マイ・フェイバリット・ニューヨーク・ムービー #05　立田敦子（映画ジャーナリスト） 大人の心に響くニューヨークの甘く切ない恋愛映画。

いつの時代も映画人をインスパイアし、
数々の映画の舞台となった街、ニューヨーク。
各ジャンルで活躍する、映画とニューヨークを愛する人たちが、
ニューヨークを舞台にした映画の中から、自身のベスト3を推薦します。

映画祭や国内外で年間約200人もの映画人をインタビューする立田敦子さん。
ジャンルを超えた数多くの映画に精通する立田さんが選んだのは、
味わい深い大人同士の恋愛映画。嫉妬や衝突、不倫といった、恋愛にまつわる
リアルな感情が、ニューヨークの街を背景に、名優たちによって体現される。
観たら忘れられなくなる、極上のラブストーリーをどうぞ。

『アニー・ホール』

最初に観たのは10代後半でしたが、ハンサムではない主人公、ハッピーエンドでも悲恋でもないストーリー展開と恋愛映画の定石を覆す、まさに“目からウロコ・・・”の作品でした。嫉妬や葛藤といった恋するときのリアルな感情が、ニューヨークの名所をバックに主人公たちによって饒舌に語られていることも魅力です。主人公とヒロインのアニーは、数年後、別のパートナーと一緒ですが、じゃあ、あの恋愛は意味がなかったかというとそんなことはなく、お互い人生のある時期を共有した大切な人であり続ける。無駄な恋愛なんてない。これぞ究極の恋愛讃歌映画。

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『恋におちて』

マンハッタンの書店で出会った大人の男女。それぞれ理想的に見える家庭をもつふたりだが、惹かれ合い、デートを重ねるようになる。が、最後は一線を越えることなく、心を残しながらも家庭に戻っていく。不倫という言葉がブームになった時代に、「既婚者の純愛は罪か？」という論議を生みました。デ・ニーロとストリープという名優の演技もあって、いくつになってもどんな状況でも、“恋に落ちる”という衝動は止められないという真実をリアルに感じられる映画。書店での運命的な出会いという“日常の奇跡”は、ニューヨークだからこそ真実味のあるマジカルな出来事。

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『華麗なるギャツビー』

フラッパー、ジャズ・エイジという言葉を生んだ1920年代の古きよき時代のニューヨークのデカダンスが、バズ・ラーマンの煌びやかな映像で再現されているところが何よりも魅力。主人公のギャツビーは、貧しい自分に見切りをつけ、金持ちと結婚してしまった最愛の女性デイジーを思い続け、富を手に入れ、彼女の邸宅の近くにさらに豪華な邸宅を構える。その思い入れの強さは、いまの時代、一歩間違えば、ストーカーともなりかねないのですが、レオナルド・ディカプリオのようなイケメンならば、女子にとって夢のような愛され方となるかも。