立田敦子のカンヌ映画祭レポート2016 #07 ハリウッド映画、あるいはスターとカンヌ。
Culture 2016.05.19
カンヌ映画祭というとレッドカーペットをスターたちが歩く華やかなイメージをまず思い描くと思います。が、実はコンペは、"アート映画の殿堂"といわれるくらい作家性の強い監督の作品、つまり日本だと小規模で公開される、ミニシアター系などと呼ばれるタイプの作品を中心に上映されています。
ハリウッド作品が上映されるのは、オフィシャルセレクションの中の「アウト・オブ・コンペティション」(日本語では招待作と表記される場合が多い)という部門。このセクションへの出品作で、ハリウッドスターたちが来場するというワケです。
今年の招待作は次のような感じ。
スター女優であるジョディ・フォスターの監督第4作目の財テクTV番組をめぐるスリラー『マネーモンスター』では、ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツ。
『キスキス、バンバン』(2005年)のシェーン・ブラックによるアクションコメディ『ザ・ナイス・ガイ』ではラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング。
ボクサーとトレーナーの絆を描いた『ハンド・オブ・ストーンズ』ではロバート・デニーロ。
スティーヴン・スピルバーグの久々のSFファンタジー『THE GFG』では、レベッカ・ホールなどが来場。
一方で、すでにスターの地位を確率している俳優たちにとっては、作家性の強い監督の小作品に出演することはある種の名誉、という事実もある。売れているスターが、ギャラ度外視で舞台に立つのと、ちょっと似ていますね。ということで、コンぺ部門の作品にも意外なスターが出演しています。
デンマークの異才ニコラス・ウィンディング・レフンの『ネオン・デーモン』には、キアヌ・リーブスやエル・ファニング。
カナダの新進気鋭の監督グザヴィエ・ドランがフランスで撮った『イッツ・オンリー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』には、ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤールら。
フランス人監督オリヴィエ・アサヤスのスリラー『パーソナル・ショッパー』の主演はクリステン・スチュワート。
イギリスの女性監督アンドレア・アーノルドが米国で撮った『アメリカン・ハニー』には、シャイア・ラブーフとライリー・キーオが出演。ちなみに、ヒロインを演じたサーシャ・レーンは、この作品の撮影中にシャイアと恋に落ち、恋人関係に。
そして、ショーン・ペンの監督作『ザ・ラスト・フェイス』は撮影当時婚約中だったシャーリーズ・セロンが主演しています。
ということで、レッドカーペットには連日、豪華な顔ぶれが姿を見せることに。芸術性とグラマラスなセレブリティの世界が共存しているところも、カンヌ映画祭ならではなのです。
映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。