Awakening Experience - 五感が目覚める経験」と名付けられたこのスープ。まさにハッと目が覚めるような美味しさ。

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左の白和えがまた素晴らしく、うんうん、と納得しながら噛みしめました。

木綿豆腐、アボガド、りんご、柿、春菊、グリーンパパイヤを使っているそうです。

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日本の何かについて意見を求められるとき、「私は日本人とはいっても、本当にそんな判断を下せるだけ、いろいろ食べたり経験したりして、比較する土台を持っているのか」と逡巡することがありますが、もうこの白和えを食べた時点で、完全に吹っ切れまして、「もう最高。私は日本にいてもなかなか食べられない、素晴らしいものを食べているってみんなに伝えたい」と同席の皆さんに高らかと宣言(笑)。

さあメインは百合根とトリュフのコロッケや、紫芋とブドウ、ムキダケの春巻。濃厚な野菜の風味に加えてボリューム感がしっかりあって、精進料理だということをしばし忘れます。

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はんなりとした味噌リゾットには、茄子ソースが!

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締めくくりのデザートもとっておきの精進スタイル。カボチャ、豆腐クリームに餡子、焼きリンゴなど、食材の優しい甘みが楽しめるものがずらり。

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とても軽やかで清らかな味わいで、爽やかな気分で家路に着きました。

棚橋さん、素晴らしいお料理ありがとうございました!

 

甲斐美也子

2006年より香港在住のジャーナリスト、編集者、コーディネーター。東京で女性誌編集者として勤務後、英国人と結婚し、ヨーロッパ、東京、そして香港へ。オープンで親切な人が多く、歩くだけで元気が出る、新旧東西が融合した香港が大好きに。雑誌、ウェブサイトなどで香港とマカオの情報を発信中のほか、個人ブログhk-tokidoki.comも好評。大人のための私的香港ガイドとなる書籍『週末香港大人手帖』(講談社刊)が発売中。

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