フィガロが選ぶ、今月の5冊 清川あさみ×最果タヒが、百人一首の世界を紡ぎ出す。
Culture 2018.04.13
『千年後の百人一首』
清川あさみ、最果タヒ著 リトルモア刊 ¥1,728
写真に刺繍をほどこした作品で知られる清川あさみと中原中也賞を受賞している詩人・最果タヒが、共作で百人一首の翻案に挑んだ。たとえば ≪つきみれば ちぢにものこそかなしけれ わがみひとつのあきにはあらねど≫ の書き出しは ≪月がぼくを見つけてしまった。夜だと、その時ぼくは気づく≫ 。単なる現代語訳ではなく、自らの世界観に大胆に引き寄せた詩がいまも昔も変わらぬ想いを紡ぎ出す。翻ってこれほどの饒舌な心を31文字に封じ込めた古の人に思いを馳せずにはいられない。ビーズや刺繍で表現した情景は、繊細で細部までじっくり見たくなる。
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*「フィガロジャポン」2018年4月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI